東京国際ブックフェアの会場で行われた、英語教育研究者の晴山陽一先生の講演に参加してきました。実は昨年『英語ベストセラー本の研究』をこのブログで紹介した関係で、晴山先生の新著『英語らしい発音は、音読でこそ身につく。』をアスク出版さんからご献本いただいた次第。で、ちょうどブックフェアで講演があるとのことで、ブースにお邪魔してきたというわけです。
いきなり本書の問題点から指摘してしまいましょう。それはずばり、「英語らしい発音は、音読でこそ身につく」というタイトル。何だか発音を良くするための教材のように感じられますが、誤解を承知で言えば、発音矯正が目的の本ではありません。では音読によって何を身につけようとするのかというと、英語の「強弱リズム」。この強弱リズムこそ、発音以上に「英語を英語らしく聞こえるようにする」ためのポイントであり、その習得が本書の最大の存在意義になります(もちろんその過程で、個々の発音についても適時解説が行われるのですが)。
晴山先生自身、本書のイントロダクションでこう述べています:
よく「カタカナ発音が日本人の英語が通じない元凶だ」と言われますが、カタカナ発音には一定のルールがあるので、それに慣れれば聞き取ることはさほど難しくないようです。逆に、いかに発音がよくてもアクセントやリズムが違えば英語には聞こえません。こちらの問題のほうが、ずっと大きく、根が深いのです。
英語のリズムを身につけるための教材はほとんど皆無なので、この大問題はずっと放置されたままになっています。私が本書を編むことにした最大の理由は、ここにあります。つまり、この本は音読によって、「英語のリズム感」をつける本なのです。
確かにお笑い芸人などが外国人の物まねをするとき、発音よりもリズムで「英語風」を装うことが多いですよね。またこれは留学していたときの個人的体験ですが、インド人の先生や留学生の発音(個々の単語の)も結構ひどいのに、リズムが良いので英語をしゃべっているように感じられるということが多々ありました。この「英語独特のリズム感」という秘密兵器こそが強弱リズムであり、本書(テキスト+CD2枚)を通して学ぶものになります。
本書は「英語のリズムを身につけるための教材として作った」というだけあって、登場する例文は、晴山先生の友人の英国人作家クリストファー・ベルトンさんが書き下ろしたもの。それだけにどれもリズム感が良く、目で読むよりも口に出す方がすんなりと頭に入ることが多いです。例えばこんな感じ:
Walking on the grass is breaking the rules.
芝生の上を歩くのは規則違反だ。
ごく他愛もない文章ですが、音読してみると非常にリズム良く読める文章であることが分かるのではないでしょうか。よく日本語でも、音読を前提としないでズラズラズラズラ……と書き綴った文章がありますが、それはたとえ日本人でも口に出して読むのは難しいですよね。その意味で本書の例文は、ノンネイティブな学習者にもリズム良く読めるものになっています(もちろん単に例文が集められているだけでなく、強められる部分が赤く表示されているなど、様々な工夫も凝らされているのですが)。また頭にすんなり入るので、一度テキストを読んでから、CDを iPod に入れて通勤・通学の際に音だけ聞く、ということもしやすいはず。
ちなみに『英語ベストセラー本の研究』を読まれた方はご存じだと思いますが、同書の終盤で、晴山先生は別の側面からも音読の重要性を解説されています。日経ビジネスオンラインでも関連記事を書かれていますので、リンクを掲載しておきましょう:
■ 第2回 すべての本が音読を勧めるのはなぜか? ~秘密は「ヴェルニッケ中枢」と「ブローカ中枢」の連携に (日経ビジネス オンライン)
ここでは学んだ知識を定着させるための手法として、「音読」が有効であると指摘されています。これは経験的にも同意される方が多いのではないでしょうか(個人的にも「口に出す」という行為を日常的に行っていた時の方が、学習のスピードが速かったように感じています)。知識が身につき、さらに英語らしいスピーチもできるようになるという音読学習法。本書をきっかけに始めてみてはいかがでしょうか。
それからオマケ。ブックフェアでの講演の際、晴山先生に「本書以外で音読練習のテキストに適していると思うのは?」という質問をしてみたところ、こんな本をオススメしていただきました:
『新TOEICテスト出る語句1800』という本。こちらもCD2枚付きでネイティブスピーカーの発音を確認できる上に、例文が非常に工夫されていて(ストーリー性があるとのこと)、覚えやすさ・読みやすさに配慮されているそうです。『英語らしい発音は~』で音読学習が自分に合っていると感じた方は、卒業後にこちらも試してみては。
コメント