これもちょっと面白いデータの話。10日ほど前、英語圏で"#LessAmbitiousMovies"というハッシュタグが大爆発(つまりこのタグ付きのツイートが大量投稿されたわけですね)していたのですが、それに関する統計データがTwitterから公開されています:
■ The science of the hashtag (Twitter Media)
そもそもこの"#LessAmbitiousMovies"が何か?という話ですが、要は大喜利のような遊びだったと理解すれば早いと思います。ハッシュタグをそのまま読めば"less ambitious movies"、つまり「野心の少ない映画=やる気のない映画」ということで、既存の映画のタイトルを少し変えて「こんな映画ねーよw」と笑おうという趣旨。
例えばこんな感じです:
『12人の怒れる(angry)男』をもじって、『12人の腹減る(hungry)男』というわけです。シャレを解説するほど無粋なことはありませんが、大体お分かりいただけたのではないでしょうか。
で、これが何故かものすごくウケて、英語圏で盛んにツイートされていました。「なぜこんなに流行ったのか?」についても様々なところで検証されており、恐らくオンラインマーケティングのテクニック集のような形でまとめられて行くことでしょう。
で、今回のデータ。実はこの"#LessAmbitiousMovies"、最初は"#LessAmbitiousFilms"として始まったのだとか。ところが途中で前者の方が勢いを増し、後者は途中で失速してしまったとのこと。それを示しているのがこちらのグラフです:
赤い線が"#LessAmbitiousFilms"で、確かに6時間ほど早くメジャー化しています。しかし途中から"#LessAmbitiousMovies"(青い線)が登場、一気に抜き去っていますね。面白いのは、(たった1文字ですが)後者の方が文字数的には多いという点。よりシンプルなタグの方が選ばれる、というのなら不思議ではないのですが、なぜ「フィルム」ではなく「ムービー」の方が逆転したのでしょうか?
記事で示されている答えは、ある意味で単純です。それは「影響力を持つ(≒フォロワーの多い)ユーザーが"#LessAmbitiousMovies"を使ったから」。Lizz WinsteadやBarracks O’Bamaといった著名ユーザー(フォロワー数は両者合わせて3万人超)がこのタグで遊び始めた後、同じように参加する人々が増えたことが示されています。
しかしそれだけで終わらないのが、このデータの面白いところ。先ほどのグラフで「B」というアルファベットが示されている場所があると思います。ここで下降線にあったツイート数が、ちょっと盛り返していますね。実はこのタイミングで、520万人(現在は530万人)という膨大なフォロワーを持つKaty Perryが大喜利に参戦。単にフォロワー数だけ見れば、100倍以上の影響力を持つ人物が"#LessAmbitiousMovies"タグを拡散したわけですね。その結果、ツイート数は盛り返すかに思われましたが……結果としては、ちょっと盛り上がっただけで再び下降に転じてしまいました。
このデータから、記事はこんな結論に至っています:
So add this finding to your hashtag playbook: getting a great hashtag in front of the right audience is more important than getting it in front of a big audience. Katy Perry’s 5.2 million followers saw #LessAmbitiousMovies, laughed, and moved on. Lizz Winstead and Barracks O’Bama’s crew of 35,000 saw it—and they made it their own.
「ハッシュタグ戦略」に、こんなアドバイスを加えると良いだろう: よく練られたハッシュタグを、適切な人物に対して提示することの方が、数多くの人々に提示することよりも重要だ。Katy Perryのフォロワー520万人は、#LessAmbitiousMoviesのタグがついたツイートを読み、笑ったが、何もせず流してしまった。しかしLizz WinsteadとBarracks O’Bamaのフォロワー3万5千人は、読んだ後に自分たちも参加したのである。
Lizz WinsteadとBarracks O’Bamaのツイートに、実際にどれだけ「人を動かす力」があったのかは分かりません。単に先に大盛り上がりしていたので、Katy Perryが参戦したタイミングでは人々は飽きていた、という可能性も考えられるでしょう。しかし当たり前の話ですが、「フォロワーが多い人が(常に)他人を動かす影響力を持つとは限らない」という点を、このデータは改めて示唆しているのではないでしょうか。
さらに言えば、自分の広めようとしているミーム=話題が、より感染力を持つ=伝わりやすい場所を選んでそれを投下するようにすること。もしくは感染力を持つように、ミームの方を加工すること。それを再認識させてくれるのが、"#LessAmbitiousMovies"騒動なのではないかと思います。
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