端末の現在地を測定する技術としては、GPSや無線LANの電波による位置測定などが現時点で主流ですが、RFIDや可視光通信を利用するものなど様々なアイデアが試されつつあります。そして新たに、「音」を利用するものがiPhoneアプリとしてリリースされたとのこと:
■ New ‘Batphone’ App Uses Acoustics to Determine Location (McCormick School of Engineering at Northwestern)
ノースウェスタン大学の McCormick School of Engineering and Applied Science が開発したアプリ"Batphone"について。マイクで周囲の音を拾い、その特徴を記録してユーザーにタグ付け(いまどこにいるかという情報)を依頼。こうして集められた情報をデータベース化し、次に別の端末や別の機会で拾われた音を分析、居場所を割り出すというものです。
The Batphone app records 10 seconds of noises that humans often ignore: vents, computers, lights, and appliances. The program then looks at how the sound energy is distributed over various frequencies, and after filtering out transient, short-lived sounds (like someone talking), it creates a sound fingerprint for the room.
Batphoneアプリは人間が無視してしまうことの多い、空調やコンピュータ、電球、その他様々な機器類が立てるノイズを10秒間記録する。そして記録されたデータから一時的な音(誰かの話し声など)を取り除いた後で、様々な周波数において音のエネルギーがどのように分散しているかを分析。端末がある部屋の「音の指紋」を作成するのだ。
「音の指紋」という表現が言い得て妙ですが、とにかくこの「指紋」にタグ付けをしてもらった上で、位置測定に利用するというわけですね。音を利用するというアイデアはKinectでも実用化されていますが、それをモバイル端末で実現し、さらに活用を図ろうとしていると言えるでしょうか。まずデータベースが充実しなければならないという弱点はあるものの、ノースウェスタン大学周辺で行った実験では、かなりの精度で位置測定に成功したとのこと。
こちらがアプリのアイコン。非常に分かりやすい(笑)
で起動すると、このように「"指紋"を計測するから10秒待ってね!」というメッセージが。待ちます。
完了するとこのような波形が表示され、タグ付けを行うことができます。
さらにこのような詳細ビューも。一応GPSのデータも記録されるようになっていて、データが録音された位置をGoogle Mapsの衛星写真上で確認することができます。
ということでデータが集まらないことには恩恵を得ることもできないわけですが、GPSが使えない屋内などで活躍する可能性があるとのこと。またこの技術だけで完璧な位置測定を行うのではなく、無線LANの強度計測など、いくつかの技術と組み合わせて実用化されるのでは?との見通しも述べられています。まだまだ実験段階ではあるものの、アイデアとしては面白いのではないでしょうか。
以前ニュースになりましたが、日立のエアコン「白くまくん」には「聞くセンサー」というものが搭載されていて、生活音に応じて自動で運転状態を変える(テレビが付いていれば運転音を抑える、掃除機が付いていれば空気清浄を実施する等)という機能が実現されています。実は端末が周囲の状況を「知る」上で、大きな可能性があるのが音声という分野。今後あっと驚くような技術とサービスが登場するかもしれません。
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