既に週末から報道があったので、ご存知の方も多いと思いますが、米Amazon.comで書籍のページ単位での販売が始まりました。
書籍をデジタル化し、ページ単位で販売する動きが本格化 (Japan.internet.com)
今日付けの日経産業新聞(2面)にも、大きくこのニュースが報道されています。
ちょうどiTunesがCDから個々の曲を切り離し、ばら売りするモデルを確立したように、Amazonが「ページ単位でコンテンツを買う」というモデルを確立する可能性が高いと思います。もちろん小説などをページ単位で買う人はいないと思いますが、「○○さんが書いている章だけ」「アンケート調査結果だけが載っているページだけ」という単位でコンテンツを買えるようになることは、多くの人にとってメリットがある話でしょう。
気になるのは、この動きが新聞や雑誌まで波及するかという点。Amazonの動きが急に変革を促すとは思えませんが、ページ単位でコンテンツを買うことの便利さに人々が気づけは、今後「宣伝会議に掲載されている、バズマーケティングに関する記事だけが買いたい」「日経新聞で、ブログに関する記事だけを購読したい」などというニーズが現れる可能性は高いのではないでしょうか。
書籍に限らず、新聞や雑誌のページ単位での販売が本格化したとき、出版業界のビジネスモデルはどう変化するのでしょう。日経産業新聞の記事では、こう指摘されています:
コロムビアミュージックエンターテイメントの広瀬禎彦社長は「まずは新人アーティストをネットで売り出し、ヒットしたら新曲を追加配信したり、需要に応じアルバム化するといった発想も必要になってきた」と指摘する。音楽のばら売りはレコード会社に事業構造の変革を迫っており、出版業界でも同じことが起こる可能性がある。
音楽業界を真似たモデルができるとすると、例えば「ブログなどを通じて記事を書かせ、人気があるコンテンツを書く記者には本を一冊任せる」などといったプロセスなどが生まれてくるのでしょうか。そうなると、コンテンツは「○○新聞」「○○業界誌」などといった媒体のブランド、もしくは「日本経済新聞社」「ダイヤモンド社」などといった出版社のブランドを離れて、それを書いた著者により強く結びつくようになる可能性があります。「コンテンツばら売り時代」の出版社は、レコード会社のように「どれだけ人気アーティストを抱えているか/アーティストをプロモーションするか」という点に焦点がシフトする---という将来も、シナリオの1つとして描けると思います。
もちろん様々な要因が影響してくるので、シナリオ・プランニングしてみると面白いかもしれませんね。また書籍の電子化・ページ単位での販売に関連して、もう一つ気になっているのは「電子古本サービス」が生まれるのかという点。法律関係の問題はまったく無知なのですが、個人が自分の買った電子書籍を、古本としてネット販売することはできるのでしょうか?またブックオフのような既存の古本業者は、どのような変化を遂げるのでしょうか。興味は尽きません。
※11月9日追記
ちょっと思ったのですが、インターネット上での本のばら売りが一般的になると、現実の世界での本の書き方が変わってくるのではないでしょうか?つまり、逆にばら売りされることを意識して中身を作る(どこから読んでも分かるように章立てする、脚注は同じページ内に付ける、他ページを参照する際にはちゃんと書籍名・著者名などを入れて、後で買ってもらいやすくするなど)といった動きが出てくるような気がします。
また記事のヘッダもしくはフッタには、必ず書籍名+出版社名+章の名前などが記されるようになったりして(これは言わば、章のパーマリンクですよね)。ネット上の慣行が、リアルを変えていくことになるのでしょうか。
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