今日はプライベートな立場でしたが、ビジネスブログの説明をするためにある企業を訪問していました。帰ってからニュースをチェックして知ったのですが、SONYが新型Walkmanのプロモーションをするために開設したブログが、ブロガーの批判を受けて閉鎖に追い込まれたようです。詳しくは以下のブログで解説されています:
企業が競合ではない時代(NewBiz Practice)
ちなみに閉鎖されたブログのURLはこちら:http://www.so-net.ne.jp/blog/walkmandiary/。現在(11月27日午後8時)は以下のようなお詫びだけが掲載されています:
この件について、インフォバーン社長の小林弘人さんも記事を書かれています:
ブログ・キャンペーンの失敗から何を学ぶか?(小林弘人:kobahen.com)
既に閉鎖してしまったブログなので、何があったかは又聞きで推察するしかないのですが、だいたい以下のような流れのようです:
- SONYが新型Walkman(Aシリーズ)の発売に合わせて、「ウォークマン体験日記」というブログを開設。
- しかし製品に対する不満が多く、ブログや巨大掲示板などにネガティブな意見が蔓延。「ウォークマン体験日記」にも批判コメント・トラックバックが相次ぐ。(一部はSONY側に削除された?)
- さらにアップルを批判するようなコメントが「ウォークマン体験日記」に書き込まれ、これがSONYの自作自演ではないかと疑われる。この件でブログはさらに混乱。
- けっきょく騒ぎが収まらず、ブログは閉鎖、SONYからのコメントはなし。
これを見る限り、ビジネスブログでやってはいけない最悪のパターンをやってしまったようです。既に多くのブログでコメントされていますが、批判的なコメントやトラックバックから逃げるような姿勢を見せると、かえってブロガーの反感を煽るだけです。SONYがそもそも批判を受け止める心構えがあったのかどうか、それすらも疑わしく感じます。小林弘人さんがコメントされているように、もしかしたら全てを企画したのは広告代理店で、「ブログもキャンペーンに入れておきました」的な態度で始められたブログだったのかもしれません。
「ウォークマン体験日記」を企画・運営したのがSONY内部のどの部門だったかは分かりませんが、広報やマーケティングといった、本部系の組織による企画だったとすると、今回の失敗もやむを得なかったと思います。ビジネスブログは企業のブランドを背負いつつも、ブロガー個人の顔が前面に出るという点で、広報よりも営業に近い性格が求められます。SONYの担当者は慣れない対応を強いられ、そうと気づかないまま最悪の反応をしてしまったのではないでしょうか。
僕も短期間ですが、広報に近い立場で仕事したことがあるので、ブログがいかに従来の「広報」という活動から離れた性質を持っているかを感じることがあります。広報は個人の特徴や意見を出すことがあってはならず、その活動が即「企業としての行動」と見なされます。従って慎重に慎重を重ね、できる限り承認を得た上で行動することが求められます。「個人」として顧客一人一人と話し合うなど、ほとんどあり得ないことです。
ところがブログでは、むしろ個人のキャラクターを出すことが求められます。またブログの速報性を生かすために、即断で行動した方が良い結果を生む場合があります。さらに、トラックバックやコメントなどを通じて、特定のブロガーと対話することが求められる場合もあります。旧来の広報という分野で仕事してきた人々に、ブロガーとして正解の行動を取れと言うのは、急には無理な話なのではないでしょうか。組織の枠組みを離れて、「誰が顧客と語り合うのに適切な人材か」を考えないと、ビジネスブログを担当するブロガーを正しく選ぶことはできないでしょう。
SONYの失敗を見て、ビジネスブログを始めることに躊躇する企業が増えることを懸念しています。難しいからチャレンジしないというのでは、新しいコミュニケーション手法で成功する可能性を自ら潰す行為でしょう。逆に他の企業がためらういまこそチャンスと捉えて、ビジネスブログに積極的に取組む企業が出てくることを期待します。
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