2006年1月よりサービスが開始される、モバイル検索サービス「ニワンゴ」について、西村博之氏のインタビューがCNETに掲載されていました:
モバイルには検索よりリコメンド--「西村博之氏+ドワンゴ」の挑戦 - CNET Japan
ニワンゴが目指すモバイル検索の姿というものが感じられる、興味深いインタビューです。パーソナライゼーションやリコメンデーション、携帯電話メールの特性を生かしたサービス設計、広告収入モデルなど、これからのモバイル検索サービスを考える上でも参考になる記事ではないでしょうか。
僕は「携帯端末情報やメールアドレスを通じたパーソナライゼーション」、「過去の検索キーワードを基に最適化された広告メールの配信」といった点に興味を引かれたのですが、特に面白いと感じたのが「あいまい性」に関する部分:
例えばある人の食の好みというのは、3食全部のデータがなくても、ランチのデータが一定期間あれば、大体わかってきます。しかも、こちらからのリコメンド が毎回完璧に合っていなくても、8割程度合っていれば「よく合っている」って思うものなんですよ。占いと同じ原理ですね。(杉本誠司氏)
そういう人間のあいまい性を利用するのがニワンゴの特徴でもあります。機械的な検索は正確性ばかりがサービスの良し悪しとして判断されてしまいますが、ニワンゴに人間っぽさを持たせることで、そういったあいまい性も含めて楽しめるサービスにするという狙いがあります。(西村博之氏)
「あいまい性」というとネガティブな要素に考えられがちです。実はユーザーは100%の正確性を求めてはいない、あいまい性も楽しんでもらえる部分なのだ、と捉えるのは逆転の発想ですね。最近「機械が(正確には、機械を通じて与えられる情報が)人間を説得するのはどういう場合か」という問題について考える機会が多いのですが、人間は思ったほど論理的には行動しない生き物のようです。あいまい性、完璧ではないという部分をどのように提示するかによって、与えられた情報に対する反応が大きく変わってきます。「あいまい性を楽しませる」というニワンゴの姿勢、実はサービスの満足度を大きく向上させる要素なではないでしょうか。
完璧では無い部分を、逆に割り切って考えるという姿勢は、次のコメントからも窺えます:
携帯電話向けサイトの場合、個々のサイトが独立していて、サイト同士がリンクを張り合うことも少ないので、そもそもサイトのクロール自体が難しいんです。 サイトの母数が少ないので、ユーザーが検索しても期待した結果が得られる確率がまだ低い。しかも回線速度が遅く、ディスプレイも小さい携帯電話で検索結果 を1件1件ユーザーが確認するのは大きな負担になります。それよりも、「これが答えです」と提示してあげたほうがいいとニワンゴでは考えています。
「これが答えです」と提示する場合にはどんな基準に従ったかが重要になりますが、ある程度納得のいく基準ならば、ユーザーはリコメンデーションを受け入れるのではないでしょうか。例えば携帯電話端末IDやメールアドレスを通じたパーソナライゼーションにより、「あなたの過去の検索行動から見て、これがベストの回答です」と言われれば、多くのユーザーは「そうか、それじゃこの3件だけチェックしよう」といった態度で接すると思います。
過度の客観性よりも、良い意味での主観性をもってユーザーに接する。実はニワンゴの追求するモバイル検索、これまでの検索とはまったく異なる発想を持つサービスなのかもしれません。
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