いわゆる「団塊の世代」と呼ばれる人々が大量に定年退職してしまい、彼らの持つ暗黙知が失われてしまう危険があるという「2007年問題」。徒弟制を導入し暗黙知を暗黙知のままで若い世代に引き継がせたり、定年退職者を再雇用する制度を作るなど様々な解決法が論じられています。中でも「暗黙知を形式知化する」ことには多くの企業がチャレンジしていますが、それをサポートするソフトが開発されたというニュース:
東京電機産業 技能伝承ソフト -- 熟練の勘・経験データ化(日経産業新聞2006年2月21日第1面)
東京電機産業が開発した「バッチルポ」というソフトについての記事。製造現場における技能伝承を支援するソフトで、ベテラン社員の書く帳票を数値化し、データを分析して知識を「見える化」しようというものです。このアイデアの場合、どうやって暗黙知を数値化するのかがポイントになるわけですが、バッチルポでは次のような仕組みとなっています:
- 材料の投入量、投入時の温度・圧力といった加工条件を帳票に記入。
- 熟練工が現場を確認、「バルブが詰まり気味」「材料の状態:どろどろ」といった注記を書き込む。
- 対応策を行った場合、その詳細も記入する(圧力設定や材料投入量をどう調整したか etc.)。
- 帳票を電子化し、一連の作業結果(生産効率や品質など)に関する数値データと組み合わせる。
以上のプロセスにより、定性的な状況認識と、数値化された行動・結果が関連付けられたデータとして保管されるわけです。実際の製品を見ていないので想像でしかありませんが、例えば「材料の状態がどろどろの時、完成品の純度が最も高くなったのは、圧力設定を○○に調整した場合」といった検索も可能なのではないでしょうか。これならば「知恵」が具体的な結果として可視化されていますし、ユーザーにとっても安心して過去の例に倣うことができるようになるはずです。
また自然文で書かれる「注記」がどの程度解析されるのか分かりませんが、「どろどろ」を「どろっとしている」「粘度が高い」といった別の表現で検索できたり、「材料の状態がおかしい」「変質している」といった上位概念で検索できたりすれば、さらに知識の掘り起こしが楽になるでしょう。さらに「どろどろ」という表現、もしくはその類似表現が使われた場合、加工条件が○○であることが多いといった風に、定性的なレポートを定量的な原因分析につなげることも可能なのではないでしょうか。
「定性的な情報に、定量的なデータを可能な限り結び付けておく」という仕組みをブログに当てはめると、例えばSeeSaaのように最初からダイエット記録がつけられるようになっているブログで、「○○というキーワードが多く登場する週は、体重の減りも速かった」などといった分析ができるようになるかもしれないですね。本文記入欄以外に、フリーで様々な数値データを入力してける項目が用意されているブログ、なんてあれば様々な応用ができそうです。
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