米Yahoo!の技術部門責任者であるBradley Horowitz氏のブログに、Flickrやdel.icio.usといったソーシャル系WEBサービス(記事中では"social media sites"と総称)のユーザー分類について、面白い解説がされています:
Creators, Synthesizers, and Consumers (Elatable)
曰く、ソーシャルメディアの利用者はクリエーター、シンセサイザー、コンシューマーの3つに分かれ、以下のような構成比率になるとのこと(記事中に掲載された図を転載):
またYahoo! Groupsを例にとり、それぞれのユーザー種別を以下のように詳説されています:
- 1% of the user population might start a group (or a thread within a group)
- 10% of the user population might participate actively, and actually author content whether starting a thread or responding to a thread-in-progress
- 100% of the user population benefits from the activities of the above groups (lurkers)
この概念を基に、Horowitz氏は「サイトに訪れる利用者の100%をアクティブ・ユーザーにしなくても、優れた価値を生み出すことができる」と論じています。つまり1人のクリエーターと、それに反応して議論を深めるシンセサイザー達が合わせて10人いれば、合計100名のユーザーにとって価値のあるコンテンツを提供できるわけです。逆に100名がアクティブな情報発信者になってしまったら、ノイズが増えて逆にサイトの価値は下がる、とも述べています。
クリエーター/シンセサイザー/コンシューマーの構成比率についてはサイトによってバラつきがあるかもしれませんが、ソーシャル系WEBサービスが少数のコンテンツ作成者と、多数のコンテンツ利用者から構成されていることは議論の余地は無いでしょう。ここで新しい視点なのは、このユーザー構成が価値を生み出しているのだから、無理にユーザー全員にアクティブな参加を求めなくて良い、としている点だと思います。
記事でも指摘されている通り、この考え方に立てばソーシャル系WEBサービスは「投稿(コンテンツを作り出すこと)」機能を充実させるだけでなく、「閲覧(コンテンツを利用すること)」機能も充実させる必要があるということになります。つまりコンシューマーはコンテンツを「生む」ことではなく「得る」ことにサイトの価値を見出しているのだから、彼らのただ乗りを否定するのではなく、それを促進するような仕組みが無くてはならないわけです。具体的には、検索機能や分類機能の充実、ダウンロード機能の追加といったところでしょう。音楽や映像などで言えば、権利関係を明確にしておくことなども入るかもしれません。
この3層構造を意識しておくことは、ビジネスモデルの構築や収益の予測を行う際にも重要かもしれませんね。自分の提供するサービスがどのような構成比率になるかを把握することができれば、誰にいつ、どんな機能を提供して、そこからどれだけの収益を上げるかを考えることができます。そこでもし思ったように収益が上がらないことが分かった場合、自分の望ましいように構成比率を変化させる手段を考えてはならない -- クリエーターやシンセサイザーにならなくてもサイトに価値を見出してもらえるように、それぞれの層に合った価値を提供することを考えなくてはならないというのが、Horowitz氏の記事から得られるアドバイスだと思います。
というか、経験則ですが(組織論的な話にもなりますけど)、どうもこういった感じの分類にしかならないみたいです。コミュニティってのは基本的にそういうモノなんだと、受け止めています。
アーキテクチャーが少々違ってもあんまり変わんないみたいですね。
投稿情報: SW | 2006/02/18 19:39
確かにHorowitz氏の記事でも、FlickrやYahoo!Groupなどの区別なく語っていますね。1:10:100の構成になるかどうかは別として、成功したコミュニティはこうなるものなのかもしれません。
投稿情報: アキヒト | 2006/02/18 20:18
良かったらニフティとかAOLとかもっと古いのを遡ってみるのをお勧めします。
日本のネットコミュニティ文化で間違いなく歴史も深みもあるのはニフティですよ。
投稿情報: SW | 2006/02/19 08:27
>良かったらニフティとかAOLとかもっと古いのを遡ってみるのをお勧めします。
そうですね。よく考えたら、かつてはどちらのユーザーでもありました(ニフティはワープロの通信機能(!)を使っていた時に、AOLは初めて自宅でインターネットに接続した時に)。春休みの自由研究にさせて下さいw
投稿情報: アキヒト | 2006/02/19 13:01
SWさんのおっしゃるようにニフティサーブと比較するというのは、とてもよい手法だと思います。ネットのコミュニティ的な側面、情報プロバイダとしてのサービスなど、骨格的なものが提供されており、最大で300万人近くの組織(現在のMixiと同程度)をもっていたという面でも参考になる面が多いです。
通信環境やハードの普及といった条件がことなるなかで、通信料とは別に情報料を従量的に課金したしくみには学ぶべきことが多いと思います。(もちろん失敗についても)
投稿情報: p-article | 2006/02/21 10:32