昨日の日経流通新聞によれば、なんでも「リフォーム」というのは和製英語で、欧米では「セルフリノベーション(self-renovation)」という単語を使うのだそうな。
■ ブームの予感 -- セルフリノベ 理想の家 出来た -- 仲間と汗、愛着ひとしお(日経流通新聞2006年4月24日 第20面)
ただし記事の解説によれば、2つの単語はちょっとニュアンスが異なります。日本の「リフォーム」が業者が主導で行われる「受動的改造」であるのに対して、セルフリノベーションは自らが手を動かして行う「能動的改造」という意味合いがあるとのこと。
自分で行う家屋の改装の総称。欧米では家主が自ら仕掛けるのが一般的で、自分流のライフスタイルや住まいに対する哲学を反映しやすい。
と解説されています。記事ではその代表例として、東京・馬喰町で築30年の商店の改装に挑んでいる河田将吾さんが紹介されているのですが、ブログやmixiで経過を公開中とのことですからご存知の方も多いかもしれません:
■ セルフリノベーションレポート 日本橋馬喰町GOLDFARM
河田さんご本人が「部活みたいな感覚です」と表現されているように、仲間で集まって改装を手掛けるというのは、なかなか楽しそうです。誤解を恐れずに言えば、一種の「秘密基地ゴッコ」みたいな快感があるのではないでしょうか。
記事ではこの「セルフリノベーション」をサポートするサービスが現れてきていることに触れられています。例えばセルフリノベーション向けの通販サイト「Roomkit」や、セリフリノベーション支援を行う設計事務所「横田満康建築研究所」など、その形態も様々なようです。
以前から「リードユーザーイノベーション」というキーワードで、ユーザー主体のイノベーションを取り上げています。セルフリノベーションも「ユーザーが主導して行われる改善活動」という点で、リードユーザーイノベーションと同じバックボーンを持つ動きと言えるのではないでしょうか。またブログなどを通じて醸成された「自ら参加者・製作者となること」という文化が、家という最大の私有物を対象とするようになってきた、と捉えられるかもしれません。とすれば、今後も「セルフリノベーション的な動き」というものは増えてくるように思います。
例えば以前、百式の田口さんがトートバッグを作るプロジェクト「1001010」を開設されていることをご紹介しましたが、同じように「自分が欲しいと思うバッグを造ろう」「自分が一番使いやすいPCデスクを造ろう」「iPodケースを造ろう」などといった人々が現れるような気がします。そういった人々を目当てに、「セルフリノベーション的活動支援」を行う業者も増えることでしょう。「製造業」という言葉に、「何かを作って売る業者」という意味の他に、「何かを作りたい人々を様々な形でサポートする業者」という意味が含まれる時代が来るかもしれません。
ちなみに日経MJの記事によると、「フランスではリノベを業者に依頼するのはクリエーティブじゃないと見られる」とのこと。これから日本でも、自ら体・頭を動かして何かを造り出すのが「カッコイイ!」としてブームになるかも?
はじめまして。
セルフリノベーションについて、興味を持たれる方が最近多くいらっしゃるように感じています。多くの方の余裕が割ける対象が、衣→食→ようやく住へと向かってきているということでしょうか。
私有の空間に興味関心や製作への情熱が傾けられるにしたがって、住まいの存在するの「まち空間」そのものへの関心も高まることを願います。
家という大きな構築物。単なるブームに終わらず、暮らしそのものを楽しめる文化が根付いていくとうれしいです。
投稿情報: n. | 2006/05/19 15:18
n.さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
確かに衣→食ときて、ようやく「住」に人々の関心が向かい始めたということかもしれませんね。また仰る通り、住宅は周囲の環境と切り離せないものですから、「住」を考えることが街や環境を考えることにもつながっていくと思います。
セルフリノベーションが継続していくためには、Roomkit http://www.roomkit.com/ さんのようなサイトが充実することが欠かせないと思います。今後の発展を期待しています!
投稿情報: アキヒト | 2006/05/19 19:55