地図情報サービスを手掛けるインクリメント・ピーが、海外の電子地図データを活用したサービスの提供を始めるとのこと:
■ インクリメント・ピー 海外の電子地図展開 -- まず「ドイツ特集」 無料、携帯向けも開設(日経産業新聞 2006年4月11日第2面)
インクリメント・ピーのプレスリリースはこちら:
■ インクリメントP社が提供する地図サービス「MapFan」でドイツ都市特集「Road to Germany2006」を公開(PDFファイル)
ちなみに第1弾として発表されたサービス「Road to GERMANY 2006」はこちら:
今回活用されているデータは、親会社であるパイオニアが海外向けカーナビシステムを制作するために集められたものとのこと。海外企業で詳細な電子地図情報を持つ企業が見つからなかったために、インクリメント・ピーが手掛けることになったそうです。現在、欧州と北米で160都市の地図データを整備しており、今後も拡充して行く予定だそうですから、ユニークな経営資源として様々な分野に応用が可能なのではないでしょうか。
ただ残念なのは、今回の「Road to GERMANY 2006」があまりインパクトの無いサービスとなってしまっていること。旅行ガイドブック大手の「地球の歩き方」と組んで始めたサービスだそうですが、そのせいか単に紙媒体のガイドブックを、デジタルに置き換えただけという印象を受けます。携帯電話で見れるところは便利かもしれませんが、海外ローミングはまだまだ一般的になっているとは言い難いですし、形態性という点でも紙媒体はケータイに比べて遜色あるとは言えません(紙媒体であれば、電子機器に必要な「立ち上げる/アクセスする」という手間が無いですしね)。
もしかしたら今後、電子媒体ならではの「速報性」前面に出したサービスになるのかもしれません。例えば現地を訪れた旅行者や在住者が、クチコミ情報をアップするようなイメージです。そうすれば確かにユニークな価値を提供するサイトになると思いますが、しかしそれは地図データを「活用する側」の工夫であって、地図データを提供する側の工夫ではありません。つまりどんなにユニークな経営資源を持っていたとしても、それを目に見える価値にしなければ「稼ぐ」ことは難しいと思います。「Road to GERMANY 2006」で表示されている地図はインクリメント・ピーでしか提供できない情報なのかもしれませんが、正直なところ、Google Mapsをベースにしていたとしてもさほど違和感がないのではと思います。
これが例えば、Google Maps/Google Earthのようにカーソルでグリグリ動かせるようになっていたり、交差点の拡大が高速で出来たとしたらインパクトがあるでしょう。そういった「電子媒体ならでは」の価値が容易に実現できるような形で情報を提供することで、初めて競争力が生まれてくると思います。正直言って「地球の歩き方」の情報にも古いもの・間違っているものが多いですから、媒体としての地図の価値さえ確立できれば、逆に「上に載せる観光情報を提供するのはJTBでも、近畿日本ツーリストでも良い」ということになるはずです。
今回、「海外地図情報」という新しい視点のWEBサービスが生まれてきたことには注目されるべきだと思います。しかし同時に、紙媒体で手に入る情報をWEBに載せる意味は何か、どんな価値を実現しているのか、その中で自社でしか実現できないユニークな価値は何か(どうやって自社からサービス提供を受けざるを得ない状況を作り出すか)という点がより考えられてゆくことを期待したいと思います。
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