『日経ものづくり』の2006年5月号で、「使いやすさへ挑む~『基準なきユニバーサル・デザイン』からの脱皮」という特集が組まれています。ユニバーサルデザインの実現に現場でどう取り組むか、という実践的な内容で興味深いのですが、その中で「カラーユニバーサルデザイン」という概念が紹介されていました。
恥ずかしながらカラーユニバーサルデザインという単語を聞いたのは初めてだったのですが、「色の見え方(色覚)の違い」に配慮する概念とのこと。「色覚バリアフリー」という単語が使われる場合もあるようです。詳しくはカラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)というNPO法人が存在していますので、そちらのホームページをご参照下さい:
考えてみると、「色」というものが重要な機能を担うケースはあちこちに見られます。色の違いで状態を表現したり、危険を示したり、グルーピングを表したり。それだけに色覚に対する配慮は大切であり、ないがしろにすればアクセシビリティを大きく失うことになります。
幸い、肉体的な障害(老化現象など)と比較して、色覚障害の状態をシミュレーションすることは容易に行えます。例えば『日経ものづくり』の記事で紹介されている"Vischeck"というツールでは、WEBで写真をアップロードもしくはサイトのURLを指定するだけで、色覚障害者の目で見た光景を再現することが可能です。
実際にやってみましょう。これは写真をアップロードしてテストしてみたものです(クリックで拡大):
またこちらは、某コンサルティング会社のWEBサイトを第2色覚障害(deuteranope)の状態に加工したもの(クリックで拡大):
こういったツールを使用すれば、何が見やすい/見にくい状態なのかということがチェックできるでしょう(実際、某コンサルティング会社以外のサイトも試してみたのですが、色が変わると読みづらくなるものがいくつかありました)。また「ここで青いボタンをクリック」「緑色のランプが点灯したら完了です」といった、色彩に頼った説明を予防することにもつながると思います。
Vischeckは単に色覚障害の状態をシミュレートするだけで、「こうするべきだ」といったコンサルテーションはしてくれません。しかし日経の記事でも指摘されているように、「基準ができてしまうと、そこをクリアするだけで満足してしまうもの」です。不断の努力を促すためには、この種のシミュレーションツールが果たす役割は大きいのではないでしょうか。
「カラーユニバーサルデザイン」は、開発段階ではユーザーの視点が抜け落ちてしまいがちであるということを示している1つの例だと思います。特に色覚障害は表面に出にくい事例であるだけに、対応が遅れているのでしょう。この概念がより広く普及することを願います。
えーっ
カラーアクセシビリティといえば、富士通のソフトじゃないんですか?
http://jp.fujitsu.com/about/design/ud/
投稿情報: itochan | 2006/05/08 22:08
おぉ、富士通もカラーアクセシビリティに関するソフトを出してるんですね。情報ありがとうございます。
Vischeckは『日経ものづくり』でこの分野における画期的ソフト、みたいな紹介がされていたので取り上げてみました。その他同種のソフトがいくつかあるようですね。
投稿情報: アキヒト | 2006/05/08 22:17