お盆休み…といっても僕は特に予定なし。休みもカレンダー通りなので、せめてお出かけをということで東京国立博物館の「若冲と江戸絵画」展に行ってきました。
若冲の作品はどれも素晴らしく、満足できる内容の展覧会だったのですが、面白かったのはその展示方法。ある一画が特別なコーナーになっていて、そこでは照明の強さと色が徐々に変化し、あたかも朝から昼、夕方と時間が移ろう部屋で作品を鑑賞しているような気分になります。
この手法、今回の出展作品のコレクターであるジョー・プライス氏が「日本絵画では光(室内の照明)が重要な役割を果たしている」という自論を持たれていることから実現したのだとか。「たかが照明でしょ?」と思われるかもしれませんが(僕も最初そうでした)、光の変化によって作品はダイナミックに変化し、とても同じ絵が目の前にあるのだとは思えないほど。かつてこれらの作品(屏風や掛け軸)を所有していた人々のみが知り得た「本当の魅力」というものが垣間見える展示となっています。
ふと感じたのですが、これって旭山動物園の「行動展示」と同じ発想ではないでしょうか。旭山が「動物本来の姿」を見せることを目的としているのに対して、若冲展では「作品本来の姿や楽しみ方」を見せることを目的としています。展示物が置かれていた環境を再現するという点で「美術版行動展示」とでも呼べると思います。
実は東京国立博物館では、「あなたならどう見る?ジャパニーズ・アート」という企画を実施していて、ここでも「作品本来の姿・楽しみ方を見せる」という工夫がされています。例えば畳が用意されていて、その上に立ったりあぐらをかいたりして鑑賞できたり、ミニチュアの屏風を配置してベストなポジションを考えたり、作品のレプリカ(の一部)に触って表面の凹凸を確かめられるようになっていたりなどなど…従来のようにガラスケースの中に置いておくだけでは決して味わうことのできなかった、本当の魅力というものを感じることができました。
「見せる」という行為は本当に難しいことです。従来の手法で十分だ、と考えていては、せっかくのプレゼン時間(お客様に見に来てもらえる時間)を十分に活かし切れないということになってしまうかもしれません。見せたいものの本当の魅力を伝えているか、100%伝えているかを注意しなければいけないと感じました。
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