相変わらず、アーリー・アダプター層のオタク的ツールといった感がぬぐえないRSSリーダー。しかし年明けには Vista も出るし、RSSという存在が一般人にも身近なものになるのは目前・・・と思いきや、こんなニュースがありました:
■ Why Yahoo is Backing Away from RSS (Micro Persuasion)
久々に Micro Persuasion のネタですが、米 Yahoo! が最近リリースした一連のサービス、Yahoo! Food ・ Yahoo! Advertising ・ Yahoo! TV の3サイトにおいて、RSSフィードが用意されていないとのこと。これが普通のサイトなら「単に意識が回らなかったんじゃないの?」で済まされるのですが、これまで Yahoo! はRSSを積極的にサポートする姿勢を見せており、今回の現象は明確な方向転換なのではないか・・・と推測されています。
方向転換なのであれば、その理由は?ということになりますが、Steve Rubel の結論は「コンテンツの囲い込みを狙っている」というもの。2004年11月に Yahoo! Media Group に加わった、元 ABC Entertainment 会長の Lloyd Braun 氏の差し金ではとしています。従来型の「自分のところでしか得られないコンテンツを用意して、自分のところに来てもらう」という考え方への回帰ですね。
僕らのような一個人の情報発信では、何よりも多くの人にコンテンツを見てもらうことが重要になります。この記事が読まれるのが Polar Bear Blog の上でなのか、あるいはどこかのRSSリーダーの中でなのかは重要ではなく、読んでくれる人の手元に届けば良いわけです。「価値のある(かどうかは分かりませんが)コンテンツをタダで渡す代わり、名前を覚えてもらう」といった感じですね。
しかし Yahoo! などの大手企業サイトはそうはいきません。「コンテンツをタダで渡す代わりに、広告を見てもらう」という流れにならなければマズイわけで、「広告のあるところ=自分のサイト」になるべく来てもらう必要があります。従ってRSSでコンテンツを配ってしまうのは逆効果になる・・・とまぁ、こんなことはいまさら説明するまでもないですよね。Yahoo! だってそれを百も承知だったと思うのですが、なぜいま「やっぱりRSSをやめるか」ということになったのでしょうか。
RSSで配信するとサイト上の広告が見られなくなることへの解決策として、RSS広告という発想があったはずです。しかし簡単なように見えて、RSS広告はまだ普及していません。実際、たまに広告が入ったRSSフィードを見かけることがありますが、個人的には10フィード登録して広告付きは1つあるかないかといった程度でしょうか。またテキストではなく、バナー型の広告を出す価値についても、こんな調査結果が出ています:
■ Click on Me Now or Visit Me Later (New York Times)
DoubleClick が実施した調査によると、回答者の30%が「時折バナー広告をクリックする」と答え、クリックしなかった人の中でも61%が「後で(自分でサイトを調べるなどして)宣伝されていたサイトを訪問する」と答えたそうです。WEBサイトのバナー広告には、広告されたサイトへと誘導するだけでなく、宣伝されたモノを認知してもらうという「ブランディング効果」があることが指摘されていますが、これを実証する結果となっています。
RSS広告でもバナー広告の配信は可能ですが、RSSリーダー側で画像がカットされてしまう場合があります。従って、RSS広告を自社サイト上の広告と同じ効果を持つまでに発展させるのは、まだまだ難しいというのが現状ではないでしょうか。
もちろん Yahoo! が新サイトでRSSのサポートを行わなかったのには、広告以外にも様々な理由があると思います。「普及する」といわれながら、なかなか一般人には広まらないという現状が続いていることに業を煮やした、ということも考えられるでしょう。いずれにしても今回の Yahoo! の行動が、どんな技術にもある一時的な「バックラッシュ」の前触れなのかどうか、注目する必要がありそうです。
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