社内でマインドマップが流行っています。僕もフリーソフトをたまに使ってみたりするのですが、いまいちサンプルとして紹介されるようなすっきりしたマップが書けません。大きな声では言えませんが、僕の周りで「あの人は上手くマインドマップを書くなぁ」という人もいないし。
マインドマップに限らず、世の中は図解ブームのようです。書店に行けば「○○流図解術」みたいな本がたくさん出版されているし、3月3日の日経産業新聞(第25面)でも「仕事で行き詰ったら・・・図書いてスッキリ」という記事が載っていました。記事によれば、「図を書くという行為には物事の関係をはっきりと理解させ、仕事を効率化する力がある」とのことです。
しかしマインドマップの例を考えると、「図解はすばらしい!」と手放しで賞賛はできません。天邪鬼な僕は、あえて図解の弊害を考えてみました。
弊害①:思考が単純化する
日経産業新聞の記事によれば、「基本はマルと矢印だけ」を使って図解するのが良いそうです。「基本は」と書かれているところにツッコミを入れるのもアレですが、マルと矢印だけで世界が表現されるものでしょうか?
図解して単純化すれば、人生は上の図のようになります。しかし人生そんな単純じゃないことは、僕が言うまでもないでしょう。複雑な物事をシンプルに捉えるのが図解の目的の1つですが、注意しなければ物事を単純化し過ぎてしまう恐れがあると思います。
弊害②:思考が固定化する
確かに図解は物事を整理するのに役立つのですが、一度整理してしまうと、それが固定化してしまう恐れがあります。例えばブログの種類を図形化した時に、
と考えると、何となくこの分け方が正しいような気がします。上司からこの図を書かれたら、この分類をベースに話を進めざるを得ないでしょう。そして、
こんな分け方ができることや、
こんな分け方もできることには目が向けられずに、最初に図形化された整理法に従って議論が行われることになってしまいます。「思考がストップすると同時に、図形が一人歩きを始める」といったところでしょうか。
弊害③:思考が平面化する
当然ですが、図解は2次元の世界のものです。立体的に考えるのには向いていません。もちろん平面に3次元の絵を描くことはできますが、絵心がある人でないと、逆に混乱を招く結果になってしまうのではないでしょうか。
例えば上の図は、ブログ/SNSの分類を行おうとした図ですが、個人利用/法人利用という切り口の他にも、個人ならば自己表現の場なのかアフィリエイト目的なのか、法人ならばPRなのかユーザーとの双方向コミュニケーションなのかといった、「目的」という切り口で分類ができるでしょう。さらに3つ、4つと条件を加える場合には、よほど上手な図にまとめる自信がある人でなければ、文章にしてしまった方が速いかもしれません。
弊害④:後で説明が必要
弊害③のところで「上の図は、ブログ/SNSの分類を行おうとした図ですが、個人利用/法人利用という切り口の他に・・・」とサラリと書いてしまいましたが、弊害②の図からはさまざまな解釈が可能です。「法人=社内ブログ」と考えた人もいるでしょうし、「SNSの法人利用?ああ、顧客の囲い込みを目的として、企業が設置するSNSのことだな」と考えた人もいるでしょう(実際は社内SNSもメジャーになりつつあるわけですが)。
ある図を作成した現場に立ち会った人には明快な図でも、後から見た人にとってはチンプンカンプン、というのはよくあることではないでしょうか。図だけまとめて安心していたら、後で見返したら何のことかサッパリ・・・ということになる恐れもあります。図解は物事を単純化するのが得意なだけで、全てのメッセージを過不足無く伝えるものではありません。
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というわけで「図解ブーム」に勝手な批判をしてみましたが、図解にメリットがあることは確かです。しかしメリットを最大化し、デメリットを減らすためには、
- いきなり図解しようとしない
- 一度書いた図をリセットする勇気を持つ
- 図形以外の情報も併用する
などといった心がけが必要に思います。
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