タイトルの話。正直、語り尽くされた感もあるのですが、最近いくつか気になる事例を目にして改めて考えていました。
例えば、次のようなデータがあったとします(出展:野村総合研究所「2011年までの国内IT主要市場の規模とトレンドを展望」):
ブログ・SNS市場は、2011年度末に、ブログサイト数1,813万サイト、SNS登録者数5,110万登録となり、金額ベースの市場規模は合計で1,706億円に達する見込みです。これに伴って、ブログ・SNSからECサイトへの誘導が促進され、BtoC EC の市場規模が2011年時点で6兆円を超えると予測されます。
このデータに、次のようなタイトルをつけて読んでみて下さい:
<ブログ・SNSがECの中心に>
ブログ・SNS市場は、2011年度末に、ブログサイト数1,813万サイト、SNS登録者数5,110万登録となり、金額ベースの市場規模は合計で1,706億円に達する見込みです。これに伴って、ブログ・SNSからECサイトへの誘導が促進され、BtoC EC の市場規模が2011年時点で6兆円を超えると予測されます。
お気づきのように、このタイトルは適切ではありません。データには「ブログ・SNSからECサイトへの誘導が促進される」とあるものの、ブログ・SNS以外からのアクセス(検索エンジン経由など)とは比較されていないので、「ECを引っ張るのはブログ・SNSだ」とは言い切れません。しかしタイトルが付くことで、あたかもその主張をサポートするような内容が書いてあった気がするのではないでしょうか。
これは実験なので、タイトルの魔力に対する警戒心があります。しかし身構えていない状態で、タイトルによって無意識のうちにデータの解釈の仕方を誘導されてしまうことを防止できるでしょうか?ソーシャル・ブックマークサービスを利用されている方は、次の実験もしてみてください:
- 自分のブックマーク一覧を表示する
- タイトルを見ただけで、中に何が書いてあったかを思い出す
- 実際の記事にアクセスして、思い出した内容をサポートする事実が書かれているかどうかを確認する
どうでしょうか。タイトルに惑わされず、記事の内容を正確に覚えていたという方はおめでとうございます。しかし多くの方々は、タイトルが記事の一部しか伝えていなかったり、あいまい過ぎて中身を読むまでどんな主張か思い出せなかったり、ひどい場合には明らかな齟齬が含まれていることを発見したのではないかと思います。
ところで、この記事のタイトルは「タイトルの危険性」。ネガティブな言葉が含まれているので、「何か警告なのだな」という心構えで読んでいただけたと思います。しかし仮にこの記事に「タイトルの理解力促進効果」というタイトルが付いていたらどうなるでしょうか?お時間のある方は、試しに1時間後に再度読んでみて下さい。「タイトルからどう身を守るか」という意識ではなく、「タイトルをどう活かすか」という意識で情報を得ようとされるはずです。
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