既にブログ界隈でもウワサになっていますが、昨日発売の週刊東洋経済最新号(2007年8月4日号)で Second Life が特集されています:
上記のリンク先を見ていただければ分かると思いますが、論調は全体的に Second Life 絶賛系。蛇足ながら一部を抜粋すると:
- 革命のポイント 1
ネットの集合知を昇華させる“井戸端”になる - 革命のポイント 2
企業と消費者の“境界線”が劇的に変わる - 革命のポイント 3
“場の共有”による新しい働き方で生産効率が向上 - 革命のポイント 4
アバターの人格が生身の自分の行動を規定する存在へ
こんな感じ。さすがに称賛一辺倒ではなくて、これまでに挙げられた様々な「反論」に再度反論する、肯定側のリバッタル・スピーチといった感じ。しかし紙メディアは Second Life 肯定派が多く、デジタルメディアは懐疑派が多いように感じるのは気のせいでしょうか?
それはともかく、読み始めて早速気になった部分があったので、長いですが抜粋:
セカンドライフ内でのアバターの典型的な行動パターンをスケッチしてみよう。
――夜、会社から帰ってきて、パソコンからセカンドライフにログイン。アバターを操り日本人アバターの人気スポット、池袋の足湯につかりながら、目の前に座った日本人らしきアバターに話しかけたところ、やはりここがお気に入りとのこと。ひとしきり盛り上がった。
相手のプロフィールをのぞくと自分よりセカンドライフ歴が3ヶ月も長い大先輩。いろいろなグループにも入っており、怪しい人ではなさそう。また会いたいと考え、友達になってくれるよう招待。受け入れてくれた。これで、「フレンド」の中に新しいアバター名が登録された。
次の日の夜、セカンドライフにログインすると、友達からいくつかのメッセージが届いていた。その中に、昨日出会ったばかりの新しい友達からメッセージがあった。「10分で10リンデンドル(仮想空間内の通貨)稼げるアルバイト見つけました。躍るだけですって。今晩9時ごろ一緒に行きませんか?」。
たった10分で10リンデンドル!これは何としても行かなければいけない。まだ友達はセカンドライフにログインしていないようなので、「足湯で9時に会いましょう」とメッセージを残しておいた。まだ約束の時間まで、ずいぶんある。友達がログインするまでは、昨日ちょっとだけ見たおしゃれな洋服屋へもう一度行こう。お店の名前を検索し、そのポイントへテレポートした――。
これは、今現在の典型的なセカンドライフ・ユーザーの利用例だ。(後略)
なのだそうです。つまりいま Second Life を使っている人というのは、会社帰りの疲れた体にムチ打って、まるで出会いを求めるように Second Life にログインし、そこで出会ったばかりの見ず知らずの人を「怪しくないな」と判断し、たった10リンデンドル(4セントぐらい?)のために出会ったばかりの人の誘いを受け、夜の貴重な時間を見ず知らずの人と、よく分からないイベントに参加するために浪費する、そんな人々というわけですね。いやー、僕も Second Life ユーザーの一人として、こんな大胆な行動が取れるように頑張らないと!
あんまり皮肉を言っているとまた怒られるのでこの辺にしますが、これが「典型的」ユーザーだと言い切るのはあんまりではないでしょうか。もちろんこんな風に、いわば3D版SNS的に Second Life を利用されている方もいらっしゃると思います。しかし個人的には、見ず知らずのアバターとは世間話をする程度で、友達登録など求めませんし、求められたこともありません。またこんなお誘いがあったとしても、「何か裏があるのではないか」と考えて、夜の貴重な時間を無駄にすることはないでしょう。僕のリテラシーが低くて、「仮想世界」とやらの常識に慣れていないだけかもしれませんが。
ただ週刊東洋経済の記者の方も、どうも本気でこの「典型例」を書いたのではなさそうです。その後に続く文章を引用してみましょう:
確かに、セカンドライフは「帯には短くたすきには長い」ような性格を持っているプラットフォームだ。オンラインゲームと比較する人は、グラフィックの質が悪すぎるし、モンスターを倒してレベルアップする楽しみもない、と切って捨てる。モンスターの居場所まで走り続けるのが楽しいのに、テレポートしたり空を飛んだりするのは、まったく何もわかっていない、とため息をつく。
コミュニケーションツールとして見る人は、ミクシィに代表されるSNSのほうが情報量が多いうえに携帯端末などでも見られるため、よほど便利だと言う。自分が作ったグラフィック作品を多くの人に見せることで自己実現を図る場所だと考える人は、映像をユーチューブに流したほうがよほどよい、と言う。
ネットでカネを稼ぎたいのであれば、別に10分間躍らなくても自分でブログを書き、そこに推薦商品のリンクを張ってアフィリエイトで稼げばいいではないか、と笑う。
が、実はこの否定的な意見の中にこそ、セカンドライフの革新性が隠されている。SNS、ブログ、アフィリエイト……など、「ウェブ2.0」というフレーズに代表されるコミュニティ型サービスのすべての要素が、セカンドライフ内には緩やかに包含されている。
つまり Second Life は「WEB2.0全部入り!」だから凄い。素晴らしい。と、そういう理論を導くために冒頭の「典型例」を作り出した、ように思えます。しかも「セカンドライフを肯定する少数派は、欠点ではなく本質を見て議論する」という挑戦的な一文つき。まるでセカンドライフ会議派が「本質を見ずに欠点をあげつらっている」かのようです(個人的には、懐疑派でも「本質を見た上で欠点を指摘している」人も多いと思うのですが)。
しかし残念ながら、「WEB2.0全部入り!」であるメリットが示されていません。逆に言えば、Second Life には様々な面があるのに、あらゆる面で他の WEB2.0 型サービスに負けている……そうとも読めます。それらが包含され、1つのプラットフォームに載ったときにどんな価値が生まれるのか。また1つのプラットフォームにまとめることでどんな目的が達成され得るのか。その価値や目的は、「要求されるマシンスペックが高い」などといった否定的要素を覆すのに十分なのかどうか。その点が明らかにならなければ、「Second Life ってWEB2.0だ!」では不十分でしょう。
と言うものの、全体を読めばこの答えもどこかに書いてあるのかもしれません。まだ読んでる途中ですよ、という言い訳をしつつ、ご興味のある方はぜひ読んでみて下さい、と宣伝しておきます。
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