今日は夏休みをいただいて、実家に来ています。だからという訳でもないのですが、オフトピですが面白いネタを1つ:
■ Walking to the shops ‘damages planet more than going by car’ (Times Online)
直訳すれば「クルマを使うよりも、歩いてお店に行くほうが環境を破壊する」というタイトルの記事。先日「流出した石油は洗い流すな」というエントリを書きましたが、それと同様に、常識を問い直してみると……という話。簡単にまとめると、以下のような内容です:
- 現代の食糧生産は、過大なエネルギーを消費する。
- 約5kmを移動しようとすると、歩いて行く(それに必要なカロリーを補う食糧を産出する)場合に放出されるCO2の量は3.6kg。一方、クルマを使った場合は0.9kgで、歩いた場合の4分の1で済む。
- 人間が体力を消費することを控え、食事も控えることが温暖化防止につながる。
注意すべきは、5km歩くのに必要なカロリー(約180kcalと想定)を何で補うかによって、発散されるCO2が変化するという点。上記の計算は牛肉を食べたと仮定しての話ですが、牛乳を飲んだと仮定すると、発散量は1.2kg。それでもクルマを使った方が良い、となります(最近はハイブリッド車など、クルマの側でのCO2削減テクノロジーも進化していますしね)。ちなみにこの計算を行ったのは、Chris Goodall という人物。"How to Live a Low-Carbon Life: The Individuals Guide to Stopping Climate Change"という本を書かれた方だそうです。
この計算が正しいかどうか、確認するためにはより詳細な研究が必要だと思います。しかし少なくとも指摘されているのは、「クルマに乗るのは悪いこと」などといった先入観を捨てて考えることの重要性ではないでしょうか。また、クルマのように「いかにもそれらしい悪玉」に目を奪われることなく、より大きな問題点(この場合は「食糧生産におけるエネルギー浪費」)を探すことの重要性、と言えるかもしれません。そう言えば最近、日本でも『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』という本がベストセラーになっていますよね。環境への負荷を下げるはずが逆に高めていた……などという話は、至るところに隠れているのでしょう。
いや、こういった話は、環境問題に限らないのかもしれませんね。時には「この常識は覆らないだろう」というような話でも、あえて問い直してみる姿勢が必要なのだと思います。
計算してみるとこうだ、が正しいとも限らない。最も「地球に優しい」のは、人類が絶滅すること、であるともいえるわけだし。歩かなくても食う者は食うわけだし。
個人的には、クルマが悪いというより、クルマ依存社会が問題。ヤク中がヤクなしでは生きていけないように、クルマなしでは生活していけないように人間を訓化してしまった社会というものの不気味さ。歩くという、人間として当然の機能を放棄して、これを進化だくらいに勘違いしているアホもいるかもしれないという問題。
ま、何にせよ、人類は救いがたい。
投稿情報: 天使 | 2007/08/06 15:23
天使さん、コメントありがとうございます。
> 計算してみるとこうだ、が正しいとも限らない。
仰る通り、本文中でも書きましたが、この説が正しいかどうかは分かりませんよね。しかし発想のポイント、つまり常識を疑ってみるという点には見習うところがあるのではないでしょうか。その結果「やはり常識は正しかった」となる場合もあるでしょうが。
> 個人的には、クルマが悪いというより、クルマ依存社会が問題。
なかなか難しいですよね。東京都内ならクルマなしでも生活できるでしょうが、郊外だとまさしくクルマが生活必需品ですし。まぁ、そんな都市構造を創り上げてしまった人間が悪いといえば悪いのですが……。
投稿情報: アキヒト | 2007/08/08 06:37
・・・上でもコメントされてますが車を使ってカロリー消費を押えてもその分食べる量を減らす人がどれだけいるか多いに疑問です。
その分ぶくぶく太るかダイエットで減らす人の方が多いと思うんですけど。
というか歩く人は健康の為って方が多いんじゃないかな。
投稿情報: mastacos | 2007/08/08 09:50
車道と歩道のメンテナンスにかかるCO2とか
車を作る時&壊す時に必要なエネルギー量とか
徒歩と車の比較ってもっともっと複雑だと思います・・・。
投稿情報: マチ | 2007/08/08 17:58
はじめまして。
これは(温室効果ガスの文脈でよく槍玉に挙げられる)牛さんと比較しているので、一番極端なケースかと思います。
元記事にも例のひとつとしてありますが、「鉄道は作るだけムダ、車の方がいい」というのもよく見ます。海外ではたくさん論文が出ていますし、日本でもそう主張されている方もいらっしゃいますが、もとの論文をよく見ると「鉄道をつくってもどうせ誰も乗らない、日本じゃあるまいし」とか書いてあったりします(笑)
投稿情報: mo | 2007/08/08 21:25
みなさま、コメントありがとうございます。
> mastacos さん
確かに人は「今日は買い物に行くから300kcal必要だな」という計算をしながら食べるわけではないですよね。そういった意味では、人が現在消費しているカロリーというのは別次元で考えなければいけないのかもしれません。
> マチさん
仰る通り、クルマ社会を維持するのに排出されるCO2も考えなければならないと思います。ただ「歩いているだけで環境破壊」派を擁護するわけではありませんが、牛肉を摂取するのにどのくらいCO2が排出されるかという計算でも、「牛肉を輸送するトラックが排出するCO2」や「小売店を建設・維持する際に排出されるCO2」を加えなければならなくなりますよね。そう考え出すと、もはや「○○する際にどちらがエコか」と切り出して考えるのは意味が無いのかもしれません。
> mo さん
はじめまして。そうですね、上でも書きましたが、結局「○○という行動をするのにどの方法が効率的か」を論じることはできないのかもしれませんね。人間の意識を変えることができるという前提であれば、公共交通機関を使うというのが正解になるのでしょうが、そんな計算をしても現実世界には何の意味も無いですし。ただ、これも繰り返しになってしまいますが、「クルマを使わなければCO2削減になるのだ」という固定概念を問い直すきっかけになるという点で、こうした極端な計算には意味があるのではと思います。
投稿情報: アキヒト | 2007/08/09 03:05