今朝の読売新聞を読んでたら、たまたまこんな記事を見つけました。読売新聞とNHKが高校生向けに主催したイベントで、2002年にノーベル化学賞を受賞された田中耕一さんが講演されたそうです。
私は、企業で質量分析装置を研究し、製品化し、販売する仕事をしてきた。大学や公的機関ではない「企業の研究者」にこだわる私の経験を話したい。
ということで、これまでの研究・製品化の経緯についてお話されています。そして「企業の研究者にこだわる理由」について、こう説明されたとのこと:
異なる分野を専門とする優秀な仲間がすぐ近くにいるのが、企業の強みだ。同じ分野の研究者が集まっている大学の研究室とは違う。異分野の人が意見を戦わせ学びあうことで、独創性が生まれた。
このような「横のチームワーク」で、分野を超えた新たな知識が生まれる。また、その研究成果を製品にしてお客さんに届けるには、「縦のチームワーク」も欠かせない。
一言で言えば「縦横のチームワーク」があることが企業内研究者の強みであると。この言葉には納得なのですが、田中さんは幸運な仕事環境にいらっしゃるのだなぁと思います。たいていの場合、
- 他部門との「横のつながり」が存在しない
- つながりがあっても「意見を戦わせる」などという状況は生まれない
- 「縦のつながり」もないので、当初のアイデア通りの製品化・マーケティングが実現しない
のような状況ばかりで、「企業にいること」が活かされないことが多いですよね。最近はむしろ、「企業の枠を超えたつながり」から何かが生まれることが注目されています。Wiki や SNS、ブログなどを通じ、こうしたアドホック的コラボレーションが活性化されているのはご存知の通り。その意味で、「企業の研究者」にこだわる理由は今後小さくなっていくのではないでしょうか。
……っとそれより、こういったイベントの内容がウェブに出てこないのはもったいないなぁ。一般人相手のイベントなら、ブログで詳細なレポートが出てくるのも期待できるんだけど。つくづく新聞というのは、コンテンツが最大に活かされないメディアだと思います。
< 追記 >
ちなみに田中さん曰く、縦と横のチームワークを実現するのに大切なことは
意見の違いを認め合うこと。攻撃するのではチームワークは作れない。ただ、仲良しになり過ぎると甘えが出る。そのさじ加減は自分で考えてほしい。
だそうです。アドホック的なチームでは、空中分解を恐れてなかなかケンカできないもの。その結果、表面的に仲良しを装って終わり/月並みな結果で終わり、ということになりがちですよね。建設的なケンカを促すために、新しいコラボレーションツールや手法を役立てる余地はないでしょうか。
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