かねてからウワサのあった、Facebook の広告ネットワーク"SocialAds"が発表になりました:
■ Facebook unveils ad platform -- and 100,000 new corporate pages (Computerworld)
"Social" な "Ads" ということで、文字通り SNS としての Facebook の特性を活かした広告システムになっています。記事によれば、システムは3つの部分から成り立っているとのこと:
- 企業は自身のプロフィールを登録、専用ページを構築できる(ページには画像やビデオなどどんなコンテンツでも掲載可能で、さらに予約機能などの専用アプリケーションも用意されるとのこと)。
- マーケティングのメッセージが、クチコミで広がるようサポートされる。
- ユーザーの行動に関するデータを収集できる。
1.はいわゆる企業ページの構築ということですね。既に約10万の企業ページが登場する予定ということで、その中にはコカコーラやソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント、ブロックバスター(米国のレンタルショップ)などの大手企業が含まれています。また3.はターゲティング広告を可能にするもので、こちらも以前から発想があったものですね。
一方2.はどういうことなんだろうと思っていたのですが、こんな記事もありました:
■ Facebook to Turn Users Into Endorsers (New York Times)
この記事によると、
- ユーザーは企業の登録したプロフィールに対して、「ファン」であることを宣言できる(友人登録のようなもの?)。
- その宣言や、企業/製品に関するユーザーの行動が、ニュースフィード上で配信される(例:「ボビーがトヨタ・プリウスのファンになりました」)。フィードは Facebook 内だけでなく、外部でも受信可能。
- ここまでは企業が無料で活用できる。有料なのは次の仕組み。
企業は自社/自社製品に関するニュースフィード配信内に、広告を掲載する権利を購入できる。例えば上記の例で言うと、「ボビーが……」というメッセージとボビーの写真の下に、プリウスのバナーが表示されるようなイメージ。
という行動が可能になるとのこと。これを理解するには「ニュースフィードとは何か」を知る必要があるでしょう。この点については、以下の TechCrunch の記事が参考になります:
■ Facebookが、データフィードをオープン化 (TechCrunch Japanese)
簡単に言えば、ニュースフィードとは友人の行動をフィードで配信してくれるシステム。これに広告を結びつけるというのが今回の仕組みで、つまり単純に広告を出すだけでなく、「ユーザーの友達の行動」に応じて広告が出せるようになるわけですね(友人行動連動型広告?)。Facebook 創業者の Mark Zuckerberg は、次のようにコメントしています。
“Nothing influences a person more than the recommendation of a trusted friend,” said Mr. Zuckerberg.
「信頼している友人からの推薦ほど、影響力のあるものはないでしょう。」
仰る通り。だからこそ「クチコミ」という現象を起こそうと企業が躍起になっているわけですが、このシステムではユーザーが能動的に「推薦しよう」という動きを取らなくてもクチコミが起こせるという点で、「全自動クチコミシステム」とでも呼びましょうか。
Facebook ユーザーがどこまでこのシステムを受け入れるのか、またどこまで効果が出るのかはフタを開けてみなければ分かりませんが、「友人の行動に応じて」「クチコミを自動化する」という発想は今後も行われていくのかな、と感じました。例えばケータイで写真を撮り、友人に送ると(ex. 昼食の写真と一緒に「今日はこんなお昼食べてまーす」というメッセージを送る)、写真の中に写っている商品を自動認識して広告を出す(ex. コンビニ弁当ならコンビニの広告、人間が写っていたら彼/彼女が着ている服やアクセサリーの広告など)、なんてシステムができるかもしれません。そんな広告を出すことを許容したユーザーには、表示された広告に応じて基本料金が安くなる、みたいなインセンティブを設けてもいいし。
いずれにしても、これでますます次世代の広告システム争いが激化するのでしょうね。
< 追記 >
ITmedia さんで、日本語による詳細記事が出ていました。以下、リンクです:
■ Facebook、新しい広告システム「Facebook Ads」立ち上げ (ITmedia News)
■ Facebookと企業のサイトを結ぶ「Facebook Beacon」登場 (ITmedia News)
企業やブランドはまず、ほかのユーザー同様、写真や音楽、動画などを掲載した自分のページを作成する。このページでは、チケットの購入やプレビューの投稿、カスタムTシャツの作成など、Facebook用に開発されたアプリケーションも使用できる。企業は、ユーザー同士がコミュニケーションするのと同じように、このページを通じてほかのユーザーとコミュニケーションを取ることができる。
ここが、上記の3分類の1.に対応する部分で、
たとえば、ユーザーが、あるブランドページでレビューを投稿したり、商品を購入したり、そのブランドの「ファン」になるなどのアクティビティを行うと、「News Feed」や「Mini Feed」を通じてネットワーク内の友人たちにも共有される仕組み。企業は、送信される情報に広告を組み合わせることも可能。
ここが2.に対応する部分。そして3.が
自社のページでのアクティビティやファン層、トレンドなどについての情報は、Facebook Insightsで提供され、企業が提供する情報や広告などの改善に役立てることができる。
ということですね。また「Facebook Beacon」に関する記事によれば、
Facebook Beaconを採用しているWebサイトでFacebookユーザーが商品を売買したり、ゲームで高得点を取ったりすると、Facebook内の友人にそのアクティビティ情報が配信されるというもの。配信するアクティビティの種類はWebサイト側が事前に決めておき、サイトを訪問したFacebookユーザーに対しては、アクティビティ情報をFacebookに配信するかどうかを問うメッセージが表示されるようになっている。配信された情報は、 Facebookの「News Feeds」や「Mini Feed」に表示される。
ということですから、「ユーザーがある企業/製品に対して行った行動」というのは Facebook 内に留まらないわけですね。それが RSS でフィード配信されるわけですから……まさしく「友人の行動記録」という形を取りつつ、企業が広告を出せる仕組み。興味をそそられる企業は多いのではないでしょうか。
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