ここ数日、改めてブログとマーケティングの関係について考えさせられることがありました。ちょうどタイムリーなことに、New York Times でこんな記事があったので、少し考えをまとめておきたいと思います:
■ Blogging’s a Low-Cost, High Return Marketing Tool (New York Times)
「『ブログをすること』はローコスト、ハイリターンなマーケティングツールだ」というタイトルの記事。「ブログ(blog/weblog)」ではなく、あえて「ブログすること(blogging)」という言葉が使われていることには意味があるように感じたのですが、その理由は後ほど。
冒頭に
TO its true believers at small businesses, it is a low-cost, high-return tool that can handle marketing and public relations, raise the company profile and build the brand.
That tool is blogging, though small businesses with blogs are still a distinct minority. A recent American Express survey found that only 5 percent of businesses with fewer than 100 employees have blogs.
それを信じる小企業にとって、それはローコストで、ハイリターンをもたらすツールだ。それはマーケティングと広報に活用することができ、知名度を高めてブランドを構築することができる。
そのツールとは「ブログをすること」。ブログを書く小企業は、まだマイノリティな存在だが。最近アメリカン・エキスプレスが行った調査によると、従業員が100名未満の企業のうち、5%しかブログを開設していない。
という一文があることから分かるように、この記事では主に、中小企業でのブログ活用成功例が紹介されています。チョコレート菓子の製造業者、SNS運営会社、コンサルタントなどなど様々な事例が紹介されているのですが、その共通点は「ただの宣伝ではなく、読者が読みたくなるようなコンテンツを提供していること」。専門知識を提供したり、業界ニュースを書いたり、自社製品の裏側を解説したり……当たり前のことですが、宣伝だけのブログには誰も振り向かないわけですね。
いや、CMをスキップするのが当たり前の時代、「宣伝だけ」に振り向かないのはブログに限った話ではないでしょう。「セミナーに出席したら、実は講演者が一方的に自社製品を宣伝するだけの場だった」「専門書を買ったら、実は著者の会社のツール/サービスを宣伝することが目的だった」などという体験に辟易したことがある方も多いと思います。あらゆる面で、企業がこれまでとは違う形で接することを人々は望んでいるのではないでしょうか。
その意味で、「ブログをマーケティング・ツールとして使えるか」という問いかけはナンセンスでしょう。「『(ブログを使うか、はたまたSNSやミニブログなど他のツールを使うかどうかは問わず)ブログ的なコミュニケーションを行うこと』をどのようにマーケティングに融合するか」が正しい問題設定だと思います。勝手な思いこみかもしれませんが、New York Times の記事に"blogging"という単語が使われていたのは、そんな意味もあってのことではないかなと感じています。
しかし、「ブログ的なコミュニケーションを行うこと」を確立する方がずっと難しいわけですよね。
- 新しいスタイルのコミュニケーションを担える人物を、社内で探す・教育することができるか
- 彼らが長い時間をかけて読者とコミュニケーションすることを、正しく評価し、行動に見合う報酬を用意できるか
- 「あいつは何もしていない」などといった社内での誤解をどう解いていくか
- リスクをコントロールし、危機に対処する仕組みをつくれるか
- 「語る」「行動する」ことのプライオリティを、「黙る」「無視する」よりも上に置くような文化をつくれるか
……
ちょっと考えただけでも、様々な問題が挙げられます。ブログはそれこそ3日もあれば始められてしまいますが、人々の意識や社内文化、制度を変えるのは、場合によっては1年や2年では済まないでしょう。その点では、規模の小さい企業の方が「ブログ」に適しているのかもしれません(中小企業でも旧来の価値観でガチガチになっているところもあるし、逆に大企業でも行動が素早いところはありますが)。
今年、早速 Twitter をマーケティングに活用する企業が現れたように、来年も新しいコミュニケーションツールが登場->企業が活用、という動きは続いていくことと思います。そのたびに「○○はマーケティングに使えるか?」といった議論が繰り返されることでしょう。そんな不毛な議論に時間を費やすことよりも、人々が自社とどのような関係を結びたいと考えているかをまず考え、それを達成するような社内環境を整えた上で、既存・新規のツールをどう活かせるかを考える――それが正しい道筋ではないかな、と思います。
正しく評価することはとても難しそうですね
固定のユーザーをつかむには時間と多大な労力がいるはずです
必ず効果が出るとも限りませんし。。。
投稿情報: | 2007/12/30 03:39