昨夜、AMNのイベント「仮想空間とブログ」に参加してきました。これまた大胆なネーミングですが、内容は株式会社スプリュームさんが運営する3次元仮想空間「splume」についての解説をいただき、それをベースに「仮想空間&仮想空間ビジネス(?)は今後どうなるか」について参加者でディスカッションする、というもの。参加されたブロガーの中にはかなり詳しい知識をお持ちの方も多く、予想以上に中身の濃い内容でした。
正直に言ってしまいますが、解説を受けるまで splume のことを「どうせ Second Life の二番煎じサービスなんだろう」と思い込んでいました。しかし実際はというと、「3次元仮想空間」という表層が一緒なだけで、その裏にある思想や背景はまったく異なるもの。変な話、「Second Life 空騒ぎ」とでも言うべき状況が起きていなかったら、もっと違うかたちで評価されていた技術・サービスだと思います(これについては、スプリュームさんご自身にも「Second Life に便乗して知名度を上げようという邪心があった」ことを認めていらっしゃいましたが)。
技術的な違いについては詳しい方に譲るとして(というより正確なことは分からないので手を出さないようにして)、最大の違いは「splume の仮想世界はユーザーも自由に構築可能」という点でしょう。Second Life も新しい「島」を作ることができますが、彼らからサーバという名の「土地」を買って、彼らの世界の中で開発しなければなりません。しかし splume の場合、「世界」のデータがどのサーバ上にあるかは自由。例えば僕が「世界」を構築して適当なサーバ上にファイルを置いておけば、後は splume 側でアバターの動作をコントロールしてくれるので、僕の作った仮想空間の中で移動したり、チャットしたりといったことが可能になります。イベントでは実際に「世界」の構築を体験させてもらったのですが、まさしく個人ホームページを立ち上げる感覚で仮想世界を作ることができました。(ちなみに出来上がったファイルを geocities にアップしたのですが、ずっと以前に自分のホームページを geocities に置いていたことがあったので、「なんだか懐かしい体験だなぁ」と感じた次第。)
さらに「世界」と「世界」の間にはリンクを貼ることが可能で、リンクされた世界の間をシームレスに移動していくことができます(実際、splume の専用ブラウザを通じて仮想世界を歩いてみると、URL が次々と変わっていくことが確認できますよ)。まさにウェブページのハイパーリンクをたどる感覚で、様々なファイル=世界を移動して行けるわけですね。技術的には大きく異なりますが、「2次元のウェブページが3次元になった」というのが一番感覚的につかみやすい表現ではないか、と思います。
現時点でも既に一般ユーザー作の仮想世界(一例)がいくつかオープンしていて、イベントでも指摘があったのですが、ちょうど「1995年のWEB世界」といったところ。現在はまだまだ「HTML直打ち」的な作業ができる人でないと世界の構築は難しいのですが、仮に splume の方式がスタンダードとなれば、ホームページ作成ツールやブログ等に準ずる存在が現れ、ユーザー自作の仮想世界が増殖していくことでしょう。「そこでどんなビジネスモデルが取れるのか?」という問題には答えを出さなければいけませんが、スプリュームさんの提唱する「オープンな形での仮想空間」という発想には非常に魅力を感じました。
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仮に、誰でも仮想空間を自由に構築できる状況が訪れたらどうなるのか。「一般人でそんなものを作りたがる奴はいないだろう」という予測も確かに可能ですが、個人的には初めて「仮想空間を作る」という体験をしてみて、様々な使い道を考え出す人々が現れるのではないかと感じました。
いま「仮想世界」というと、どうしても Second Life 的な世界を想像してしまうでしょう。つまり「仮想世界」という言葉の「世界」というサイドに偏った考え方=現実世界に近い建物や、あるいは現実に存在する都市(東京や京都など)をそっくり移植して、現実世界に近い行動をアバターに行わせる、という発想ですね。しかし「仮想」というサイドからも考えてみれば、別に現実世界を模倣する必要はないわけです。実際に昨夜のイベントでは、「世界」にこだわらない仮想世界の使い道・アイデアをいろいろと見せていただきました(どこまでが公開可能な情報か把握してこなかったので、ここで挙げることはあえて避けておきます)。単に用意された空間を歩き回るだけ、という意味での参加者ではなく、自由なアイデアで世界を構築するという意味での参加者が増えれば、思いもよらない使われ方が出てくるのではないでしょうか。ちょうど静的なページしかなかったWEBにWEB2.0という状況が生まれ、無数の人々が使い方をするようになったように。
その意味で、スプリュームさんにはごくごく簡単に仮想空間が作れるツール/サービス(イメージ的にはまさにブログですね)を開発することと、世界を構築して楽しもうという人々がつながるコミュニティの設置、さらに可能な限り技術仕様を公開することに力を入れて欲しいなと感じています。MyMiniCity という単純な仕組みですらあれほどの人気を呼んだのですから、用意されたテンプレートにちょっとした加工ができるだけのツールでも、「世界」を作りたいという人は大勢出てくるように思います。そして技術仕様が公開されていれば、スプリュームさんが手を出さないようなサービス、例えばブログでいうところのウィジェットを提供するような人々や企業が出てくるのではないでしょうか。そうなれば仮想世界は勝手に増殖していき、収益を手にするための選択肢も増える……というのは楽観的に過ぎるかもしれませんが。
ともあれ、良くも悪くも Second Life によって植え付けられた「仮想世界への先入観」「仮想世界のイメージ」というものをリセットする良い機会になりました。どんな分野でもそうですが、最もスポットライトを浴びている存在の傍で、影に隠れている存在にも注意を払わなければいけませんね。
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