日本だとメジャー新聞系のサイトには「トホホ感」満載なわけですが、言うまでもなく海の向こうでは状況は違います。生き残りをかけて、という事情があるにせよ、ニュースサイトでも様々な先進的取り組みが行われているわけですが、今回ご紹介するのもなかなかのもの。New York Times による「民主党予備選ディベート分析」です:
■ Democratic Debate: Analyzing the Details (New York Times)
2月21日にテキサス州オースティンで行われた、米民主党の大統領候補者(バラク・オバマとヒラリー・クリントン)によるディベートの分析。メインは88分間にもおよぶビデオなのですが、単に映像が見れるだけに終わりません。ご覧のように、画面右側には発言の内容がテキスト化されていて、さらにセクション毎にジャンプすることも可能になっています:
これなら例えば「僕は経済問題に感心があるから、それに関する議論からチェックしたいなぁ」という場合には、"The Economy"をクリックすればOK(ちなみにビデオの方もそれに連動してジャンプします)。さらに面白いことに、発言内容の検索もできるようになっています:
上のスクリーンショットは"Iraq"というキーワードで検索した結果です。中央にある帯は発言の推移を示していて、黒い線が検索したキーワード。具体的な発言内容を知りたければ、上のスクリーンショットのようにカーソルを合わせることで、右側に該当部分のテキストが現れます。またご覧のように、両候補毎に「キーワードが何回話されたか」「キーワードを含むコメントが何分間話されたか」が集計されています。ちなみに"Iraq"については、ヒラリー候補が1回/1分46秒間、オバマ候補が11回/12分間ということで、オバマ候補の方がこの問題については踏み込んでいる(あるいはヒラリー候補が避けている)ことが分かりますね。
ニュースを客観的に伝えることは不可能だ、と言われます。確かに上記のような状況を「オバマ候補はイラク問題について熱く語った」と表現するのと、「ヒラリー候補はイラク問題で失点することを恐れ、多くを語らなかった」と表現するのとでは、受け手の印象は大きく異なってしまうでしょう。しかし今回のように「発言内容全体のビデオ」「全体のテキスト」が掲載され、さらにキーワードでの検索が可能になっていれば、「実際はどうだったのか?」を読者一人一人が把握できるようになります。ある意味、このサービスは「報道」に必然的に付随する短所を補うもの、と考えられるかもしれません。
極端な話、将来のニュースサイトには「(何の編集・校正もされていない)一次情報」と「(従来の意味での)記事」という2つのコンテンツが並列で置かれるのが普通になる可能性もあるのかなぁ、と感じてしまいました。それが当たっているにせよ外れているにせよ、様々な期待を抱かせるっていうのは偉いことだよなぁ、という感じですね。日本の新聞社系サイトに、こんなワクワク感を求めるのは酷でしょうか……。
ものすごいですね。素晴らしいニュースでした。
ありがとうございます。
アメリカのメディアが、メディアの存在意義にとことんこだわろうとした結果でしょうか。日本はメディアだけの問題ではなく、詰まるところムラ的な思考から抜けきれない所に原因があると思います。
結果、変化を恐れるところからスタートしてしまうから、今の自分の
立場とか仕事に固執しがちです。
メディアをどうするかよりも、自分のお給料をどう確保するか。
もしくは自分のプライドをどう保持し続けるか。それにつきると思います。
当然今の日本のメディアはじめ、オールドエコノミーにその合理性を求めるのは酷だと思います。
知人にはテレビ・新聞関係もいますが、彼らを見ていても
まずムリだと感じます。 理由は省きますが平成生まれが社会に
出てきたときにはまた大きな変化が生まれると思います。
ゆえに私は将来の日本にものすごく期待しています。
まだ変化が一部の人にしか見えていないのでなかなかイノベーションが進みませんが、それでも一部の分野では新しい思想や試みも
生まれてきています。
ちなみにかの有名な三浦展さんの著書を読むと2015年
(あとわずか7年)になると今起きている小さな変化が世に浸透
することになるようです。それまでは嫌ですが犯罪も、特に中高年
の犯罪が増えてしまうかも知れません。
ただ中高年とて頭と心を柔らかくし自らに変革を促すことが出来れば
その後の人生もハッピーなものになると思います。
そんなことまで考えてしまうニュースでした。
投稿情報: みうら あんじん | 2008/02/24 14:05
みうらさん、コメントありがとうございます。
> 知人にはテレビ・新聞関係もいますが、彼らを見ていても
> まずムリだと感じます。 理由は省きますが平成生まれが社会に
> 出てきたときにはまた大きな変化が生まれると思います。
仰る通り、新しい世代が主導権を握るようにならないと、変化を期待するのは難しいかもしれませんね。問題はそれまで旧メディアが持続できるか、という点ですが・・・
ちなみに New York Times の例は面白くて、最初からウェブを担う部門を別会社とすることで、彼らの独立性・先進性を守ったそうです。日本もこれくらいドラスティックにアプローチしないと、お茶を濁すようなWEBサイトを作って終わりになってしまうのでしょうね。
投稿情報: アキヒト | 2008/02/26 18:25