インスタントメッセージ(以下IM)というと「友達との連絡に使う遊びのソフト」というイメージが強い方がほとんどだと思いますが、社内コミュニケーションのツールとして活用する企業も増えています。では実際にどんな効果があるの、ということで、こんな研究結果が出ています:
■ Instant Messaging Proves Useful In Reducing Workplace Interruption (ScienceDaily)
直訳すれば「IMが仕事の中断を防ぐのに効果的であると証明された」というタイトルの記事。これで言い尽くされているのですが、どんな研究なのか簡単にまとめてみると:
- Ohio State University と University of California, Irvine の研究者らによる調査。少なくとも週に30時間以上オフィスで働き、1日に5時間以上PCを使う従業員912名を対象に行われた。
- 従来IMは仕事をジャマするものと考えられていた。しかし調査の結果、IMは電話やメール、口頭での会話などを置き換える働きがあり、総合的に見て仕事の中断率は減っていることが分かった。
- しかもIMを通じてコンピュータ上で交わされる会話は、他の方法に比べ簡便な傾向にある。
- さらにIM利用者に尋ねたところ、IM非利用者よりも、仕事が中断される頻度が低いと回答した。
とのこと。確かにIMって割り込みが増えるんじゃない?というイメージがありますが、実際に使っている人々からは逆の回答が得られたわけですね。その理由として、こんな点が挙げられています:
Instead of dropping in unexpectedly, many are using the technology to check in with coworkers to see when they are available. Many also use the technology to get quick answers to general questions or to inquire about current work tasks instead of engaging in longer face-to-face conversations.
“We find that employees are quite strategic in their use of instant messaging. They are using it to check in with their colleagues to find out if they’re busy before interrupting them in a more intrusive way,” Garrett said.
不意に誰かのもとに訪れる(そして何かを尋ねる)代わりに、多くの人々はIMを使って、同僚が邪魔しても良い時間にいるかどうかを確認している。また手短な回答を得るために、口頭で長い会話を行うのではなくIMを使う、という場合も多い。
「従業員は極めて戦略的にIMを活用していることが分かった。より相手を邪魔する方法を使う前に、彼らは同僚が忙しいかどうかをIMで確認している」と Garrett 助教授(この研究を行った人物の一人)は述べた。
つまりIMにはステータス(あるユーザーが空き時間があるのか、忙しいのか、それとも退席しているのか等を示す。ユーザー自身が宣言する)を確認する機能があるため、電話のように相手の状況に構わず「あの仕事の件なんだけどさぁ……」と割り込んでしまうことが少ない、というわけですね。更に口頭での会話と異なり、聞きたいことだけを聞いて、答える方も答えだけをサッと入力して終わり、というコミュニケーションができると。
もちろん相手の状況を考えて、かつ手短なやり取りができるかどうかは、ユーザー自身の性格やスキルにも寄るところが大きいでしょう。特にIMに慣れていない世代(30代後半以上?)には、IMとはどんなものか、どういう使い方をしなければいけないか(ステータスをこまめに変えることを習慣づけるなど。かく言う自分も某IMをずっと「Busy」にしてしまうことがありますが)を教育する必要があると思います。しかしそれほど飲み込むのが難しい技術でもないですし、IMに慣れた世代が会社で中心を占めるようになれば、「社内コミュニケーションの中心はメールではなくIM」という企業も増えるのではないでしょうか。
と言っても、まだまだ日本の会社では「IM?チャット?Twitter?そんな遊びのツールは必要ない!」という人が経営層に多いでしょうから、なかなか導入は進まないと思いますが。しかし「あの会社が入れたのならウチも」と考える人が多いのも日本の特徴ですから、どっかの大企業で成功例が出れば右へ習えになるかもね。
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