ロイターでちょっと面白い記事が。米国の研究者らの調査によると、バイリンガルの人は使う言語によって無意識のうちに性格を変えている、という話です:
■ バイリンガル、話す言語により性格変えている可能性=米研究 (ロイター)
例によってロイターは省略版の翻訳記事しか載せてくれないので、元記事を読むともっと詳しいことが分かります:
■ Switching languages can also switch personality: study (Reuters)
英語版の記事を簡単にまとめてみると、
- 調査はヒスパニック系女性グループを対象に実施。全員バイリンガルだが、文化的背景には差があった。
- 同じバイリンガルの人でも、2つの文化に適応する人々(この場合は米英的文化とラテン文化)の方が、大きな自己認識の変化や"frame-shifting"(心理的枠組みの変化)が起きる傾向があった。
- その変化のきっかけとなるのが言語である可能性がある。被験者の女性たちは英語を話すときよりもスペイン語で話すときに、自分がより積極的に自己主張すると答えた。
さらにこんな実験結果が紹介されています:
In one of the studies, a group of bilingual U.S. Hispanic women viewed advertisements that featured women in different scenarios. The participants saw the ads in one language - English or Spanish - and then, six months later, they viewed the same ads in the other language.
Their perceptions of themselves and of the women in the ads shifted depending on the language.
"One respondent, for example, saw an ad's main character as a risk-taking, independent woman in the Spanish version of the ad, but as a hopeless, lonely, confused woman in the English version," said the researchers.
調査の1つで、米国のヒスパニック系バイリンガル女性達は、いくつかの広告を見せられた。被験者達は英語、もしくはスペイン語で書かれた広告を見せられ、その6ヶ月後、逆の言語で書かれた同じ広告を見せられた。
被験者達の自己認識と、広告の中に登場する女性をどう認識するかは、使われている言語によって変化した。
「例えばある被験者は、スペイン語の広告を見た際、メインキャラクターである女性を『リスクを積極的に取り、独立している』と感じたが、英語版を見た際には『希望を失っており、孤独で、混乱している』と感じた」と研究者達は述べた。
というわけで、日本語版の記事では「話す言語により」と書かれていますが、「何かを考える際にどの言語を使ったか」でも性格変化が生じるようです。また言語が性格変化の根本原因ではなく、それは変化を生じさせるきっかけに過ぎないと(仮に言語がカギであれば、1つの文化にしか親しんでいないバイリンガル女性にも同様の変化が生じたはず)。複数の文化に慣れ親しんでいることによって、二重人格ではないですが、それぞれの文化に応じた人格が形成される=言語がきっかけになって人格がシフトする、というイメージでしょうか。
僕はバイリンガルなどというにはほど遠い人間なのですが、確かに英語を話す時は、「英語でははっきり主張しないと」という意識で断定的な口調になるように感じます。日本語だと「~と思います」と言うところを、英語では"I think..."とはならずに"It must be..."と言ってしまうとか。逆にバイリンガルにはほど遠い人間でも、「この言語を使う人々はこんな傾向がある」というイメージが頭の中にあれば、性格変化が生じやすいのかもしれません。
なんとなくわかります。僕も英語でしゃべるときの方が、理路整然と話せる気がします。定量化する方法があればもっと面白いですけどね。
投稿情報: tksh | 2008/06/27 09:57