ブログと新聞のどちらを信頼するの?と聞かれたら、普通の人は「新聞」と答えるのでしょうが、そもそもこの質問自体が少しずれてるんじゃないかと最近考えています。
こないだシロクマ日報の方でも書いたのですが、某社が出版してる白書の帯に「コンテンツ消費の現状が分かる」という言葉が書かれていました。で、その中にテレビの視聴時間・新聞を読む時間などと並んで、ネットの利用時間も掲載されていたのですが、「“ネット利用時間=コンテンツ消費時間”と置いてしまうのは乱暴じゃない?最近のネットって見るだけじゃなくて参加する場所でしょ?」と感じたりしたわけです。そもそも今のネットって新聞やテレビと並列に置ける存在じゃないでしょ、と。確かに僕が初めてネットに触った頃(1995年でした)なんかは、ネットといえども近寄りがたい存在で、政府機関や大企業がわざわざ載せていただいている情報をありがたく頂戴する、といった感じでした。しかしその当時から、大学の研究室でHTML手打ちのホームページ作ってみたりと、ネットは消費するだけでなく参加する場所だという印象を受けたことを覚えています。その後2.0と呼ばれる時代になって、参加のコストが激減したことはご存知の通り。参加のスタイルにもいろいろありますが、明らかに「“読者の声”欄に投書する」ぐらいしか参加する方法のない新聞とは異なった存在でしょう。
で、冒頭の質問に戻って。新聞の記事を読むのも、ブログのエントリを読むのも、傍目には同じ行動に映ります。しかし得た情報に対して「何かおかしいな」という感情を抱いた場合はどうなるでしょうか?新聞(※ここでは紙媒体のものを想定しています)の場合、セカンドオピニオンというか、同じテーマを扱っている別のソースを探すのには時間がかかります。会社にいれば2~3紙は購読しているかもしれませんが、そうでなければ駅に行って他の新聞を買ったり、図書館に行って調べたりしなければいけません。そして元の記事がおかしいと決定した場合でも、それを新聞社に伝え、訂正してもらうのには労力がかかります。そもそも新聞社がまともに取り合ってくれるのかも分かりませんし、仮に訂正されるとしても翌日の新聞に小さな訂正記事が載るだけ。この一連の作業を、わざわざ手間暇かけて行う人は少ないのではないでしょうか。
一方ブログの場合は、重要なテーマの場合には多くの人々がエントリを書いていますし、ネット上にある他の情報をすぐに検索することができます。別に調べなくても(ってもちろんキチンと調べてからの方が良いのですが)「これっておかしくないですか?」とコメントすることもできるし、ソーシャルブックマークやソーシャルニュースなどのコミュニティに持ち込んで議論することも可能。仮に相手が取り合おうとしない場合には――これはあまり推奨されることではありませんが――他のブロガーなどと連動して、反対の論陣を組んで対抗することもできます。要は、「会社の会長の念頭スピーチを聴かされている、しかもテレビ中継で」というのが新聞で、「会社の同僚や昔からの友人たちと議論している、しかも飲み屋で」というのがブログ、といったイメージでしょうか。
さらに言えば、ブログの「訂正機能」は自らが使う必要もありません。紙の上にある新聞記事と違い、ブログのエントリはネット上にパーマリンクという形で置かれ、数多くの人々に参照されます。仮におかしな内容であれば、誰かがそれを指摘したり、反対意見を表明している可能性が高いでしょう。もちろん元のエントリが書かれたばかりだったり、あまりにマイナーなブログで誰にも発見されていないという場合もあるでしょうが、他人によっても訂正される可能性があるという点は重要だと思います。
このように、何かあれば自分も含めた他のユーザー達によって、いつでも訂正や反対が可能だという期待。そしてそういったツッコミが入ることをブログの書き手が理解しているため、最初から他人を騙すようなエントリが書かれる可能性は低いだろうという期待が、ブログに信頼感を与える源泉の1つになっているのではないかな、と思います。その意味で、「大手新聞社」というブランドが信頼感の源泉となっている新聞と比較して、「どちらを信頼する?」という質問をするのはちょっと乱暴なのかなと考えた次第です。もちろんいわゆる「日記ブログ」的な存在に対しては上記のようなことは思いませんし、実名ブログの場合には「○○という職業で、××という組織に属しているのか。それならきっと正しいことを書いているだろう」といった具合に新聞に対するのと同種の信頼感を感じる場合もあるのですが。
――実は昨日、日経新聞の方々とお会いして「改めてブログって何だろう?今後どうなるんだろう?新聞社との関係は?」といったテーマでディスカッションさせていただきました。結果は何らかの形でまとめられるそうなので、このテーマについてはまたいずれ書きたいと思います。
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