朝日新聞が昨年10月からスタートさせた新紙面「GLOBE」。CNETにも裏側紹介が掲載されていましたが、予想に反して(ごめんなさい)なかなか面白い特集を続けています。先日の世界遺産特集も興味深い内容だったのですが、最新号の「東京特派員」も注目。なにしろこんな箇所が登場するのですから:
FCCJ第1副会長のティム・ケリーは「権力者に対する外国人記者の質問は、日本人記者と違う」という。「私たちには絶対に聞かなければいけない義務的質問もないし、聞けないタブーもない。読者は周辺の話に興味を示さないので、まっすぐ中心を突く。それが時に、日本メディアに先んじた報道につながることがある」
(本編01:Part1 より)
「外国特派員の役割はある」 ティム・ケリーFCCJ第1副会長
(中略)
――外国特派員から批判される記者クラブの排他性は改善されましたか。
「良くなっている。日銀や東京株式市場、外務省や財務省などで記者クラブへのアクセスは格段に良くなった。ただ、首相官邸や検察庁はまだ難しい。記者クラブには効率よく取材できる利点はあるが、それでも日本人記者は取材対象と近すぎるように思う。署名記事が少なく、情報源をあいまいにするなど、スタイルの違いもある」
――外国特派員は、日本メディアと異なる役割があると?
「そうだと思う。外国特派員は日本メディアが書かないことを書く。また、外国で報道されることで、日本人記者が『箝口令が解けた』とばかりに安心して書く場合すらある。(もうろう会見の)中川昭一前財務相のケースも、現場が海外だったので報道されたのでは。欧米の記者なら『風邪薬を飲んだ』と言われれば、『薬の名前は。どれだけの量を飲んだのか』と食い下がり、医師に『あの状況でこの量の薬を飲むと、酒を飲んでいなくてもあんな状態になるか』と尋ね、証言を崩していく。徹底して真実を追求するのが記者の立場だが、日本では政治家の言い訳を簡単に許す傾向があるように思う」
(本編01:Part3 より)
日本人記者(正確に言えば日本のマスメディアに所属する記者)が既得権益の上にあぐらをかいているために、時として外国人記者の方が優れた記事を書くことについては、上杉隆さんの『ジャーナリズム崩壊』などでも指摘されています(上杉さんの本の中では、皇室問題が例に挙げられていました)。しかし「朝日新聞」という新聞本体でないとはいえ、それにごく近い媒体でこのような文章が載るのは珍しいのではないでしょうか。「こんなのまだまだ、それに一時的なものかもしれないじゃないか」と批判を続けることもできますが、自社や自分の業界を批判するような意見をなかなか表明できるものではありません(僕だって某社が「旧」社長より年上の「新」社長をトップに据える問題についてはコメントするのを控えています)。今回の特集については、素直に評価しても良いと思います。
しかし「東京特派員」特集で挙げられている事例、なかなか面白そうですね。インドネシアの国営アンタラ通信が追う、インドネシア看護師問題。ブラジル最大の民放テレビ局グロボが追う、ブラジル人労働者失業問題。彼らの書いた記事・作成した番組を日本語で読んで・観てみたいと感じます。そういえば雑誌『クーリエ・ジャポン』では、外国の新聞・雑誌に掲載された日本レポート記事が毎号掲載されているのですが、読んでみると結構意外な発見があったりします。いっそのこと日本のマスメディアは海外のマスメディアに乗っ取られてしまえば……なんて過激なことを言うのは法律上・倫理上難しいので止めておきますが、海外のように重厚な記事を書く新聞が1社ぐらい日本にあってもいいのにね。ということで GLOBE の今後にも期待。
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あれ、グローブの編集長って同級生の木村君なんだ。高校卒業してからたぶん一度もあっていないのだが。最近ほとんど新聞読みませんからねえ。
投稿情報: 藤野幸嗣 | 2009/04/07 08:39