グローバル化がもたらした地域間格差の拡大は、政治に対する潜在的な不安や反発をも高める。最下層へ転がり落ちていく人々の恐怖心、不安、怒り、恨みは世界中に渦巻いている。彼らは幾度となく、自国の前途ある人々が国を去っていく(もしくは自発的に出ていく)のを見届けている。その結果、狂信的な国家主義が各地では現れては消えるということを繰り返している。
……いま読んでいる『クリエイティブ都市論』という本の中に上記の指摘があり、そういえば最近「(先行き暗そうな)日本を捨てるか、残るか」という議論があったなぁと思い出しました。いや、ちょうど旅行に行っている間だったので、詳しい議論の流れはよく知らないのですが。(つ『読んでいない本について堂々と語る方法』)
実力のある人に「日本はダメだ!僕/私は出て行く!」と言われると、やっぱり悲しくなったり、反感を感じてしまったりするものでしょう。やむを得ない理由で住む場所を選べない、という場合もあるわけだし。「国を去る」という行為は、それほどまでに大きいものだと思います。
しかし既に指摘されている方もいらっしゃいますが、「日本か海外か」という問題設定はどこまで有効なのでしょうか?日本国内でも「東京一極集中」という話は以前からあるわけで、同じ日本でも東京23区内に住んでいる人と、北海道の利尻島に住んでいる人とでは状況が大きく異なるでしょう(別に利尻島を批判しているわけではありませんので、悪しからず)。また上掲の『クリエイティブ都市論』では、国家以上に大都市(同書では「メガ地域」という名前で呼ばれています)が世界経済を左右する要素になっていることが指摘され、東京を中心とした「広域東京圏」は世界経済の中でも有数のメガ地域であると述べられています:
この地図を見れば、20から30ほどのメガ地域の周囲で、世界経済が動いていることが分かるだろう。詳しくは次章で取り上げるが、2兆ドル以上の経済生産を上げるメガ地域は2つ存在した。それは、「広域東京圏」(2兆5000億ドル)と、ボストンからニューヨーク、ワシントンDCに達する巨大なメガ地域「ボス=ワッシュ」(2兆2000億ドル)だ。これら2つのメガ地域よりGDPが上位に来るのは、アメリカと日本だけだ。
ここに出てくる数値の単位は「LRP」というこの本独自の単位なので、数値に関してはあまり深入りしません。とにかく日本においても、東京とその周辺は特に活発な経済活動が行われている地域であると。当然ながらこれは日本だけの状況ではなく、欧米諸国でも「メガ地域」とそれ以外の地域で格差が存在しているわけですね。
そんなわけで、「日本か海外か」という対立軸よりも、「どの大都市に行くか、あるいは田舎に留まる道を選ぶか」という問題設定の方が現実に即しているのかな、と感じた次第です。さらに言うと以下のような意見もあるので、実は「大都市に住むか、田舎に住むか」というのが突き詰めた話なのかも:
同一国家内の都市間格差が広がりつつある半面、メガ地域同士の特質はますます接近している。物理的な距離や歴史的な関係の如何にかかわらず、2つのメガ地域の間に経済的な共通点が多ければ多いほど、社会的モラルや文化的センス、政治的な傾向などさえも似てくるのである。これは一部で一体的にNyLonと呼ばれている、ニューヨークとロンドンの例に限られるものではない。上海とケンタッキー州ルイビルを比べれば、ニューヨークとの共通点は上海のほうが多いのである。
僕はこれまで東京・埼玉・茨城・ボストン・ニューヨークに住んだことがあるのですが、大都市間で雰囲気が似てくる/逆に都市部と地方では同国内でも異なる文化圏になる、という議論には納得できる部分があります。もちろん東京とニューヨーク、あるいはシリコンバレーがまったく一緒になるということは無いにせよ、「大都市か田舎か」という対立軸で考えてみることも必要では、と感じた次第でした。
なるほど。勉強になります。
投稿情報: なかにしゆうすけ | 2009/05/08 20:15
>この地図を見れば、20から30ほどのメガ地域の周囲で、世界経済が動いていることが分かるだろう。
この地図はどこにあるのでしょうか?
個人的には香港・マカオ・シンセン・広州一帯珠江デルタの成長力はここ10年一番かと
投稿情報: shinkai★ | 2009/05/09 14:59