今日、新聞等々で見かけたネタをずらずらと。
エコカーでCO2削減と言えば……
■ 経産省、温室ガス半減へ-CO2ゼロの石炭火力 (日刊工業新聞)
経済産業省は石炭を効率的に活用する長期構想をまとめた。石炭ガス化複合発電(IGCC)や石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)と二酸化炭素(CO2)の回収・貯留技術(CCS)を組み合わせたCO2排出量ゼロの発電システムを2020年ころまでに開発、実証する。国内で商用化し20年代には世界での導入を目指す。
火力発電といえば石油系燃料を燃やすもの、と思っていたのですが、技術が進んで環境対策も改善されたことに加えて「石炭資源は世界中に広く分布し、埋蔵量も多く値段も安い」との理由で復活しつつあるのだとか。一方で「日本の温室効果ガス排出が増えたのは、発電に占める石炭火力の割合が増加したことが大きく寄与」しているという意見もあって、先日「福島の石炭火力発電に環境相がNO」という一件があったと。そんな環境省に対抗する意味で、今回経産省が構想をブチあげた、なんて見方もできるのかな。
ちなみに上記の記事、新聞紙面では続きがあって、
石炭は埋蔵量が豊富で安く、中国やインドなどでは急速な経済成長を支えるために石炭火力が今後も主要な電源となる見通し。世界の石炭消費は30年までに06年比約6割増加すると予測されている。一方で日本の石炭火力は世界最高水準の発電効率を実現しており、「クリーンコールフォージアース計画」と名付け、日本で実績を作ってから世界に導入する。
そうな。産業振興の一環という側面もあるわけですね。
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電力といえば、毎年真夏の電力消費が問題になりますが……
■ 今夏の電力、懸念は薄く…柏崎刈羽原発の再開で東京電力 (読売新聞)
■ 「適正」上回る予備力=今夏の電力供給-東電 (時事通信)
今年は何とか大丈夫そう、とのこと。やっぱり不況の影響もあるんですかね。「節電のお願い」も今夏は「省エネのお願い」に切り替える、とのことですが、こればかりは「今年は大丈夫だけれど油断しないでね!」というニュアンスにしておいた方がいいような。
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「電力供給は問題なさそう」というイメージが生まれてしまうと、「じゃあそんなに対応急がなくていいよね」という流れになるのが怖いのですが……
■ 次世代送電網「スマートグリッド」で期待される日本の電力技術 (ダイヤモンド・オンライン)
最近話題のスマートグリッドです。今日は日経産業新聞、日刊工業新聞でも関連記事(オンライン版なし)が出ていたのですが、特に日刊工業新聞は上にあるダイヤモンド・オンラインの記事同様、「日本はスマートグリッドに関する知見で一歩リードしている」という論調。確かにその通りなようなのですが、怖いのはこっちの話:
■ 「冷静と情熱のあいだ」 (日経エレクトロニクス雑誌ブログ)
一方,米国の技術者や政府は,現状の技術力を比べて日米間で大きな差があることを前提に,技術勝負ではなく,政策勝負を挑み始めました。具体的には電力の送電網を高機能化して家庭につなぐことを意味するスマートグリッドに,充電可能なハイブリッド車であるプラグイン・ハイブリッド車の充電装置を組み込むことを計画しています。「ネクスト・ハイブリッド車」(トヨタ自動車)といわれるプラグイン・ハイブリッド車の開発を,スマートグリッドの整備に併せて推進する算段です。
その計画を実現する手段の一つが,標準化活動。特に,プラグイン・ハイブリッド車とスマートグリッドを接続するための要となる充電装置の標準化に関しては,政府機関が主導しながら米SAE(Society of Automotive Engineers)で急ピッチに進めています。
これはハイブリッド車に関する議論ですが、スマートグリッドでも同様に「技術で勝って、コンセプトで負ける」というような話になりそうで怖いです。実際、海外のニュースソースをあたっていると、米国政府を中心にスマートグリッド関連技術の標準化が進行中だよという記事が目に付きます。それは既に具体的な経済効果になりつつあって、
■ ZigBeeチップセット市場が急成長,スマート・グリッドへの採用で今後5年間で平均8割増 (Tech-On!)
IEEE 802.15で規定される近距離無線通信はPAN(Personal Area Network)とも呼ばれてきたもので,BluetoothやZigBee,UWBなどの複数の規格がある。これらの中で最近,特に関心が高まっているのがIEEE 802.15.4のZigBeeだ。
背景にあるのは,米国オバマ大統領が掲げる「グリーン・ニューディール」政策の柱と言える次世代電力網構想「スマート・グリッド」。電力メーターや電力関連機器をネットワークでつないで電力使用と供給の効率化を図る計画である。通信部分にZigBeeが使われる見通しとなり,一部の半導体メーカーはZigBeeチップを積極的に開発してきた。
2009年5月には,米国エネルギー省がスマート・グリッド構想の中で使用する機器の標準規格を発表。規格の一つとして電力メーターと家庭内の機器をつなぐ通信仕様ZigBee/Home Plugを採用しており,これによりIEEE 802.15.4向けチップセット市場の拡大が急速に進むと見られる。さらに,今後はIEEE 802.15.4対応機器の用途や規格が確立されていくことで,2008年に約1500万個だったIEEE 802.15.4向けチップセットの世界出荷数は,2014年に約4億9900万個まで増加するとABI Research社は予測する。
とのこと。ここに日本勢も割り込んで行ければ良いのですが、米国政府だって自国の経済復興を優先するだろうし。可能な限り米国勢に有利な標準化が進められる、それがスマートグリッドの世界標準になる、なんてオチがつかなければ良いのですが(シロクマ日報での関連記事)。
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スマートグリッドと表裏の関係にあるハイブリッド車といえば……
■ トヨタ HV「クラウン」特別仕様車 普及へ装備見直し低価格化 (Business i)
トヨタ自動車は16日、高級セダン「クラウン」のハイブリッド車(HV)「クラウン ハイブリッド」の特別仕様車を7月1日から発売すると発表した。HV普及のため装備を削減し、低価格化を図った。価格はベース車より79万円安い540万円。トヨタが装備削減のみの特別仕様車を発売するのは10年ぶり。
それだけクルマが売れていないと見るべきか、それともハイブリッド車市場でいち早くシェアを握っておこうという思惑なのか。
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もう1つハイブリッド車といえば……
■ 日経09年上期ヒット商品番付 インサイトとプリウスが東の横綱 (NIKKEI NET)
日本経済新聞社は2009年上期(1~6月)の日経MJヒット商品番付をまとめた。東西の横綱は「インサイト(ホンダ)&プリウス(トヨタ自動車)」と、流行のデザインをいち早く、安く提供するアパレル店「ファストファッション」。出費は抑えながらも、エコやおしゃれで高い満足度を得られる商品・サービスが上位に並んだ。
ということで、上半期のヒット商品に選ばれています。その他、当然といえば当然なのですが「エコ」や「省エネ」をキーワードにした商品/サービスが入選しています。
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エコ商品といえば、自転車もその1つとして最近人気ですが……
■ 信号無視や無灯火、危険自転車の検挙急増 08年、49%増1211件 (NIKKEI NET)
自転車の運転者が信号無視などの交通違反で警察に検挙される事例が急増していることが16日、警察庁のまとめで分かった。2008年は全国で約1200件と前年より約5割増え、今年1~4月も約2割増加。節約や「エコ」志向を背景に自転車を通勤などに使う動きが広がっているが、同庁は危険・悪質な運転には厳しい姿勢で臨むよう都道府県警に指示している。
こちらもある意味当然かも。自転車を使う人、増えていますしね。
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エコといえば、自然環境の保護が欠かせませんが……
■ 緑地の生物多様性 診断 ―― インターリスク総研 企業対象無料で (日経産業新聞)
こちらはオンライン版がないのですが、三井住友海上グループのインターリスク総研が、企業の緑地などを対象に「生物多様性にどの程度診断しているか」を無料診断するサービスを始めるとのこと。生物多様性への関心が高まると見込んで、無料サービスをコンサルティングや緑地設計事業の需要開拓につなげる狙いだそうです。
なんで生物多様性に関心が高まるの?という点ですが、実はCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)というものが来年10月に名古屋で開催される予定になっていて、これに合わせて企業が動くのではないかと見込まれているわけですね:
生物多様性保全への注目度が高まってきている。来年10月に生物多様性条約(CBD)第10回締約国会議(COP10)が名古屋で開催されることもあり、産業界の意識も高まり、企業による具体的な取り組みも進んできた。その一方で、生物多様性保全にどう取り組むべきか悩む企業も、まだ少なくない。先行する企業の事例などから、取り組むべき方向性を探ってみた。
ちなみに政府も「生物多様性民間参画ガイドライン」なるものの策定に動いていて、つい最近までパブリックコメントを募集していました:
■ (お知らせ)生物多様性民間参画ガイドライン案に関する意見募集(パブリックコメント)について (環境省)
COP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)をめぐってCO2削減目標を決めるだけでも大変だったのに、生物多様性の保護にまで動く企業がどれだけいるのか?という疑問はありますが、トヨタやリコーなど一部の大手企業が実際に活動を始めています。何らかの動きが生まれ、ビジネスにつながっていく可能性は否定できないのかも。
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生物多様性といえば……
■ 中国産ミツバチ密輸容疑 府内の元養蜂業者を家宅捜索 (asahi.com)
農作物の受粉に利用するミツバチを中国から密輸しようとしたとして、大阪府警が同府富田林市の元養蜂業者の男(35)宅など数カ所を家畜伝染病予防法(輸入のための検査証明書の添付)違反容疑で家宅捜索していたことが府警への取材でわかった。農林水産省によると、中国産ミツバチの不正輸入については、「聞いたことがない」としている。
■ 中国産ミツバチ密輸 全国で不足 農業や生態系へも影響 (MSN産経ニュース)
国内で初めて発覚した中国産ミツバチの密輸。果物や野菜の受粉に欠かせない交配用ミツバチが昨年以降、全国で不足し、農業や生態系への影響を軽視できない事態が続いていることが背景にあるとも考えられる。ミツバチ不足は指定輸出国のオーストラリアで病気が発生し輸入停止になったことが一因とみられるが、個体数そのものが激減したと指摘する専門家もいる。需給バランスの悪化が「密輸」を助長させる恐れもあり、国は対策に乗り出した。
いよいよ日本にも『ハチはなぜ大量死したのか』で描かれた問題が上陸した感がありますが、来年のCOP10に合わせて、この問題が大きく取り上げられるなんてことになっていくのかも。
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環境保護といえば、リサイクルが欠かせませんが……
■ シップリサイクル条約の策定とその概要 (国土交通省海事局)
今日の日刊工業新聞の裏表紙特集がこれ。2012年末に「シップリサイクル条約」なるものが発効するそうなのですが、これは文字通り「環境問題や労働災害を起こさず船舶を解体・リサイクルする」ことを求めた条約なのだそうな。なんでも、
船舶の解体はかつては日本や欧州でも盛んに行われていたが、労働コストの上昇や解体ヤードの確保の問題などで近年はインド、パキスタン、バングラデシュの南アジアで「全世界の船舶の約80%が解体されている」(国土交通省海事局)。一部の地域では干潟に船舶を乗り上げた後、満足な装備もない労働者が人海戦術で解体するなど、極めて劣悪な状況下で行われている。
深刻な環境汚染も広がり、非政府組織(NGO)などから「先進国は発展途上国を船舶の廃棄場にしている」と激しい非難を浴びてきた。これまでも有害廃棄物の移動を管理するバーゼル条約で船舶解体のガイドラインを発行するなど対策が行われていたが、より抜本的な解決を目指し、国際海事機関(IMO)でシップリサイクル条約が採択された。
条約が発効すれば船舶の有害物質は造船段階から把握され、解体終了まで追跡できるようになる。また、船主国と解体国にリサイクル計画の承認や検査が求められる。
(日刊工業新聞 2009年6月17日 第28面より)
とのこと。日本では実に約7,000隻が対象になると見られていて、海運会社や業界団体が対応を急いでいるのだそうな。また最近の景気後退で荷動きが減っているため、老齢船の処分が進んで世界的に解体量が増加しているとのこと。リサイクルというと小さいものを想像してしまいますが、当然ながらこんな大きなものにまでリサイクルの波が押し寄せているわけですね。
ご参考まで:
■ 船舶解体 (Wikipedia)
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