先日の「Twitter と政治を考えるワークショップ」でも(当然ながら)話題に上がっていた、公職選挙法でのネットの取り扱い。ご存知のように、現在の解釈では「選挙活動にネットを使うことはNG」になっており、ブログはおろか Twitter、YouTube も活用することはできません。しかし誰もがその規定を額面通りに受け取っているかというと、そうでもないようで:
■ ネット動画で都議選候補者PR…告示前投稿 (YOMIURI ONLINE)
東京都議会議員選挙の投票日が7月12日にあり、現在選挙戦の真っ最中なわけですが(都内にいると選挙カーだらけで騒がしいです)、YouTube を「使って」いる候補者がいるとのこと。あれ?選挙で使っちゃいけないんじゃないの?と思いきや、
いずれも告示前に投稿されたものだが、石原慎太郎都知事の声援ビデオや、コマーシャル風の独自製作ビデオが、選挙期間中もネットを通じて流れる仕組みだ。
公職選挙法の規定では、告示後の更新はできないが、これならば問題なさそう。
とのこと。公職選挙法は「告示後の更新」を禁じているだけで、候補者に関する情報を全てネットから引き上げろというわけではないので、このような(言い方は悪いですが)「抜け穴」が存在しているわけですね。ところが抜け穴だけに、困った問題が:
一方、動画サイトには、特定の候補や政党を批判する映像が今も公開されている。投稿の手軽さが裏目に出たケースで、やり玉に挙げられた政党の担当者は「事実無根の主張もあり、非常に心外」と憤っている。
いずれの動画も、告示後に新たに投稿すると、公職選挙法が制限する、文書図画の頒布のルールに抵触する。
都選管は「告示前に投稿した映像の内容が特定の候補者や政党を一方的に批判する内容だったとしても、制限する規定がなく、対応は難しい」としている。
つまり特定の候補者や政党を(事実無根であっても)攻撃する動画を作り、告示直前にオンライン投稿してしまえば、攻撃された側が事実上同じ土俵で反論することは不可能になると。さらに攻撃する動画を削除する規定もないので、攻撃側のやりたい放題になる――だから公職選挙法でキチンとネットの取り扱いを規定しておけば良かったのに!
いや、冗談ではなく、このままではもっと様々な抜け穴が出て来てしまうのではないでしょうか。例えば、もう既に白黒決着がついているのかもしれませんが:
- 海外にいる応援者が、「自らの判断で」応援メッセージを海外サーバ上にあるサービスに投稿する
- 事前にネットに関連動画/メッセージを投稿しておき、選挙期間中はそれらへのリンク/エンベッドを載せた記事を投稿する
- 逆に落選させたい候補者に対して、彼/彼女にマイナスになるような記事をネットから発掘し、それらへ人々の目が向くような「ネットネガティブキャンペーン」を展開する
などなどの行動を取る人々が現れるかもしれません。
ということで、少なくとも選挙を管轄する当局だけでもネット対応をしっかりやって、上記のような「抜け穴」を利用しようとする人々に対抗する必要があると思うのですが……東京都選挙管理委員会の公式ページ、なんか別方向に力を入れているような:
まずURLからして何だかなぁなのですが、一番大切な立候補者の情報を探すのに一苦労です。どこに掲載されているか分かるでしょうか?
……正解は、トップにあるメニューから「東京都議会議員選挙とは」を選び、表示されたページの下の方にある「立候補者一覧」というコーナーから確認することができます。さらに信じられないことに、候補者一覧はPDFファイル。しかも透明テキストがついていないので、候補者名をコピペしてすぐに検索するということは不可能です。候補者の関連ページへのリンクを載せる、ぐらいの手間を期待するのは間違っているのかなぁ。それともそういった行動も「特定の候補者に便宜を図った」と捉えられてしまうので、法律上不可能なのでしょうか。
一方で、先日もご紹介した「e都政」や、JANJANの「ザ・選挙」など、民間団体から「選挙ポータルサイト」的なものを作ろうとする動きが出て来ています。そういったものがあるから良い、という考え方もあると思いますが、本来は公的機関が最低限のものを用意するというのが正しい形でしょう(そんな可能性が高いとは考えていませんが、例えば「ザ・選挙」が意図的に/脅迫されて特定の候補者の情報を削除する、ということが起きないとも限りません)。既にインターネットは選挙民にとって、最も接触度の高いメディアの1つになっているという事実を、政治家も公的機関もよく考え直すべきだと思います。
【関連記事】
前述の「Twitter と政治」ワークショップでもパネラーを務められた fumi さんが、「インターネットと政治」というテーマでまとめた記事を書かれています。非常に参考になるので、是非ご一読を:
■ インターネットと政治 (fumi's blog)
東京都議会議員選挙のサイト見ました。
ひどいですね。
僕らにできることって、なにかあるんでしょうか。
投稿情報: tashiro | 2009/07/04 21:58