なんだか読まなくてはいけない本が増殖しつつある今日この頃ですが、ずっと気になっていた"Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness"をようやく読み始めました(この本、邦訳が出てるのかどうかイマイチ不明です。ご存知の方教えて下さいー/※追記:コメント欄で、角口さんに教えていただきました!7月2日に日経BPから『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』というタイトルで邦訳が出ています)。
"Nudge"は「肩を押す」といったニュアンスの言葉で、望ましい方向に人々を「さりげなく」誘導するためのテクニック集といったところ。なんでも『ヤバい経済学』のスティーブン・レヴィットも誉めているとかで、面白さは折紙つきです。ただ最近日本でも行動経済学ブームが起きているので、関連本を読んでいる人にとっては「どっかで聞いたことのある話だな」というネタが多いかも。
で、本書の中で取り上げられている事例をちょっとだけ。今日のシロクマ日報で取り上げたゴミ問題とも関連するのですが、米国の大学で「カフェテリアにあるトレイを撤去する」という実験が行われたのだとか:
■ Nudging in the cafeteria (Nudge Blog)
米国のコネチカット大学とアルフレッド大学の2箇所で、実験的に(一定期間だけ)カフェテリアからトレイを撤去してみたそうです。すると:
Students (at Alfred) ran a test last semester showing that on two days when trays weren’t offered, food and beverage waste dropped between 30 and 50 percent, according to Kathy Woughter, vice president for student affairs at Alfred. That amounts to about 1,000 pounds of solid waste and 112 gallons of liquid waste saved on a weekly basis, according to the college. Without trays to wash, water consumption also decreased. Woughter said students might also find themselves a little lighter in the waist as a result of the policy.
アルフレッド大学の学務副担当者、Kathy Woughter によれば、実験的にトレイが撤去された2日間、ゴミとして捨てられた飲食物の量は普段より30~50%少なかった。1週間分の量に換算すれば、1,000ポンドの固形ゴミと、112ガロンの液体ゴミが削減されることになると学校側は述べている。トレイを洗わなくてもいいので、水の消費も減った。また学生たち自身もウェストが細くなったはずだ、と Woughter は述べた。
とのこと。飲食物の注文量全体が減ったのか、それともゴミの量だけが減ったのかは分かりませんが、要するに「持ち運びしやすい」という状態になると人は余分なものまで持ってしまうのかもしれません。渋滞を解消しようとして道路を造っても、クルマの通行量が増えて結局は元通り……という話がありますが、似たような関係「容量を増やす」「それを満たすまで内容物が増える」というものは様々な分野に存在しているのかも。
そういえば「ブログだといくらでも文章を書けるので、ついダラダラと書いてしまう」「Twitter は140文字制限があっても、意外に言いたいことが言い尽くせる」という話を聞くこともよくあります。「こんなんじゃ容量が足りない!」と感じても、増やしたいと思っている分は本当は無駄なものではないか、今一度考えてみたほうが良いのかもしれませんね。
ちなみに先日言及した、クリス・アンダーソンの最新作"Free "ですが、Amazon で予約注文してたら「在庫確保に失敗したので、7月22日以降発送でもいい?」ってメールが来てしまいました。しばらくは Scribd 上にある無料オンライン版を読み進めるか……。
日本語版、これのような気がします。
『実践 行動経済学』
http://www.amazon.co.jp/実践-行動経済学-健康、富、幸福への聡明な選択-リチャード・セイラー/dp/4822247473/ref=pd_sim_fb_5
ヘルスケア、ウェルネスという分野に僕もとても興味を持っているので、いつもブログを楽しく拝見させていただいております!
投稿情報: 角口建 | 2009/07/10 00:01
角口さん、コメント&情報ありがとうございます!
おぉ、まさにこれですね。7月2日発売ですか……検索しても出てこないわけだ。なんだかすごいタイミングで英語版を買ってしまいましたが(笑)ともかく面白い本ですので、ご興味があればぜひ。
投稿情報: アキヒト | 2009/07/10 06:02