ペイパーポスト(Pay per Post)。ブログなどで記事を書くかわりにお金をもらうことですが、許される行為かどうか議論を呼んでいることはご存じの通り。で、Twitter の世界にも既にこの手法が進出(侵出?)していて、「Twitter で○○ブランドについて書き込んだら$~払う」などといった業者が現れているわけですね。
この"Pay per Tweet"とでも呼ぶべき手法に対して、米国のFTC(連邦取引委員会)が規制に乗り出すかもしれないという話が先週の TechCrunch で紹介されています:
■ Full Disclosure: Sponsored Conversations on Twitter Raise Concerns, Prompt Standards (TechCrunch)
In light of the FTC’s recent scrutiny of Social Media practices and the activity that connects brands to influencers and ultimately consumers, we will soon see guidelines and corresponding penalties to serve as governance for future engagement.
In the realm of sponsored posts or tweets, the FTC simply cannot delineate the differences between earned and paid postings and therefore assumes that most consumers are equally oblivious.
FTC が最近ソーシャルメディアや、ブランドと影響力を持つ消費者の間をつなぐ行為について調査を行ったことを踏まえると、将来的にこれらの行為を規制するガイドラインや罰則が登場するかもしれない。
スポンサード記事やスポンサード Tweet (※お金をもらってブログや Twitter を書くこと)の分野では、FTCには「その記事がお金をもらって書かれたものか」を判断できないだろうから、多くの消費者も同様に気づいていないと想定するはずだ。
で、その TechCrunch 自身が、今度はこんなキャンペーンを始めることを宣言しています:
■ 太っ腹! ハッシュタグ#TechCrunch50を使ってtweetすると$2500のチケットが毎日1人に当たるぞ (TechCrunch Japan)
お馴染み TechCrunch50 カンファレンス を盛り上げるために、#TechCrunch50 というハッシュタグをつけて Twitter にメッセージを投稿したユーザーの中から毎日1名を選んで、$2,500のチケットをプレゼントするというキャンペーンです。なるほど、なかなか面白い企画……って、これも一種の"Pay per Tweet"と見なされる危険はないのでしょうか?
誤解のないように述べておきますが、個人的には全てのペイパーポスト的手法が悪であるとは思いません。僕自身、個人ブログでは広告を掲載していますし、献本などの形で企業から便宜を受けることもあります。突き詰めていけばこういった状況もNGになると思いますが、「書き手は書く対象と一切の関係を持ってはならない」というのは現実的には非常に達成しづらい条件でしょう。それよりも、「私は献本してもらった上でこの本の書評を書いている」というように、書く対象との関係性を明らかにした上で書く(書き手が手心を加えてしまっているかどうかは読み手に判断してもらう)という方が現実的だと考えています。
今回の TechCrunch のキャンペーンですが、Twitter 上でバズを起こす上では非常に効果的でしょう(なにしろ「一回tweetするごとにチケットが当たるチャンスが増えていく」そうですから)。「#TechCrunch50」というタグを付けたポストが大量に発生すれば、Twitter の Trending Topics に載ることもあるかもしれません。しかしそれを見た全てのユーザーが、「これは$2,500ドルプレゼントキャンペーンも影響している」と理解できるかどうか。仮にこのキャンペーンの存在を知らずに、「#TechCrunch50」というタグを付けて Tweet してしまったユーザーが当選したらどうするのか。様々なグレーゾーンを抱えているのではないでしょうか。
こういった「変化球型 Pay per Tweet」という手法、今後も増えてくるかもしれません。例えば最近、"Twitter Power: How to Dominate Your Market One Tweet at a Time"という本を手に入れて読んでいるのですが、その中で Angie Jones (@FitBizWoman)というユーザーの事例が紹介されています。彼女がフォロワーを増やすために、「フォローしてくれたら無料で自作の電子ブックをプレゼント!」という手法を使ったとのこと。そのかいあってか?本書が出版された時点(2009年2月)で392人だった彼女のフォロワーは、現在では3,815人と10倍近くに膨れあがっています。もちろん彼女は「コンテンツを作る力」を利用しただけとも言えますが……これも「フォロワーを買う行為だ!」という批判が起きるかもしれません(ちなみに現時点では、Angie Jones さんはこのプレゼントを実施していないようです)。
まぁ、どんな手法がどこまで許されるのかという基準は、ユーザー間に次第に醸成されていくのでしょうが。目に余るようなゲリラキャンペーンを行う企業が増えて、「もうハッシュタグは使えないなぁ」などといった空気が生まれてこないことを願います。
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