なんか「~するための~つのアドバイス」系記事を紹介するのは久しぶりですが。ARの世界にもこんな記事が出てくるようになってきました:
■ 6 TIPS FOR YOUR AUGMENTED REALITY PROJECTS (agencyside)
「ARプロジェクトを成功させるための6つのヒント」とのこと。特にこの記事が扱っているのは企業によるAR活用のケースなので、タイトルは「ARのビジネス活用」にしてみました。早速その6つのヒントの内容はというと:
(1) 使いやすさを忘れずに
これは文字通り、使いづらければ使ってもらえないという指摘。そんなの当たり前だよ、と言われてしまうかもしれませんが、「ARは現実世界の上に情報を表示する=直観的な操作が可能=使いやすい」というロジックを無意識のうちに展開してしまう傾向があると思います。実はそんなことはない、という指摘は既に数多くなされていますし、実際にARアプリケーションを使って「意外に使いづらいな」という感覚を抱いたという方も多いでしょう。ARアプリで真に求められるUIはどんなものか、研究を進めていく必要があると思います。
(2) 何らかの問題を解決するものであること
これも読んで字のごとし。例として、お馴染みのレゴのキオスク事例が紹介されています:
このケースでは「組み立てるまで実物がどんなものか分からない」というレゴ製品の大きな問題点が、ARによって見事に解決されています。こうした問題解決型のアプローチがARの唯一の使い道というわけではありませんが、ARである必然性を大きく高めてくれることになり、それだけに成功する可能性も高くなるというわけですね。
(3) 女性が喜ぶものにすること
プロモーションのターゲットが誰なのか、にもよる話ですが、「ARで儲けたければ女性を狙え!」的なアドバイスがされています(海の向こうでも購買権限は女性が握っているご様子)。で、参考事例として紹介されているのがこちらもお馴染み Tobi.com のバーチャル試着室:
確かにこういう形であれば、無理なくARを使って貰うことができるかもしれませんね。ていうかこのアドバイス、お金に近い位置でARを使いましょという見方もできるのかも。朝日新聞にもこんな記事が出ていますし、ショッピング分野での展開は先行して進むかもしれません:
■ 高級時計着けた自分がパソコンに 進化する「仮想試着」 (asahi.com)
(4) 「現実」であること
「拡張現実」は「拡張」と「現実」からできています、というと言葉遊びのようですが、「現実」の部分を忘れてしまったARアプリは成功しないというアドバイスもよく聞かれます。逆に成功しているAR活用例を見ると、現実の側をきちんと考慮したものが多いという点は『AR-拡張現実 』の中でも指摘しました。前述の(1)と同様に忘れられがちですが、大切な点ですね。
(5) 実用性を持たせること
先ほどの(2)と似た話ですが、何らかの実用性を持たせないのであればARアプリは作らないほうがマシ、とまで言い切っています。
この点については賛否両論があるかもしれません。例えば集客を目的として「ある場所に行くと巨大ロボットが見える!」系のARアプリを作るという話であれば、単に「面白そう」「一度行ってみよう」的な内容でもそれほど問題にはならないでしょうし。一方で継続してアプリを使ってもらうためには、ただの「ビックリ体験」ではダメという指摘も、これまた既に数多くなされています。恐らく実用性というよりも、ARである必然性、もしくはARアプリを使う必然性を考えなければという話になってゆくのではないかと思います。
(6) 戦術レベルで考えないこと
ARは見た目が華やかなだけに、キャンペーンの本質ではなく味付け的な使われ方が多いというのは否めません。「話題のAR技術を使用!」という一言があると注目を集めやすい、というのは(少なくとも現時点では)事実でしょう。ただしそれだけで終わってしまっては、ARが持つ力を十分に活かし切れないことになるわけで。ではどんな使い方をすれば「ARならでは」という効果を引き出せるのかという点については、これから関係者が十分に考え、世に示していかなければならない話だと思います。
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以上6点。どこまで正しいかどうかは別にして、こうした考察が行われ始めたこと自体が、ARがいよいよビジネスでも本格的使われるようになってきたということを示しているのかもしれません。またこうしたノウハウが蓄積されていけば、AR導入の追い風となっていくのではないでしょうか。
関連として、こんな記事もご紹介しておきましょう:
■ Marketing tips for augmented reality developers (Augmented Planet)
せっかく開発したARアプリをどう売り込むか?という話。「(そのアプリを使っている場面を撮影して)YouTube に投稿する」などといった点は、特に視覚的ARの場合には重要ですね。こうした手法というかチェックリストというか、ノウハウについても今後議論が進むはず。
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