今年初頭、北アフリカ・中東諸国で独裁政権に対する民衆の蜂起が起こり、そこでTwitterやFacebookが活用された際、「これはTwitter革命だ」「ソーシャルメディアが民主化を促進する」といった声が少なくありませんでした(正直言って、僕自身そんな展開を期待した一人です)。しかし当然ながら、Twitterは良くも悪くもツール。民主化運動に使うことができるなら、その逆も――ということで、ついにこんなニュースが出てきました:
■ Taliban join the Twitter revolution (The Guardian)
タイトルで言い切っていますが、アフガニスタンでタリバンが公式のTwitterアカウント"@alemarahweb"を立ち上げたとのこと。どうやら登録自体は昨年12月に行われているので、タリバンがこうしたアカウントを活用していたのが明らかになった、と言う方が正確かもしれません。(※ただし同記事では「なぜそれがタリバン関係者の公式アカウントだと確証が取れたのか」は解説されていないので、タリバン関係者を装っている可能性もあるということだけは述べておきたいと思います。)
多くのメッセージはパシュトー語で書かれているそうなのですが、次のように英語によるツイートも始まっています:
「5月13日、アフガニスタン警察が発砲、敵の13人が死亡して数名の負傷者が出た。」
リンクされているのはIsramic Emirate of Afghanistan(アフガニスタン・イスラム首長国、1996年にタリバンがカブールを制圧した際に設立を宣言した国家の名前)というサイトに掲載されている記事で、実は英語部分は冒頭部分が抜粋されたもの。同サイトはタリバン側からの情報発信に使われているもので、言うなれば企業のTwitterアカウントと同様、自社(自組織)サイトへのアクセス向上にも活用を始めたというところでしょうか。
興味深いのは、フォローしている相手の中に米軍関係者や英軍支援団体のアカウントも含まれていること。嫌がらせか、はたまた本気の情報収集かは分かりませんが、ともかくアフガニスタン全土を支配していた頃は先進国のテクノロジーを否定していたタリバンが、逆に有効活用に転じた表れなのかもしれません。
既に疑似科学の支持者たちが勢力拡大にウェブ/ソーシャルウェブを活用しているように、ネットは必ずしも民主的な勢力だけのものではなく、タリバンのような人々がより巧みに使いこなす可能性も十分にあるでしょう。実際にシリアでは、政府のスパイがSNS上でアカウントを開設する(そして反政府活動家のふりをしてネット上でのやり取りを監視する)という動きもあるそうです。今年はアラブ諸国の民主活動家がソーシャルメディアを有効活用し、その後彼らに対抗する勢力もソーシャルメディア上で反撃に転じた年、ということにならなければ良いのですが。
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