ということで、やってきましたARE2011。今年はLayarからサングラス(上の写真)が、OccipitalからARE2011のロゴ入りノートもプレゼントされたりして、ちょっと賑やかさが増した感じ。セッション数はほとんど変わらないはずですが、エキシビジョンのスペースが広くなり、前回より出展企業も増えている感じです。
キーノートには昨年に引き続きブルース・スターリング氏が登場。WIREDで連載中のブログ"Beyond the Beyond"でもARネタを追いかけていますが、新たに本も書くことになったとのこと。どんな切り口になるのか今から楽しみです。
で、そのキーノートが始まる直前。ちょっとした事件が起きました。白い防護服のようなものに身を包んだ人々が突然現れて……
何かビラのようなものを撒くと同時に、黒と黄色の縞模様のテープで会場を封鎖!
壇上にいたスターリング氏を(ちゃんと一言断りを入れた上でw)演台からどかし、アジ演説を始めるではありませんか!なんと大胆な奴らだ!!
演説の内容は、どうやら「空間を解放しろ」という主張のようです。演説の中で"Free space!"という言葉が発せられる度に、取り巻き連中も"Free space!!"と叫ぶ始末。やれやれ、キーノートがこんな事態になってしまうなんて……
まぁ、当然ながら全て仕込みなわけですが。実はこの集団、その名も"Space Liberators"(@spacelib)といって、4月にBeyond the Beyondでも取り上げられている人々だったりします:
■ Augmented Reality: Space Liberation Movement (Beyond the Beyond)
その主張はこんな感じ:
The physical space we live in has been divided, partitioned and sold to the highest bidder, leaving precious little that is truly a public commons. The privatization of physical space brings with it deep social, cultural, legal and ethical implications. Private ownership of physical space creates zones of access and trespass, participation and exclusion. Private use of physical space becomes an appropriation of our visual space, through architecture, so-called landscape design, and ubiquitous advertising whose goal is to be seen well beyond the boundaries of privately owned property.
我々の住む物理的空間はいまや分割され、区切られ、最もカネを払った者に売り払われた。真の意味で公共の空間はほとんど残されていない。物理的空間の私有化は深い社会的・文化的・法的そして倫理的意味を持つ。物理的空間が個人によって所有されることで、入って良い領域とそうでない領域、受容と追放が生まれる。物理的空間を個人が使用することで、建築物(いわゆる「ランドスケープ・デザイン」と呼ばれるもの)や、私有地の領域を越えて広く人々に見られることを目的とした広告が設置されることになり、我々の視覚的空間をも侵害するのだ。
……とあれやこれや難しい議論が続くのですが、とにかく「(物理的)空間」というものが自由とは程遠い存在になっている、というわけですね。
その一方で彼らは、現代における「空間」とは物理的空間のことだけではなく、いわゆるサイバースペースも含まれたものを意味するようになっていることを指摘します。そしてこの新たに生まれた「空間」を商業やプロパガンダなどの侵略から守るため、"Free space!"を合い言葉に立ち上がった、と。
ではなぜ「空間解放団」と拡張現実が結びつくのか。彼らは主張の最後で、こんなことを述べています:
We believe in space as a public resource, a global platform for freedom of expression. We believe each person has the right to create, augment and modify the media environment that reaches their senses. We draw inspiration from the Lettrists, the Situationists, psychogeographers and the hacker community; from street artists and culture jammers and game designers. We claim the digital dimension of SPACE as freespace, on behalf of all world citizens.
我々は空間が公共の資産であり、表現の自由のためのグローバルプラットフォームであると信じる。我々は一人一人が、感知することのできるメディアとしての空間を創造し、拡張し、修正する権利を有すると信じる。我々はレトリスム主義者、シチュエーショニズム主義者、サイコジオグラフィ学者、ハッカーコミュニティ、ストリートアーティスト、文化的騒乱者、そしてゲームデザイナーからインスピレーションを得る。我々は世界中の市民の代表として、空間の電子的次元が自由空間であると宣言する。
ということで、空間を自由に使う力や権利の主張、またそれを実際に行使するデモンストレーションとしてARが登場するというわけですね。
実際に彼らは、Layar上に開設された「抗議のためのレイヤー」"freespace"を通じて、AR空間上のあちこちにこんなバーチャルビラ(?)を貼り付けています:
そしてどこかで見た男性の顔も:
うーむ、これはどこからどう見ても○acebookの○ッカーバーグ氏ではないですか。くわばらくわばら。
そんなこんなで、やり方は芝居がかっているのですが、彼らの指摘する点はなかなか面白いのではないでしょうか。「拡張現実空間をどのように捉えて、どのようなルールを整備して行くのか?」という話はこれから重要になって行くでしょうし、何の議論もなければ映画『マイノリティ・リポート』で描かれたような、デジタルな広告が氾濫するという状況も生まれかねません。また拡張現実を活用した抗議活動という点では、よりシリアスな話として「BPの原油流出事故に抗議して、BPのロゴにカメラをかざすとそこから原油が流れ出ているように見えるAR」というものが登場しています。"Free space!"のかけ声が、冗談では済まされなくなる世界が到来しても驚くに値しないのではないでしょうか。
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