大量のデータを分析し、隠れた情報を明らかにするという「ビッグデータ」の時代が到来した――とはいうものの、やっぱりどうにかしてデータを集めてこなければ何も始まらないことは変わりありません。幸いオープンガバメントなど、データ共有を進めようという動きが起きているわけですが、そもそもデジタルデータになっていない情報をどう集めるのか。1つの方向性として、こんな研究が行われているそうです:
■ 'Ghost Hunter' game lures players to take pictures for researchers (msnbc.com)
ノースウェスタン大学の研究者らが開発したAndroid用ゲームアプリ"Ghost Hunter"について。地図に表示されるゴーストを追いかけるというゲームなのですが、もちろんただのゲームを研究者が開発するはずもなく、このアプリには別の役割が与えられています。その役割とは、ゲームを通じてプレーヤーを誘導し、研究者が意図した写真を撮影してもらうこと。実はゴーストに近づくと、画面がAR(拡張現実)モードに切り替わり、現実空間に重ね合わせて表示されるゴーストを撮影(=捕獲)することを求められます。その写真こそが研究者が手に入れようとしていたものであり、プレーヤーはゲームを遊びつつ彼らに貢献するようになるという仕組み。
以下のリンクがオリジナルの研究論文(PDFファイル)なのですが、そのタイトルが象徴的です。"Crowd (Soft) Control"、つまり「(ソフトな)群衆コントロール」というもの:
■ Crowd (Soft) Control: Moving Beyond The Opportunistic
かねてから「群衆の英知(Wisdom of Crowds)」などといった形で、人々の力を集めることで何らかの目的を達成しようということが行われてきました。しかしその力が、特定の意図に添って動いてくれるという場合ばかりではありません。そこでこういった実験を通じて、どのようなインセンティブを配置すればCSC(Crowd Soft Control)を効果的に行うことができるのか、それを見出すのが研究者らの目標とのこと。
そういえば以前、スパマーがCAPTCHAを突破するために、CAPTCHAを解くとポルノ画像が手に入るというニセのサイトを構築してユーザーを集めたという話がありました(参考記事)。ゲームを利用するという話でいえば、これまた最近のバズワードで「ゲーミフィケーション」があります。ジェイン・マクゴニガルの『幸せな未来は「ゲーム」が創る』でも、英ガーディアン紙がゲーム的な要素を配したウェブサイトを構築し、読者に議員の不正支出調査に参加してもらうという試みを行ったことが紹介されていますが、今回の"Ghost Hunter"も同じような発想に基づくものと言えるかもしれません。いずれにしても、CSCテクニックの発展には注意を払っておいた方が良さそうです。
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