突然ですが、マイクロソフトが「Microsoft Office InterConnect 2007」という製品を販売しているのをご存知ですか?実は2004年にバージョン1が発表されていたこの製品、僕はまったくその存在を知りませんでした。昨日の夜、AMNのイベント「InterConnect ブロガーミーティング」があり、そこで初めて触れた次第。以下、1時間ほど説明を受けて触っただけの恣意的レビューです。
この「InterConnect 2007」という製品、「デジタル備忘録」というキャッチフレーズが付いているのですが、はっきり言ってこれだけでどんな製品なのかイメージすることは不可能ですよね。本当は「ワープロソフトですよ」「表計算ソフトですよ」のように簡単な定義が言えるといいのですが……困ったことに、どのように使うかによって大きく性質が変わってくるソフトです。なので「こういう使い方ができると思う」と言う前に、抽象的で申し訳ないのですが、簡単に仕組みを説明したいと思います。
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ローカルPC上にちらばった様々なデータ(個々のメール、ファイル、アドレス情報など)から望みのデータを取り出そうと思った場合、皆さんならどうされるでしょうか。様々な方法がありますが、最近では「デスクトップサーチで探す」という方も多いでしょう。実際僕も、「○○様に提出した提案資料」「○○イベントの詳細が書かれたメール」などのように具体的なイメージがある場合、最近は Google のデスクトップサーチで済ませることがほとんどです。
しかし「こんど参加するプロジェクトが以前のプロジェクトと似ているので、使えそうな資料を探したい」などという場合、検索エンジンにどんなキーワードを入力するかは悩むところでしょう。またディレクトリ型でファイルを整理・保管していたとしたら、例えばその構造がプロジェクト単位でなければアウトですし、自分のメールまでディレクトリを作って保管しているという人は少ないはず。このように「目的があいまいな検索」の場合、既存のツールはうまく動いてくれません。
以前もご紹介した本『サーチアーキテクチャ 「さがす」の情報科学』では、以上の検索行動の違いを「探す目的は明確か曖昧か」「探す場所は明確か不明確か」という観点を軸に、以下のように分類しています:
(検索シーンの分類、『サーチアーキテクチャ』52ページと68ページを参考に作成)
ここからも分かる通り、①「既知情報検索/再入手」と②「探求検索」は検索エンジンの守備範囲となっているわけですが、③「巡回/捜索」と④「散策」をサポートするツールがありません――そこで今回の「InterConnect 2007」の登場となるわけです。
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「InterConnect 2007」の基本となるのは、フリーテキストで作成できる「メモ」。ブログのように簡単に情報を書き込むことができ(ファイルや画像の添付も可能)、これまたブログのように逆時系列で記事が積み重なっていきます。しかしただのメモではなく、これまたブログと同様に「タグ」のようなイメージで複数のカテゴリを登録しておくことが可能。後から「Aプロジェクトの記録が見たいなあ」と思えば、「Aプロジェクト」にカテゴライズされたメモだけを呼び出して読むことができます(もちろん「2007年1月~3月まで」のようなフィルタをかけたり、テキスト検索することも可能)。
さらに InterConnect は Outlook と連動していて、メールはもとより、アドレス帳にある「人」のデータを扱うことができるようになっています。仮に「小林啓倫」という人物がアドレス帳に登録されていたとしましょう。InterConnect 上でこの人物のアイコンをクリックすると、さきほどの「タグ」のようなイメージで、「小林啓倫」に紐付けられた情報を一挙に確認することができます。例えば過去に「小林啓倫」とメールをやり取りしていればそれが表示されますし、また上記の「メモ」に「小林啓倫」という人物を含めておけば、関連したメモを一覧表示させることも可能です。さらに人物情報には組織情報も含めることができるので、例えば「小林啓倫」と同じ組織に所属する人物として、某コンサルティング会社のAさんがいる、などということが分かるようになっています。
この仕組みと、検索エンジンの関係をイメージにしてみると、以下のようになります:
検索エンジンが「ドキュメントに書かれている内容(から機械的に作成されたインデックス)」を検索するのに対し、InterConnect ではユーザーが登録した「メモ」(図の中で黄色く表示された部分)やカテゴリ、人物情報が「さがす」対象となるわけですね。また何かを見つけて終わり、というのではなく、同じカテゴリや人に紐付いている情報を次々とブラウズしていくことができます。
例えば「Xプロジェクト」というキーワードで情報を探した場合、検索エンジンでは「Xプロジェクト」という言葉が中に登場するファイルがヒットすることになりますが、InterConnect では「Xプロジェクト」というカテゴリが付けられたメモ、それに添付されたファイルが浮かんでくるわけです。その中に議事録のようなものがあり、参加者として「小林啓倫」が登録されていたら、その名前をクリックして今度は「小林啓倫」を軸に情報を見ていく、などといった行動につなげていくことができます。
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話を先ほどの「目的があいまいな検索」に戻します。上記の「Xプロジェクト」の例のように、InterConnect では様々な情報(メモ、ファイル、メール等)を1つにまとめてブラウズすることが可能です。従って「2007年12月10日午後7時から行われたミーティングの議事録が欲しい」という明確な目標がなくても(もちろんあってもいいのですが)、「Xプロジェクトってどんな内容だったっけ~」というようなゴールを限定しない情報検索ができるわけですね。いろいろな情報を見ていくうちに、
「ああ、この資料を何度も討議に使ったっけ。この資料って重要だな」
とか
「ああ、この会議に参加している○○さんって、今度のプロジェクトに参加する××さんの上司なんだ。どんな人か聞いてみよう」
などといった「隠れた情報」に気付くことができるでしょう。言ってみれば、InterConnect は一見「石」のような情報を積み重ねて関連付けることで、そこから「玉」を生み出すツール、あるいは「玉」へと至る道を「石」で作るツール、と例えることができるのではないでしょうか。
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もちろんこれは、全てがうまくいった場合の話です。ここまで来ればこのツールの根本的な難しさがお分かりだと思いますが、デスクトップサーチが「インストールすれば(機械が勝手にインデックスを作ってくれるので)すぐに使えるツール」であるのに対し、InterConnect は「自分で情報を積み重ねなければ何にもならないツール」です。しかも、例えば「Xシステムのご提案」というファイルを「Xシステム」というカテゴリのメモに添付しているだけでは、検索エンジンを使った場合と何ら結果は変わりません。そのメモにミーティング出席者を含めたり、「Xシステム」だけでなく「提案資料」「○○業界」「CRM」などといったカテゴリを追加することで、後から見直した際に価値が生まれる可能性が高まるわけです。従って、ユーザーがどんな使い方をするかによってまったく結果が違ってくるでしょう(検索エンジンが「誰が使っても同じインデックスを作ってくれるツール」であるのに対し)。
恐らく InterConnect をフル活用するためには、ある程度の慣れやスキルが必要だと思います。まっさらな状態をポンと渡しただけでは「何コレ、つまんない」で終わってしまうはずですから、ダミーデータを入れておいて「こんな使い方ができる」ということを体感させる必要もあるでしょう。しかし「こういう風に使うツールだ」という制約がないところが InterConnect の魅力でもあるわけで、ある程度「皆で有効な使い方を考えよう」というアプローチを取らないと、より良い使い方を見逃してしまうということになりかねません。
その他にも「基本的にローカルのアプリケーションなので、皆でデータ共有するのが難しい」「機能が盛り込まれすぎていて、初心者がとっつきにくい」などといった課題があります。しかし個人的には、上記の通り「石だと思っていたデータの中から、玉が見えてきた」という気付きを与えてくれるツールとして、大きな可能性を秘めているのではないかと考えています。嬉しいことに、マイクロソフトさんからモニター用として「Microsoft Office Outlook 2007 with Microsoft Office InterConnect 2007」をいただくことができたので、しばらく使ってまたレポートしたいと思います。
ちなみに60日間限定の「無償試用版」もありますので、興味のある方は以下のページからダウンロードしてみて下さい:
■ Microsoft Office Online
……イベントから帰ってきて一気に書き上げたので、なんだかまとまりのない文章になってしまいました。乱文・乱筆失礼致します。
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