イギリスでの調査結果ですが、参考になるかもしれません。私たちが若者に対して抱いている「物心ついたときからネットがあるんだから、さぞかし上手に使いこなしているのだろう」というようなステレオタイプは、それほど正しくはないというレポートが発表されました:
■ The "Google generation" not so hot at Googling, after all (ars technica)
Joint Information Systems Committee (JISC) というイギリスの非営利団体と、英国図書館(British Library)が共同で行った調査について。英国図書館および JISC のウェブサイト上でのユーザー行動履歴と、過去の関連調査を元に、最近の若者(具体的には、1993年以降に生まれた「Google 世代」と呼ばれる人々)がネットをどのように活用しているかが分析されています。実物のレポートについては、こちらでPDFファイルをダウンロードできます。
で、PDFで言うと18ページ以降から、「Google 世代についてよく言われるような『俗説』は本当なのか?」という検討が行われています。いくつかピックアップしてみると:
- 「Google 世代は技術に詳しい」
全体的には正しいが、上の世代も急速に追いつきつつある。また想像されているよりも、Google 世代はシンプルなアプリケーションを使う傾向にあり、使う設備も少ない。 - 「Google 世代はインタラクティブを好み、受動的な情報消費者ではない」
全体的に正しい。テレビや新聞などの「受動的メディア」は下落傾向にある。 - 「Google 世代は生活のあらゆる面でマルチタスクだ」
確固たる証拠がないため、結論は出せない。しかし幼い頃からオンラインメディアに慣れ親しむことにより、並行処理スキルが身につく可能性はある。問題は、通常の読解作業に欠かせない「順次処理能力」が同様に身についているか否かだ。 - 「Google 世代は専門家の意見よりも、仲間の意見を信頼する」
どちらかといえば、これは俗説だろう。最近の調査では、中高生はインターネットよりも先生や家族、教科書の方を情報源として好んでいるという結果が出た。「若者は仲間の意見を信頼する」というような意見は、ソーシャルネットワーキングのサブカルチャーや、ティーンエイジャー特有の反抗的な傾向に関係しているように感じられる。 - 「Google 世代は常にネットに接続していないと気が済まない」
これは Google 世代に特有なことではない。最近の調査結果によれば、65歳以上の人々の方が、18~24歳の人々よりも長い時間をオンラインで費やしている。恐らく世代より、個人の性質やバックグラウンドというものが影響するのだろう。 - 「Google 世代はトライ&エラーでコンピュータースキルを身につける」
これは完全な俗説だ。新しいデバイスを前にした場合、「Google 世代はすぐに触ってみる、親の世代はマニュアルを読む」などという意見は現実のまったく逆であるという調査結果が出ている。 - 「Google 世代は検索のエキスパートだ」
これは危険な俗説だ。ITリテラシーと情報リテラシーはワンセットで得られるものではない。 過去25年間の資料を調査したところ、若い人々の情報スキルについては何の変化も見られなかった。
などなど。他にも様々な「俗説」への評価があるので、興味のある方はPDFを参照してみて下さい。
もちろんこれは1つの調査結果(しかもイギリスの)であり、鵜呑みにはできません。しかし分析を見ていて感じるのは、「最近の若い人はこうである」という思いこみの怖さです。例えば上記に「Google 世代はネットに接続していないと気が済まないというが、他の世代もそうだ(世代には関係のない話である)」という結果がありますが、だとすれば「大人達は自分たちの姿も省みず、子供達がネットにハマるのを非難している」ということになりますよね。また「最近の若者がそうだ、というより、こういう性質を持つのはいつの時代の若者にも言えることだ」というような指摘もあります。それこそ「受動的なメディア」である新聞やテレビを通じて「最近の若者はこんな奴らだ」というイメージを作り上げ、意味のない行動や逆効果な対策を取ってしまう危険性があるのではないでしょうか。
最近では、ケータイのフィルタリングを強制導入しようなどという動きもあります。それが効果的というのであれば導入すべきだと思いますが、本当に正しい若者像に基づいて考えられた施策なのかどうか、チェックする必要があるでしょう。「専門家が検討したのだから大丈夫」と思うかもしれませんが、民主主義の社会では、時として世論が「正しい」と思いこんでいる意見に合わせて政策が採用されることがあります。一人ひとりがステレオタイプに踊らされることのないよう、改めて若者と、そして自分の姿を見つめ直す必要があるのではと思います。
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