オルタナティブ・ブログの方で何本か「情報洪水を防ぐには?」というテーマを考えてみたのですが(この記事やこの記事など)、必要な対策の1つとして「洪水になるまえに排水する(=情報を捨てる)」ということがあるなあと感じています。で、数年前に流行ったこんな本をいまさらながら読んでいたり:
「捨てる!」技術(辰巳 渚著、宝島社新書)
言わずと知れた、「捨てる」にはどうしたら良いかを真面目に考え、解説した本。この本を読んで、企業内における「情報を捨てる」仕組みに応用できないか考えてみました。
(1) イントラネット内に「夢の島」を造る
「夢の島」とは、例の東京湾に浮かぶゴミの埋立地。個人PCや部門サーバ内に蓄積されている情報で、いらなくなったものはこの「イントラネット夢の島」に移すというのはどうでしょうか。移動されたデータはすぐに消去されるわけではなく、一定期間(1年間程度)保存されてから自動的に(古いものから)消されていきます。必要があれば、一度捨てたデータを検索して、拾い上げることも可能です。
人間の心理として、「いつかこれを使うかも」と思って捨てられなくなるということがあります。であれば、「必要ならばいつでもリカバリできる」という安心感を与えてやれば、直近で必要だと感じるデータ以外はどんどん捨ててくれるのではないでしょうか。しかもイントラネット内であれば、CDやDVDに焼くといった形でアーカイブするよりも簡単です。とはいえデータを無尽蔵に貯め込むわけにはいきませんから、1年という期間の後に自動消去するようにしておきますが、以前のエントリ(半分捨てろ)で書いたように「作成後1年経過した文書の利用率は1%に過ぎない」そうですから、「捨ててから1年以上経過したデータ」を改めてリカバリしようとするケースは微々たるものではないかと思います。
(2) イントラネット内に「リサイクルセンター」を造る
「夢の島」の次は「リサイクルセンター」です。これも人間の心理として、「まだ使えるのにもったいない」と感じて捨てられないケースがあります。リサイクルの良い点は、「別の誰かが有効活用してくれる」という安心感を感じて捨てられることです(「捨てる」わけではないですが、手放す人にとっては同じことです)。であれば、企業内に同じシステムを設置してやれば、余分なデータの廃棄が進むのではないでしょうか。
仕組みは「イントラネット夢の島」と同じ(一定期間後に消去する部分まで含めて)ですが、1つ違うのは「リサイクルセンター」に置かれたファイルは誰でも利用可能なこと。何らかの形で容易に検索できるようにしておき、他部署・他部門の人間でも再利用できるようにしておきます。ファイルを提供したユーザーには、閲覧者(捨てたファイルを拾った人)が誰か把握できるようにしたり、閲覧者から何らかの金銭的な見返りがあるようにしておきます。こうしておくことで、「捨てたファイルは無駄になったのではない、何らかの形で再利用されているのだ」という実感を与えることが可能となり、より「いらないファイルはリサイクルセンターへ」という意識が向いてくると思います。
(3) 保管できるファイルの「数」を制限する
現実世界では保管できる場所に物理的な制限があるために、「捨てよう」という意識が生まれます。同じ感覚を、デジタル上でも実現してやれば良いのではないでしょうか。実際にはデジタル空間にもディスク容量という物理的制限があるわけですが、「10MBまで」と言われてもピンときませんし、圧縮技術を駆使すればより多くのファイルを貯めておくことが可能になります。そこで「100ファイルまで」というファイル数で制限をかけてやれば、「新しく○個のファイルを追加したいから、去年の調査資料1~5を捨てるか」といった具体的な廃棄行動に結びつくのではないかと思います(複数のファイルを1つにまとめる輩も現われそうですが・・・)。
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こんな感じで、現実世界の「捨てる」技術のアナロジーで想像を膨らませてみてます。考えてみれば、Windowsの「ごみ箱」もずっと機能が一定のままですし(僕の知りうる限り)、「ごみ箱2.0」とでも言うべき革新が生まれてくることを期待します。
集めることが仕事ではなく、使うことが仕事です。
捨ててないのなら、仕事をしてないんだと言い切ってもいいくらいかと。
投稿情報: SW | 2006/04/23 20:33
たまっていく情報の整理、法令遵守、証拠開示なんかの点から、Information Lifecycle Management(ILM)というのが、最近の合言葉(売り文句)です。
投稿情報: tkm | 2006/04/24 00:38
もちろん情報を整理することは大切なのですが、探す方法を追究するという考え方もあるかもしれません。
Gmailも今年の1月から削除ボタンが用意されましたが、それまでは削除しようとすると、「1Gもあるんだから捨てなくてもいいっしょ?」みたいな警告までだしてましたよね。
ある意味Gmailは無料で提供された「夢の島」といえるかもです。
いろんな問題はありそうですが。
投稿情報: p-article | 2006/04/24 14:18
>SWさん
そうですね・・・貯めてるだけで仕事してる気になってしまうのが情報の恐いところです。使って初めて仕事、を肝に銘じたいですね。
投稿情報: アキヒト | 2006/04/24 17:21
>tkmさん
Information Lifecycle Management (ILM)は初耳でした。情報ありがとうございます(解説が無かったら、どっかの特殊撮影技術スタジオかと思っていたかも・・・)。確かに情報もライフサイクルで考えないと、貯まる一方で埒があかなくなってしまいますものね。
投稿情報: アキヒト | 2006/04/24 17:26
>p-articleさん
確かに欲しい情報が簡単・確実に手に入れば「捨てる」ことは必要なくなりますね。Googleがdeleteに否定的?だったのも、自らの検索技術に対する自信の表れ、と捉えることができるかもしれません。
ただ現状の検索技術はまだまだ課題を残していますから、整理・廃棄という作業の必要性があるのでしょう。「廃棄2.0」が生まれるのが先か、完璧な検索機能が生まれるのが先かは分かりませんが、ある程度廃棄の技術も改善されて行くのではないかと思います。
投稿情報: アキヒト | 2006/04/24 17:30