「シロクマ日報」の方で書いた記事「情報ジャスト・イン・タイムの作り方」にみずほ情報総研の吉川さんからコメントをいただいたのですが、そこで「情報を捨てるのは難しい」という話になりました。情報を捨てていかないと、たとえ普段入ってくる情報が小川程度だったとしても、積もり積もって「情報洪水」を起こしてしまいます。従って情報の流入をコントロールすると同時に排出することも重要になってくるわけですが、頭では分かっていても、いざ実行となると大変なのが「捨てる」という行為です。何か良い方法はないものでしょうか?
以前スクラップした記事を読み返していたら、ちょうどこんな記事を見つけました:
■ 文書整理の秘訣 まず「捨てる」 -- 「いつか」「私物化」禁物(日経産業新聞 2006年3月17日 第22面)
文書の整理整頓技術「ファイリング」についての記事です。僕はこの記事で初めて知ったのですが、ファイリングの専門家を認定する「ファイリング・デザイナー検定」というものがあるそうです。最も難しい1級は組織内のファイリングを設計・管理・指導する力を試し、3級は基礎知識を問う内容とのこと。で、3級の過去問としてこんな問題が掲載されていました:
移し換え、置き換え時に廃棄される文書量として、適切なものはどれか
(a) 10% (b) 30% (c) 50% (d) 80% (e) 90%
どれが正解だと思いますか?もうこの記事のタイトルでバラしてしまっているのですが、正解は(c)の50%。なんと半分を廃棄するのが適切だとされているそうです。しかも3級の問題で出てくるぐらいですから、ファイリングの世界では「オフィスには無駄な文書が山のようにある」が常識なのでしょう。
それでは、廃棄すべき半分はどうやって見極めれば良いのでしょうか。記事の中では、廃棄できる文書として次のようなリストを作っています:
- 重複している文書
- デジタルデータの一時的な印刷文書
- 問い合せ、回答など用件済みの文書
- 期日が過ぎた会議、展示会の案内
- 年賀状・礼状・DM・カタログ・パンフレット
- 読み終わった新聞・雑誌
- 古くなったマニュアル類
- 過去1年間利用されなかった文書
- 他部門などから参考に送られてきた文書
- 保存期間満了の文書
どれも当たり前のものばかりなのですが、注目すべきは(8)の「過去1年間利用されなかった文書」。以前から「一定期間使用しなかった文書は捨てよう」という提言はありましたが、実際に米国で行われた調査によると、作成後1年経過した文書の利用率は1%に過ぎないとのこと。ちゃんと調べたわけではありませんが、きっと文書の利用頻度というのもロングテール型で、利用率がごくわずかな文書が全体のなかで大くの割合を占めているのでしょう。
「過去1年間利用されなければ捨てる」というルールは正しさが実証されているばかりか、「しがらみ」というものを断ち切る上でも効果的でしょう。人間は様々な理由から、存在するものに愛着を感じてしまいます。自分が作った文書だから、自分が携わった仕事に関係しているから、過去に成功したプロジェクトの資料だから・・・そんなことを考えていては、とても捨てるなんてことはできません。明確でシンプルなルールを設け、それを守ることを徹底していれば、変なしがらみで情報洪水を起こすことも無くなるわけです。
そのほか、「情報の私物化」の排除やファイル移動記録の「見える化」など、ファイリングでは様々な技術を扱っているそうです。情報アーキテクチャと重なる部分も多くありますし、少し首を突っ込んでみようかと考えています。
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