Google のオンライン決済サービス"Gbuy"が世間をにぎわせています:
■ 噂のグーグル支払システム「Gbuy」、6月末にスタートか--アナリストがレポート(CNET Japan)
実はあまりフォローしてない話題なのですが、日本の Blogosphere は概ね「これで Google がいっそう勢力を増す」という意見が多いようですね。しかし僕はそう簡単にはいかないのではないかと感じています。
かつて eBay は PayPal に対抗し、独自の決済システムを開発して自社サービス内で使用することをユーザーに求めました。しかし既に PayPal が決済システムとしてユーザー間の間で広まっていたために、逆にユーザーから PayPal のサポートを要求され、やむなく独自システムの追及を断念したという経緯があります(で、PayPal を買収するという結論に至ったわけですが)。
eBay は既にオークションサービスとしての地位を確立し、多くのユーザーと信頼感というブランドイメージを得ていたにもかかわらず、PayPal というデファクト・スタンダードに勝てなかったわけです。この経験から言えることは、(1) ユーザーベースを握っていてもデファクト・スタンダードに勝てるわけではない (2) ブランドで決済システムの選択が決まるわけではない、という2点ではないでしょうか。一方、今回 Gbuy の躍進を予想する根拠に挙げられているのも「Google 自身が広いユーザーベースを持っている(あるいは Google Base などがこれからユーサーを獲得する)」と「Google というブランドに信頼感がある」という2つの点です。 eBay の歴史が繰り返される、とは必ずしも言えませんが、Google とはいえ PayPal に対抗するのは簡単なことではないと思います。
しかし Google が決済システムで稼ぐのではなく、CNET の記事にあるように「トラフィックを増加させるために広告リンクをどう配置すべきかを決めるための有益な指標」や「ユーザーの購買習慣を深く考察するための材料」という情報を得るための手段として Gbuy をリリースするというのであれば、サービス利用料を無料とするなど思い切った手段に出る可能性もありますが(事実 PayPal よりも若干安い手数料を設定するようですし、当初はオープンキャンペーンということで手数料無料で使えるようですが)。その結果、Gbuy が PayPal からシェアを大きく奪うことに成功するかもしれません。
ただ最近 Goolge がリリースしているサービスは必ずしも適切に運営されているとは言えず、成功とは程遠い状態にあるものも存在しています。「技術力の高さで市場にアピールする」という系統のサービスではない Gbuy をどこまで成功に導く能力を持っているのか、という点には疑問が残るでしょう。いずれにしても、外野が騒ぐほど Gbuy の成功は約束されたものではないと思うのですが、どうでしょうか。
<追記>
ついでに日本の状況を見ると、着払いやコンビニ決済など、より多種多様な決済方法が一般的です。最近 Google がリリースしているサービスはすぐに日本語化されていませんが、仮に Gbuy が日本でリリースされたとしても、本国以上に成功は容易ではないのではないでしょうか。
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