『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』の中で、島田紳助さんが「ふとしたときに『これはうまくいく!』という商売のアイデアが頭に浮かんで、真剣に考えてしまう」というようなことを書かれていたのですが、誰しも一度は「このビジネスプランなら大成功間違いなし!」と考えることがるのではないでしょうか。紳助さんの場合、「ずっと考えていると、ある瞬間に『やっぱりダメだ』と気づく。それでも気になって考えるのが止まらなければ、そのアイデアは本物」だと判断されているそうですが(手元に同書がないので、細かい部分は違うかも)、逆に「これはダメだ」と見切りをつけるにはどうしたら良いのでしょうか。
長い前フリでしたが、Forbes.com にこんな記事がありました:
■ When To Dump That Great Idea (Forbes.com)
「グレートなビジネスアイデア」を捨てる時をどう判断するか、という記事。大企業で無理やり新規事業をスタートさせられたのでもなければ、新しいビジネスに携わっている人はそれが好きでやっているはずですから、「終える」という判断を下すのは本当に難しいことです。Forbes が提案しているのは、
1. お金を払う顧客が現れない(現れそうにない)
「お客を払う」というところがポイント。過去に話題になった商品/サービスは多かったけど、儲けが出なければ結局ダメになったでしょ、という話。ただお客がお金を払わなくても、広告モデルのようにお客以外の誰かがお金を出せば良いのですから、正しくは「誰もお金を払ってくれない」とすべきかも。
2. 競争力を維持できない
そのアイデアが本物ならば、マネする企業が必ず現れるもの(前述の『ご飯を大盛りにする……』でも、紳助さんが石垣島の僻地にオープンした喫茶店の隣に、別の喫茶店が進出した話が出てきます)。「アイデア」はビジネスを始められるかどうかに関係しているだけで、続けられるかどうかは「競争力」の有無にかかっているのだ、ということを理解すること。
3. 本業を辞められない
週休2日の快適な生活を捨てられないようなアイデアなら、止めてしまうべき。「いつか本腰を入れる」ではいつまでも本腰を入れることはない -- という話。ただこれは、自分がそのビジネスにどう関わっていくのかにもよりますよね。またまた『ご飯を大盛りにする……』を引用すると、紳助さんは自分自身の役割を「みんなを冒険の扉まで連れて行くのが自分の仕事」(この言葉の真意を理解するには、同書を読んでいただくか、弾小飼さんのこのエントリをお読み下さい)として、あくまでも芸能界以外はサイドビジネスというスタンスを崩していません。「背水の陣」を敷かない方が冷静で常識にとらわれない考え方ができる、との判断もあり、この項目も正しくは「自分に与えられている時間の全てを費やせるかどうか」とすべきかもしれません(どこまでが「自分に与えられている時間」なのか、客観的に判断するのは難しいですが)。
……の3つ。必ずしもこの3つに限定されないと思いますが、冷静な判断が下せなくなったときでも制御が働くように、「終える」基準を事前に明示しておく必要があるのでしょうね。
個人的には、
■ 「夢」よりも「プライド」が重要になっている
という基準はどうかと。特定の誰か・特定の企業を指して言っているのではないですが、そのアイデアに固執するのってプライドを守りたいだけなんじゃないの、と感じる時があります。プライドじゃなくても、「始めたからには続けないと」という惰性や、「失敗したら恥ずかしい」という羞恥心とか。そんな別の何かを追い始めていないかどうかという点も、アイデアを捨てるか否かの条件になり得ると思います。
コメント