※「毎日jp」を、誤って「毎日.jp」と表記していました。「.」が入らない方が正解ですので、訂正してお詫びいたします。
10月1日から、毎日新聞社の新しいサイト「毎日jp」(http://mainichi.jp/)がオープンします。今日はその発表会に参加してきました。
会場はまさしく「記者会見」という雰囲気で、記者の方々が大勢詰めかけています。毎日.jpでコラムを執筆されるということで、女優の黒谷友香さんも会場にいらっしゃいました。「質問の内容は発表に関係のあるものに限らせていただきます!」ってセリフ、生で聞いた……。
内容は関係者の方々による挨拶とプレゼンテーション。残念ながら、「具体的にどんなところが新しくなるの?」という説明はごく一部。僕としては、サイトを実際に操作しながら「ココはこうでこうで……」といった説明があることを期待していたのですが、新聞社の記者会見というのはこんなものなのかもしれません。
ということで、毎日新聞の方々には申し訳ないのですが、能書きは省いて「具体的にどんなところが新しくなるの?」という点だけをまとめてみると:
- 既に発表があった通り、MSNとは決別。独自のサイトを構築する。
- しかし Yahoo! や AllAbout などなど、様々なサイトとの提携を通じてコンテンツを集める。
- キーワードは「信頼、楽しい、役に立つ」。特に「信頼」というキーワードに力を入れていて、「信頼のオープンサイト」などという言葉もありました。
- このキーワードはサイト内のカテゴリ分けとも対応していて、「信頼」はニュース、「楽しい」はエンターテイメント、「役に立つ」はライフスタイルのそれぞれのコーナーに対応。サイト上でもこのカテゴリ分けが明確に分かるようなデザインとなっています。
- SBMに対応。すべての記事に「Yahoo!ブックマークに登録」ボタンと「みんトピ(※Yahoo! の「みんなのトピックス」)に登録」ボタンが付く。「はてブに登録」は……なさそう。
- 記事のRSSを配信。まあこれは当然ですね。
- ブログパーツを提供。「自分のブログに『毎日.jp』で提供する各種ブログパーツを張ることができる。『掘り出しニュース』『みんなのニュース』など色々な切り口でまとめられたブログパーツを一般に提供。」とのことですが、具体的な内容は不明。
という感じでした。うーん、「これが新しい!」と一目で分かるようなインパクトのある発表を期待していたのですが、ちょっと普通かなという印象です。SBMもRSSもブログパーツも、特に新しいものではないですし。さらに今日は、読売新聞が「『ニュース専用』動画・写真投稿サイトをスタートする」という発表をしていますから、ブログ界的にはこっちの方が注目を集めてしまうかもしれません。
しかし1つだけ気になったのが、プレゼンの中に以下のような発表があったこと:
著名アルファブロガーやネットジャーナリストにお手伝いいただき、第三者の視点から「毎日jp」への助言および参加協力をしていただきます。
ブロガーへの参加協力(アルファブロガー限定、ってことはないですよね)。産経新聞的な取り組みを行う、ということでしょうか。これだけでは内容が不十分ですので、「具体的にはどんなことを考えていらっしゃいますか?」と質問したのですが、結局「ブロガーの方々からアドバイスをいただく」という回答に止まりました。ということで「市民記者」的にブロガーを巻き込んでいく……という発展は無さそうですが、具体的などんな形になるのかは追加の発表を待たなければいけないようです。
結論として、ブロガーという立場からすると、若干消化不良なイベントだったように感じます。「トクリキー指数」は限りなくゼロに近い、という感じ。会場に出向いたのだから、せめて動くサイトを体験させる……ぐらいの準備はあっても良かったのではないでしょうか。ともあれ、2週間後には新サイトオープンということで、何らかの追加発表があることを期待しています。
追記です。
帰ってきてから、以前読んだ『新聞社―破綻したビジネスモデル』を読み返してみました。話題になった本なので、読まれた方も多いかもしれませんね。著者の河内孝さんは、毎日新聞の東京本社副社長を務め、2006年に退任された方。最後の第5章「IT社会と新聞の未来図」で、このようなコメントをされています:
ヤフージャパンの井上雅博社長に、何度も言われました。「世界中、日本中の毎日新聞支局のゴミ箱に捨ててある原稿の書き損じを全部下さい。あなた方には私たちユーザーが求めるニュースが全然分かっていないのですから」
考えてみると、農水省関係だけでも「畜産毎日新聞」から「ビーフ・デイリー」、「にわとりニッポン」、「朝日林業日報」、「読売フィッシュ」、「日刊ウォッカ」、「エクセレント・ベジタブル」、「ライス報知」……無限に発行できそうです。専門紙といっても、そこまで細分化されてはいない。そこが狙いです。新聞版のロングテールです。「記者クラブは諸悪の根源」といっても使い方次第です。情報の宝庫にはちがいないのですから、そこに10人前後の記者を置いて、毎日、何十種類のウェブサイトにニュースを発信してもらう。発表の横流しではなく、専門性の高い解説や分析も付けます。
各サイトあたり5000~1万人の有料購読者がいれば、ペイします。記者の人件費と、編集管理費が少々。あとはコンピューターコスト程度しかかかりません。
それだけの「有料購読者」がいるかどうか、またどうやってペイさせるかは別にして、今回の発表よりよっぽど面白いアイデアではないでしょうか。河内さんが毎日新聞の中にとどまっていて、今回のサイトリニューアルに関わっていたとしたら、「毎日jp」はどうなっていただろう……と想像してしまいました。
このデータを見ると、新聞社がポータルサイトを目指すのは不可能だと分かります。新聞社のサイトでは金融取引、アダルト、オークション、ギャンブルは御法度ですし、かりに本紙読者の反発を買ってでもやるとして、先行各社の背中を見ながらのスタートでは、分が悪すぎます。私の前任者の決定でしたが、MSNという国内第3位のポータルサイトと組んだのは正解でした。
同じく、MSNとの提携についてはこう評されています。何があったのかは分かりませんが、「正解」だったMSN毎日インタラクティブを解消してのスタートとなる「毎日jp」。新機軸を打ち出せるでしょうか。
<さらに追記>
発表会に出席された方々のエントリ、順次公開されています。現時点で僕が分かっているものだけですが、リンクさせていただきます:
■ 毎日jp記者発表会に参加してきました ([の]のまのしわざ)
■ [ネット時代の新聞]「毎日jp」の記者発表会に行ってきました。(ガ島通信)
■ 毎日新聞の新サイト「毎日jp」の発表会でさらし者にされてみました (GIGAZINE)
■ 「毎日jp」記者発表会に行ってきた。(Parsleyの「添え物は添え物らしく」)
GIGAZINE さんのボリュームは……さすがですね……。
ついでに『シロクマ日報』でもエントリしてみました:
■ 発表会にブロガーを呼ぶ、ということ (シロクマ日報)
こういうのは記者だけ呼ばれるんじゃないのですね。
ブロガーに協力してもらいたいなら記者クラブ廃止したらいいのに。
投稿情報: saito | 2007/09/18 23:12
saito さん、コメントありがとうございます。
「ブロガー対象」イベントは増えてきましたが、「ブロガーと記者が同席して記者会見する」というのは珍しいかもしれませんね。
> ブロガーに協力してもらいたいなら記者クラブ廃止したらいいのに。
なかなか難しいのでしょうが、何らかの新しい協力関係が築かれるのでは、と期待しています。
投稿情報: アキヒト | 2007/09/19 16:13