これは言われてみれば確かに、という話。何かを買おうとしたときに、「この追加機能を付ければ、通常○○なのが××になります」という提案を受けるのは日常茶飯事ですよね。メーカーにしてみれば「これで買ってもらいやすくなるだろう」という思惑があるのでしょうが、追加機能・追加要素があることによって逆に本体の魅力が下がってしまうことがあるという研究結果が出たとのこと:
■ We're Not Buying It: Product Add-ons Influence Consumer Judgment (ScienceDaily)
『予想どおりに不合理』でお馴染みのダン・アリエリー教授が、ロンドン・ビジネス・スクールやハーバード・ビジネス・スクールの研究者らと共に Journal of Consumer Research に発表した研究について。デジカメやノートPC、さらにはコーヒーなど、一般的な物品について調査を行ったところ、追加機能(Add-on)が上記のようなネガティブ効果を引き起こすことが確認されたそうです。その理屈はこんな感じ:
Consumer reactions depend on the type of add-on being offered, the authors explain. "On the one hand, add-ons that improve or upgrade existing features of products affect evaluation by shifting our sense of how well the product performs on that particular feature. For example, a consumer presented with the opportunity to buy a 32MB memory card for a digital camera might suddenly find the standard storage capacity of 64MB unsatisfactory."
著者らによれば、消費者がどんな反応を起こすかは提示された追加機能のタイプによって左右される。「本体の機能を改善したりアップグレードするようなアドオンによって、問題とされている機能においてどれだけその製品が性能を発揮するのか?という認識が変化し、本体の評価も影響を受けることとなる。例えば、デジカメを買う際に32MBのメモリカードを付けるというオプションを提示された消費者は、突然『標準ストレージが64MBというのは不満だ』と感じるようになってしまうかもしれないのである。」
何も意識していなければ「64MB?ふーん、そんなものか」と思っていたのに、例えば販売店の側で「これだと不満に思うお客様が多いかもしれない。それじゃ、本体買ったらごく少額でアップグレードできるようにしておけば……」と“余計な”追加機能を準備してしまうことによって、突然その要素が短所として認識されるようになってしまうと。こんな経験をされた事がある方、意外に多いのではないでしょうか?
さらにこの心理が面白いのは、「ダウングレード」によって逆の効果が現れるという点:
Another surprise was that while study participants had negative impressions about optional upgrades, they liked downgrades. "Participants presented with optional downgrades had the exact opposite response, rating the laptop more favorably than those who saw no add-ons at all," the authors write.
もう一つ驚きなのは、研究の被験者たちがアップグレード・オプションからネガティブな印象を受ける一方で、ダウングレードには好感を抱いたという点である。「ダウングレードのオプションを提示されたグループにはまったく逆の反応が起き、何のアドオンも提示されなかったグループよりも、対象となったラップトップをより好意的に評価した」と、著者らは書いている。
逆にスタンダード版よりも魅力が薄いバージョンが存在することによって、逆にスタンダード版の魅力が相対的に上昇すると。これと似た話、『予想どおりに不合理』の中にも「人は比較可能が好き」という例として登場してきていました。いずれの効果を狙う、あるいは避けるにしても、「どんな機能に人々の注意を向けるか」という点に気をつけていないと予想しなかった影響が現れるわけですね。
こうした「不合理な」消費者心理を明らかにする実験、またダン・アリエリー教授の次回作あたりでまとめられるかもしれません。
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