インターネット上のコンテンツの発達と、検索技術の向上により、多くの情報をネットから引き出せるようになりました。しかし検索エンジンを動かすためには、客観的な検索キーをインプットする必要があります。テクノロジーの進歩によって音声や画像を検索キーとして使うことができるようになりましたが(関連記事:画像認識技術+カメラ付き携帯電話=未来の検索サービス)、あるデータが一定のルールの下で特定のキーに変換されるという点で、「客観的」という要素は変わっていません。
しかし検索を行うとき、必ずしも客観的な条件が決まっているとは限りません。例えば「何か笑える話が知りたい」とか「感動する話を読みたい」などといった気分の時があるでしょう。そんな時「笑える話」でGoogle検索してみても、なかなか笑える話は見つかりません。(ちなみに「笑える話」でGoogle検索した結果のトップに表示されるサイトには、笑いとは程遠いオカルトサイトが紹介されていたりします。)
「面白い」「楽しい」といった主観的な要素で検索を可能にする試みとして、こんな検索エンジンがありました:
データクラフト、デジタルストックフォト提供サイト「imagenavi.Jp」の検索エンジンの機能を強化(日経プレスリリース)
デジタルコンテンツの販売を手がけるデータクラフトという会社が、自社サイト内での画像検索をしやすくするために、検索エンジン「ADサーチ」の機能を強化したというニュースです。それによると、「『上品』、『ポップ』のような印象を表す語や、『こつこつ』や『もじもじ』といった擬態語、また『伝統』『喜び』といった漠然としたテーマによる感性検索を可能」にしたとのこと。百聞は一見にしかず、さっそくデータクラフトのサイト「素材辞典」で、ADサーチを試してみました。
まず「わくわく」というキーワードで画像を検索した結果(クリックで拡大):
「わくわく」っぽい画像が出ていますか?秀逸なのは、右下の「検索アシスタント」という機能。「わくわくと言えば・・・ガッツポーズ」のように、入力されたキーワードに関連する単語が候補として表示されます。
さらに1つの画像を選ぶと、以下のような詳細画面がポップアップ表示されます(クリックで拡大):
画面下半分に「似ている画像を再検索」というメニューが表示され、ちょうどMicrosoftのクリップオンラインのように、同じ属性を持つ画像が検索できるようになっています。用意されている属性は「オブジェクト」「テーマ」「イメージ」など。「検索アシスタント」と「似ている画像を再検索」の両機能を用いることによって、たとえキーワード検索で思っていたような画像を検索できなかったとしても、欲しい画像に近づくことができるようになっています。
この検索エンジン、漠然的・主観的だった思考を、少しずつ客観的なものにするプロセスを経ることを可能にしていると言うべきでしょうか。プレスリリースでも「ユーザーが入力したキーワードに関連する新たな検索語を提案し、イメージの絞り込みやアイディアフラッシュをサポートする画期的な画像検索エンジン」という紹介がされていますし。その意味では、主観的なキーワードで検索できるエンジンではなく、客観的なキーワードを引き出すエンジンと言った方が良いかもしれません。しかし主観的な単語から検索を可能にする試みとして、面白い存在ではないでしょうか。
詳しいことは分かりませんが、プレスリリースを読む限り、ユーザーが入力したキーワードを適切なクエリに変換することで機能を実現しているようです。ガッツポーズをしている画像に「わくわく」というインデックスを貼るのではなく、「わくわく」というキーワードを「わくわくorガッツポーズ」というクエリにすることで「ガッツポーズ」の画像を引っ掛けるという具合です。であれば、この仕組みをそのままテキスト検索にも応用できるのではないでしょうか。「子供+わくわく」というキーワードが入力されたら、「遠足+クリスマス+誕生日」などといったクエリに変換して検索を実行するといった風に。ついでにBlogWatcherのポジティブ/ネガティブ判定機能まで加えてやれば、「『わくわく』に関連するイベントで、ポジティブな内容の記事」という検索が可能になりますから、かなりの精度で狙った記事を見つけることが可能になると思います。
今後はクエリだけでなく、コンテンツの中身をテキストマイニングすることによって、主観的なキーワードでインデックスを付けるということが行われるようになるかもしれません。もしかしたら未来の検索エンジンは、これにパーソナライズも加味して「○○さんのツボにハマる最高に笑える話」などというものまで検索可能になるのかも。しかしそれは、機械によって感情までコントロールされるということにつながってしまうのかもしれませんが。「お笑い関係の動画ファイルの中で、笑えるコントだけを検索する」なんて判別まで検索エンジンにできるようになってしまったら、芸人向けにSEOが大流行するかもしれませんね。吉本興業あたりが「お笑いSEO」の権威になったりして・・・。
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