「2.0」系のネタも尽きてきたかなと思っていたのですが、面白いニュースを見逃していました:
アルプス社、地図情報ユーザー投票実験を開始、毎週更新も(CNET Japan)
今日の日経MJでこのニュースが報道されていたのを見て、初めて知りました(ちなみに日経MJ2005年12月26日第15面「地図情報、利用者から--アルプス社 投稿を最新版に反映」という記事です)。なぜ1週間も経ってからMJに載ったのか分かりませんが、おかげで見逃さずに済みました。
このサービス、いわば「地図版Wikipedia」のようなものですね。Wikipediaが皆で百科事典を作ろうとしているのに対し、地図を皆で作り上げる(正式には「皆で更新する」ですが)という試み。「更新は週1回、利用者からの情報を集約する形で行い、投稿内容の正誤判定で意見が分かれる場合にはアルプス社スタッフが事実確認した後更新をかける」とのことなので、Wikiとは異なりますが、逆にWikipediaで見られるような編集合戦や、情報の信頼性への不安といった問題は起きないでしょう(ただし今後はリアルタイムでの更新も計画中とのこと)。
これで百科事典に加え、地図の分野で「Web 2.0」的な試みが行われるようになった訳ですが、2006年はもっと他の分野でも同じ試みが始まるかもしれません。既に海外ではイエローページをWikiで作ろうという試み(Yellowiki)などもありますし、例えば外国語の辞書(特にスラングなど地域性・時事性の高い言葉)や昆虫・植物事典(ユーザーが適当に撮った写真を投稿し、皆で分析・分類する)、旅行ガイドやグルメガイドなどといったものもWikiを利用して作られるようになるかも(海外も探せば既にありそうだけど)。
<追記>
ちなみにアルプス社のサービスはこんな感じです:
上の画像(クリックで拡大)は六本木ヒルズ周辺を検索したものですが、こんな風に「この場所の新しい情報を大募集!」というバナー広告風のメニューが現れます。ここをクリックすると別ウィンドウが開き、更新情報メニューが表示されます(クリックで拡大):
六本木ヒルズの上にピンが表示されているのが分かりますか?ここにマウスオーバーすると、こんな風にユーザーからの投稿が表示されます(クリックで拡大):
けっこう詳細な情報が投稿できるようです。しかも地図系アプリだけあって、なかなか見栄えがするサイトですね。Wikipedia並みにアクセスを集めるサービスになれば、地図情報としてだけでなく、グルメ情報やタウン情報のプラットフォームとしても期待できるかも(逆にアクセスが集まらないと、アルプス社の方々がチェック作業に追われることになりますが)。
<追記2>
投稿を読んでいただいた方から、こんなサービスもあることを教えていただきました:
機能としては、上記のアルプス社の取り組みとほぼ同じでしょうか(寄せられた情報が検討を経て公開される点なども同じですし)。ただそのプラットフォームが、PCかカーナビかという違いだと思います。
「この情報、地図に無い」と気づいた瞬間に情報の投稿が可能、という点では、カーナビは便利かもしれません。しかし入力の難しさという点が、ユーザーのモチベーションを下げてしまうような気がします。情報が投稿しやすいけれど、いちいち端末を立ち上げなければならないというPCに比べ、どちらが「地図版Wiki」に向いているのでしょうか。また携帯電話という端末もこの中に含めて考えてみると、いろいろ面白い考察ができそうです。
またここでふと思ったのですが、「地図版Wikiを通じて地図データをみんなでメンテナンスする」ことに対するモチベーションって何なのでしょうか。Wikipediaでも同じような議論があったと思いますが、何の報酬もない状況で、人はなぜ自主的に情報を提供しようとするのでしょう?逆に言うと、どうすれば有益な情報の投稿を促すことができるのでしょうか。この点も含めてプロセスを設計しないと、地図版Wikiの取り組みは成功しないと思います。
「地図版Wikipedia」とは微妙に違うのですが、
http://www.semapedia.org/
というプロジェクトでも、Wikipediaと観光情報と連動したとりくみをやっていますね。
投稿情報: ヒロツ | 2005/12/27 10:41