コンテンツの多様化と、それを流通させるメディアの多様化が進んでいます。消費者は多数の選択肢の中から、気に入ったコンテンツを気に入った時間/場所で楽しむことができるようになりました。さらに消費者自らがコンテンツの作成者となる"CGM"の動きも広がっており、いまや「コンテンツが消費者を惹きつける」というよりも「コンテンツが消費者を巡って争う」という状況になりつつあります。
今日はそんな変化を示すニュースがありました。まずは映画業界に関する記事:
米映画興行収入 20年ぶり大幅減--今年、メディア多様化など影響(日本経済新聞夕刊 2005年12月28日第3面)
WEB版はこちらになります:米映画興行収入、20年ぶりの大幅減・DVDも伸び鈍化(NIKKEI NET)。記事にある通り、クリスマス休暇(12月23日―26日)終了時点での今年の興行収入は前年同期比6.2%減の85億9000万ドルで、今年の減少幅は20年ぶりの大幅減となるそうです。その原因としては、(1)ヒット作の減少、(2)VODなど新しいメディアの普及により、映画館に足を運ぶ人が減った、(3)インターネットを通じて消費者間で情報が瞬時に交換されるようになった結果、既存のプロモーション手法が通じなくなっている、といった点が挙げられていました。
次に日本のコミック業界に関する記事:
新作漫画 会員に無料配信--ネットで読者開拓 単行本や電子書籍に(日経産業新聞 2005年12月28日第2面)
WEB版はこちら:講談社、漫画サイト開設――会員に無料配信(IT-PLUS)。映画界の状況と同じように、コミック業界でも消費者離れが進んでいるとのこと。記事によれば、2005年1月~10月のコミック週刊誌全体の推定発行金額は前年同期比3%減の約508億円に止まり、2005年通年で見ても、4年連続のマイナスになる公算が高いそうです。
それに対して講談社が取った戦略が「新作漫画の無料配信」。無料で配信する代わりに、(1)会員の属性情報(会員登録は無料だが、属性情報を登録する必要がある)を基に「誰がどんな作品を読んでいるか」を把握し、マーケティングに役立てる、(2)無料配信した作品はその後に単行本化/電子書籍化されて有償販売されるので、そのプロモーションの一環と位置付ける、(3)単行本/電子書籍で利益を上げられなかったとしても、話題になった作品は映画化/テレビ番組化することでライセンス料が手に入るため、プロモーションの一環として位置付ける、という形でリターンを狙っているようです。
講談社の取り組みは、コンテンツからどうやって利益を上げるか、という視点が変化しつつあることを示していると思います。つまりこれまでは面白いコンテンツを見つけて、それをまず週刊誌という形で利益を上げるというモデルだったものが、週刊誌は捨て、単行本や映画化のライセンス料(もしくは映画興行収益そのもの)から利益を得ようというモデルへの変化です。これまでも当然、自社の持つコンテンツから可能な限り利益を得ようという努力があったに違いありませんが、どこで儲けるかという「ポートフォリオ」を大きく変化させることが求められているのでしょう。
そう考えると、今後はいかに「メディアのポートフォリオ」を構築できるかがコンテンツビジネスにおいて重要になってくるのではないでしょうか。もちろん面白いコンテンツを持っているということが大前提となりますが、そのコンテンツから最も利益が得られるメディアを見出し、他のメディアはプロモーション用と割り切って考えるといった発想が必要になってくると思います。例えばライブドアがフジテレビと東映映画を買収して、まず東映映画でそこそこ面白い映画を作り無料で公開、それをテレビ番組化して広告収入で稼ぎ、最後に続編を書籍化・ライブドアパブリッシングで儲ける--最終的に、ライブドアグループのトータルで見て利益が上がっている、といった事もあり得るのではないかと思います。
ライブドアの例は極端としても、あるメディアの業界内だけで合併を繰り返していては、その業界そのものがダメになるというリスクを回避することはできないでしょう。テレビとネットの融合を推し進め、テレビとネットと出版、さらにはブログ/ポッドキャスト/ビデオ・ポッドキャストといったCGMとの連携を進めるといった展開が現れてくるのかなと思います。
慣れない業界に口を突っ込んでしまいました。想像で書いている部分が多々あるので、事実と異なる点があったら突っ込みをお願いします。
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