Web 2.0時代のサービスにはいくつか特徴がありますが、「サービス開発初期段階で 『ベータ版』としてリリースし、そこから段階的に機能改善/追加を行う」という戦略もその1つとして挙げられるでしょう。Web 2.0系サービスを取り上げているブログ"TechCrunch"で、この「ベータ戦略を成功させるには」 というテーマの記事が投稿されていました:
Don’t Blow Your Beta (TechCrunch)
ポイントだけ箇条書きにすると、
- 第1印象を大切に
- 「段階的リリース」は諸刃の刃
- ユーザーの使うブラウザーに注意
- Landing Page(サービス開始前に設置するページ、 ベータ版参加のためのサインアップをさせることが多い)では十分な情報を与え、 サインアップさせるならこまめにコンタクトを
- ブロガーを大切に
といったところです。
この中にある「『段階的リリース』は諸刃の刃」という点について少し。 日本ではWEB上のサービスというと、「完璧に仕上がっていなくてもとにかく早くリリースして、 後からユーザーのフィードバックを得て機能を発展させる」という戦略が良しとされている風潮があると思います。 しかしTechcrunchの記事では、以下のようにこの戦略を「間違い」と指摘しています:
Some people take the “rolling feature release” idea above to mean they can release half-baked stuff. This allows for a quicker launch, of course. Slap a label on it, like “developer release”, “alpha” or “beta” and the hope is that people will be understanding and kind, and give you good advice and suggestions for improvement and evolution.
This is a bad idea. You will be crucified for wasting people’s time and they will leave brutal comments slamming your product. It is far better to delay launch, or remove the feature entirely, than show stuff that doesn’t work.
「おかしな機能を提供すれば、ユーザーにそっぽを向かれる」 というごくまっとうな指摘なのですが、「『アルファ』『ベータ」というラベルを貼っておけば何をしてもユーザーは協力してくれる」 と思い込んでいる企業は、この文章を胸に刻むべきでしょう。
またこのコメントは、本当の意味でユーザーに「アルファ版 (バグや不十分な機能だらけの製品/サービス)」テストに参加して欲しければ、もっと慎重にユーザーとの関係を構築しなさい、 という警句として捉えられるかもしれません。ベータ版を実施する企業に必要なのは、 ブロガーとして大きな情報発信力を持つイノベーター/アーリーアダプター達と良好な関係を保つことのできる人間でしょう (それは広報担当、営業担当といった従来の「企業の顔」ではなく、プログラマーやプロジェクトマネージャー、 場合によっては新入社員であるかもしれません)。彼らと実のあるコミュニケーションができて初めて、 「ユーザーの意見を製品/サービス改善に結びつける」という戦略が可能になると思います。
たとえベータ版で「段階的リリース戦略」を成功させたとしても、次にアーリー・ マジョリティー層というより保守的なユーザー達を相手にしなければなりません。 そこではイノベーター/アーリーアダプターには有効だった「目新しさ重視」「ユーザーのフィードバックを期待」 という戦略は通用しないでしょう。その意味では、「ベータテストに成功しても、その成功体験を引きずらない」 というのが実は最も重要なポイントなのではないでしょうか。
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