サイボウズの安田さんがポッドキャスティングを始められたので、それに関連して。ポッドキャスティングの動向については、安田さんのエントリが詳しいのでそちらをご覧下さい:
2006 年ポッドキャスティングはどうなる?
ポッドキャスティングを始めました
(経営企画室 調査日報)
この記事ではポッドキャスティングそのものではなく、ポッドキャスティングを対象とした音声検索技術が及ぼす影響について考えてみたいと思います。
ポッドキャストの音声検索とは?
今年に入ってから、日経産業新聞でこんな記事を続けて目にしました:
- ネット音楽番組「ポッドキャスト」 一言一句検索OK--米AOL、月内にも(日経産業新聞2006年1月4日第1面)
- この企業に注目 米TVアイズ 放送内の単語を検索--音声認識で135局をチェック(日経産業新聞2006年1月6日第4面)
残念ながらネット上で類似の記事を見つけられなかったのですが、前者はAOLで始まるポッドキャスト検索について、後者はその技術を提供したTVアイズという米企業について解説した記事です。TVアイズはテレビ・ラジオ放送の音声検索サービスを行っていた企業で、その技術を応用したポッドキャスティング検索サービスをAOLに提供したことがニュースになっています。このサービスでは、ポッドキャスト番組内に流れた検索キーワードの「場所」を特定し、目当ての部分だけを聴くことも可能になるとのこと。
実は音声認識によるポッドキャスト検索、TVアイズ社によって既にサービス化されていたりします。Podscopeというサービスがそれで、次の記事で詳しく解説されています:
Profile: Podscope (TechCrunch)
キーワードで番組の内容を検索できる「Podscope」(Podcast Now!)
正確には分かりませんが、Podscopeの機能がほぼ全てAOLに提供されるようです。
ポッドキャストは音声検索を必要とするか?
前フリはここまで。 ポッドキャスト内の音声を検索してくれるという技術、一見してすばらしいサービスのように思えます。テキストの記事と違い、ポッドキャスティングでは「面白そうな番組を見つけたけれど、聞いてみたら自分の思っていた内容と違った」ということが怒り得ます。それを防ぎ、さらに自分の聞きたい部分だけを聞くことが可能になるのですから、TVアイズのサービスは便利に違いありません。実用に耐えうる程の音声検索技術が開発され、Googleのように膨大な数の対象をインデックスする検索エンジンが現れたとしたら、ポッドキャスト番組へのアクセスは一気に向上するでしょう。
その一方で、ポッドキャスティングをラジオ放送になぞらえる見方もあります。これが正しいとしたら、ポッドキャストへの入り口はiTunesのままで、音声検索を使う人は増えない--という予想も可能ではないでしょうか。いまのラジオを考えてみると、検索サービスが無いにも関わらず、多くの人々が聴いています。番組表にある簡単な情報を見て聴くことを決めるか、お気に入りの番組を毎日聴く、というパターンがほとんどでしょう。例えラジオ番組の中身を事前に一字一句検索できるサービスが現れたとしても、人々の「ラジオ番組選び行動パターン」に大きな影響を及ぼすようには思えません。
この予想、どちらが正しいのでしょうか?僕は自信を持って言えるわけではないのですが、「音声検索技術がポッドキャストの質を変化させ、音声検索技術へのニーズをさらに高める」という可能性があると思います。仮に音声検索サービスが普及し、人々が「自分のポッドキャストの内容が正確に検索される」と理解するようになったならば、ブログをポッドキャストに置き換える人が増えるでしょう--ポッドキャストにしてもアクセスが望めるのであれば、キーボードを叩くより喋ってしまった方が早い、と思う人は少なくないはずだからです。とすれば、ジャーナリスティックな内容のポッドキャストが増え、1番組の長さも増し、さらに音声検索技術が必要になる・・・という好循環が発生するのではないでしょうか。
TVアイズ社に限った話で言えば、AOLでなくヤフーとの提携も行っており、さらにMicrosoftとMSNサーチにおいて提携する話し合いも進めているそうです。ポッドキャストに限らず、「音声検索エンジン」が身近な存在になる可能性は高いのではないでしょうか。音声検索が普及した時、ポッドキャストが一般ユーザーにも身近なメディアとして定着している--そんな可能性も高いと思います。
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