先日ある企業を訪問し、社内コミュニケーションシステムについてお話を伺ってきました。詳しい話はできないのですが、数千人規模の大企業で、これまでも社内の知識共有というテーマに地道に取り組まれてきた企業です。
ある新しいコミュニケーションシステムの旗振りをされた方とお会いしてきたのですが、その方が面白いことをお話しされていました。曰く
このシステムは全社員に使ってもらおうとして設計したのではない。ターゲットユーザーという概念を、なぜ社内システムにも当てはめてはいけないのか。新しいスタイルのコミュニケーションが合う世代に使ってもらえればいいし、合わない世代には彼ら向きのシステムがあれば良い。
といったような内容です(録音していたわけではないので、正確に一字一句このように言われたわけではないという点だけは明確にさせて下さい)。
僕はこの話を聞いて、目からウロコが落ちる思いでした。それは僕がもともとSAP R/3の導入SEからキャリアをスタートさせて、「社内システム=全社員が使えるものでなければならない」という思い込みがあったからでしょう。確かに市販のソフトウェアであれば、ターゲットユーザーというものが存在し、彼らが使うことを主眼に置いた設計がなされているはずです。同じ事を社内システムにおいて行えない道理はありません。
しかし営業日報などのように、企業内の一機能組織が使うためのシステムならともかく、社内コミュニケーション用のシステムにおいて「ターゲットユーザー」という発想を取り入れることは相当な抵抗があったはずです。ターゲット外のユーザーにしてみれば、社内のリソースを一部に偏った形で使うことになるわけですから、反発も当然です。IT部門にしてみても、同じ目的のために複数のシステムを用意する事態になりかねませんから、歓迎すべき事態ではありません。
果たして、ユーザーの満足度を最大化するために、ターゲットユーザーの概念を持つシステムを導入することは正当化されるのでしょうか?例えば30代以下の社員をターゲットに「携帯電話向け社内報サイト」を用意し、紙媒体の社内報は40代以上をターゲットにした紙面構成にする、といったことは望ましいのでしょうか。僕も結論は出ていないのですが、このようなアプローチが有効な分野を探してみる価値はあると思います。
考えてみると、僕のチームで実施しているチームブログも、チームメンバー限定のシステムです。ちなみにそのチームブログはTypePad上で動かしているのですが、無料/安価なWEBサービスが発展すれば、社内のIT部門を通さない形で「利用者限定システム」を利用する社内のグループというものが増えてくるように思います。
その限定の仕方によるかと思います。
開発する上でのターゲットは絞り込みますが、
使用自体を制限する必要はなくターゲットユーザ以外でも使いたければ使わせればいいかと。
投稿情報: tobaken | 2006/02/07 15:19
そうですね。お話を聞いたケースでも、実は使用を制限していたわけではありませんでした。(この辺はちょっと詳しくお話しできません。ごめんなさい。)しかし全社員が一律で使うように配慮されていないことも事実で、様々な軋轢があったようです。
「IT部門(あるいはIT企画部門)=『社員』という市場にソリューションを提供する企業」という発想ならば、ターゲットユーザーという視点も当然のことなのですが。特定の人々に向けたシステムにリソースを使うなどけしからん、という意識が根強いのではないでしょうか。
投稿情報: アキヒト | 2006/02/07 15:48