今日の日経流通新聞では、ローカリゼーションの取り組み例として2つの企業が取り上げられていました。まずは東芝EMIの事例:
スター誕生 線路は2本 -- 東芝EMI、新人育成で新手法(日経流通新聞2006年2月15日第3面)
東芝EMIが新人アーティストの発掘・育成に新しい手法を試みている、という記事で、1つがiTMSを通じて行う公開オーディション(参考記事:RBB Navi「東芝EMI、亀田誠治氏の新人発掘オーディション選考過程をPodcast配信」)、もう1つが「歌手の出身地域限定で販促、息長くファンを取り込む」という売り方です。後者の手法では、既に「うたまろ」というユニットが東海地域限定で活動しており、人気を博しているとのこと。
両方の手法とも「現代では生まれにくくなったメガヒットを狙うよりも、確実に20万枚級のCDが販売できるアーティストを発掘・育成する」という点で一致しているそうですが、「20万枚」をどこに求めるかで、iTMS公開オーディション(ネット)と地域限定アーティスト(ローカルコミュニティ)という手法に分かれた、と言えるでしょうか。
次に見つけたのはダイエーの事例:
売る技術 光る戦略 ダイエー、「おいしいデリカ宣言」 -- 地元の味、細かく対応(日経流通新聞2006年2月15日第5面)
林文子さんを迎え新体制になったダイエーが、「おいしいデリカ宣言」を打ち出し総菜メニューに力を入れていることはご存知でしょう。公式ページを見ていただければ分かる通り、宣言では以下の4ポイントが挙げられています:
日経の記事では、この「3.地域ならではの味にこだわります。」という点が実際にどう実現されているかが解説されていました。
例えば「鶏のから揚げ」は地元の好みに応じて味付けを変更し、名前も地元の呼び名にしたそうです。また東京本社に集約していた商品開発機能を分割し、地区ごとの独自商品開発に取り組むとのこと。ひとまず札幌、福岡など中心都市の味に統一したものの、今後は福岡と鹿児島で味・価格を変えるなど、よりきめ細かい地域対応を進めるそうです。
ダイエーの取り組みも、言ってみれば「全国で売れるメガヒットの代わりに、地元で確実に売れるスモールヒット」を狙ったもの、と言えるでしょうか。確かにメガヒットが実現するのは難しい時代ですし、無理に狙えばリスクを高める結果になります。こうしたローカリゼーションの流れは、今後他の分野にも普及して行くのではないでしょうか。
しかしローカリゼーションは、「以前なら本社が1回だけ行えば済んだ活動を、各地方拠点で冗長に繰り返す仕組み」とも言えます。冗長性によって生まれるコストをいかに抑えるかがポイントとなるでしょう。また地方拠点に優秀な人材を維持することや、権限の委譲も必要になり、簡単には実現できない戦略に違いありません。
一方で「ローカル拠点が個々にブログを持ち、地域のお客様とのコミュニケーションを促進する」「社内ブログを設置し、拠点を越えた自由な意見交換を促進する」など、新たな技術によりローカリゼーションの実現が容易になりつつあります。近い将来、「同じHMVでも、東京と大阪では品揃えが全く異なる」といった状況になっているかもしれません。
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